平成6年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(2) 高齢化社会への対応と福祉社会の実現

 ア 通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進
 社会経済の情報化が急速に進展するなかで、身体に障害をもつ人々は通信・放送サービスを十分に利用できない現状にある。このような現状を踏まえ、身体障害者がテレビなどの通信・放送サービスを十分に受けられるようにするため、5年9月「身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律」が施行された。この法律に基づいて、字幕番組、解説番組の制作等の通信・放送身体障害者利用円滑化事業への支援が、通信・放送機構を通じて実施されている。
 イ 身体障害者・高齢者用情報通信システムの研究開発
 21世紀の高齢化社会に対応した情報通信基盤の構築を円滑に遂行し、身体障害者や高齢者が便利に安心して暮らせる生活環境を実現するため、身体障害者・高齢者のための情報通信システムの研究・開発を行うための研究施設の整備が5年度第三次補正予算で認められた。
 具体的には、通信・放送機構が郵政省の出資を受け、外出が困難な寝たきり老人等が家庭にいながらにして、健康診断や介護支援を受けることを可能とする「遠隔健康相談システム」、聴覚等が不自由な高齢者等がデジタル補聴技術等により健常者と同様に、自由に高度なコミュニケーションを可能にするシステムに、用途に応じて、徘徊老人等の位置を特定する機能、疾患のある高齢者等が緊急時に屋外からセンター等に通報する機能を付加する「高齢者通信・広域緊急通報・位置探査システム」等の研究・開発を行うこととしている。
 ウ 高齢者や身体障害者のための情報通信技術等の調査研究
 郵政省では、高齢者や身体障害者が情報通信の恩恵を享受できるような情報通信システム等の実現に必要な技術やその技術開発推進方策について検討するため「高齢者や身体障害者のための情報通信技術に関する調査研究会」を開催し、5年6月調査研究報告書がとりまとめられた。
 報告書では、まず各人の障害等により生じるアクセス能力(発声能力や聴力)の不足を補助、代替するシステム機能を提案している。例えば、聴覚障害者のために電話の相手の音声を文字で表示するようなシステム機能が挙げられており、音声認識技術等それらシステム機能の実現のための技術の開発が今後必要であるとしている。また、高齢者や身体障害者特有の利用目的に特化した情報通信システムとしては、例えば、視覚障害者のために屋外で、現在位置・進行方向などの情報を携帯端末から音声で知らせる行動誘導システムを提案している。
 さらに、これら高齢者・身体障害者のための情報通信システムの実現にあたっては、特に開発コストの負担軽減を図る一方、医学、心理学、社会学など幅広い分野での学際的な研究開発アプローチやユーザと開発者間の情報交流の確保が特に重要であるとしている。
 また、6年度においては、高齢者が便利で安心して暮らせる生活環境を実現するため、高齢化社会における情報通信の役割とその整備方策を検討し、高齢化社会に向けた総合的な情報通信施策に資するため、「高齢化社会における情報通信の在り方に関する調査研究会」を開催することとしている。
 

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