平成6年版 通信白書

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第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(3) ヒューマンインターフェイス技術

 いつでも、どこでも、文字・図形・音声・データ・動画等の様々な表現メディアを複合的に、一体的に利用することができるマルチメディア環境の実現のためには、だれもがマルチメディアを容易に利用できるためのヒューマンインターフェイス技術の開発が不可欠である。
 ア 高度音声翻訳通信技術の基礎研究
 経済活動の国際化や通信のボーダレス化に伴い、異なる言語を用いる人と人との間の自由なコミュニケーションがますます重要になってきており、いっそうのボーダレス化の進む21世紀におけるマルチメディア環境の実現のためには、音声翻訳通信システムの実現が必要である。
 「(株)エイ・テイ・アール音声翻訳通信研究所」は、基盤技術研究促進センターの出資を受け、4年度から異なる言語を用いる人と人との自然な会話によるコミュニケーションを実現するために、抑揚のある自然な会話を誰の声でも認識し、話の流れを理解し、言葉が省略されたり慣用的な表現のある会話を翻訳する技術を開発し、誰でも容易に使用できる即時性のある音声翻訳通信技術の基礎的な研究を行っている。
 イ 臨場感通信技術の基礎研究
 高度情報社会の進展により、電気通信は単に距離を隔てた地点間をリアルタイムに経済的に接続するというものから、さらに高度な要求を満たすことができる安全で使いやすいシステムの実現が望まれる。
 「(株)エイ・テイ・アール通信システム研究所」では、基盤技術研究促進センターの出資を受け、昭和61年度から人間主体の知的通信システムとして、参加者がそれぞれの場にいながらにして一堂に会した感覚で面談会議を行うことができ、高度のヒューマンインターフェイス機能が会議を支援する「臨場感通信会議」の実現を目指して、3次元画像の入力・認識理解・表示等の基礎研究を行っている。
 ウ メディア変換技術の研究開発
 郵政省では、マルチメディア化等21世紀における多様なニーズに対応し得る高度な情報通信サービスを実現するため、従来の電気通信分野にとらわれない基礎的・先端的研究開発である「電気通信フロンティア研究開発」を、郵政省通信総合研究所を核とした産・学・官の連携により、昭和63年度から実施しているところであるが、研究開発課題の1つとして、ネットワーク・ヒューマンインターフェイスの研究開発を行っている。
 元年度から行っている「マルチメディアの統合処理と、その次世代通信への応用に関する研究」では、音声・画像・言語の統合機能の実現と、その通信系におけるマンマシンインターフェイスへの応用を目的として、[1]マルチメディアオーサリング機能、日英・英日翻訳機能を備えた、実験用マルチメディアプラットフォームを構築し、マルチメディアを利用した知的情報端末の有用性の提示、[2]自然言語からの画像合成方式に関する基本検討、並びに言語画像統合化辞書の構造検討による通信系マンマシンインターフェイスにおける言語画像変換の実現可能性の提示、[3]通信系へのマルチメディア機能の導入・実証等の研究を行っている。
 エ 高度映像通信利用技術の研究開発
 マルチメディア化の進展に向けて特に映像系の情報通信システムの研究開発の推進が期待されているが、映像情報を容易に、かつ使いやすく利用するためには、遠隔検索・メディア変換等共通の基盤技術の開発が必要である。
 そこで、郵政省では5年度第三次補正予算により通信・放送機構に出資を行い、通信・放送機構では、遠隔検索・メディア変換技術等映像系の情報通信システムの研究開発を行ううえで必要な設備を整備し、情報構造化技術・メディア変換技術・遠隔検索技術等映像系の情報通信システムに共通の基盤技術の研究開発を行うこととしている。

音声翻訳通信技術の基礎研究(エイ・ティー・アール通信システム研究所)

臨場感通信技術の基礎研究(エイ・ティー・アール通信システム研究所)

 

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