平成6年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(3) 企業間の提携等の動向

 マルチメディア化の進展に伴い、映像ソフトやゲームソフト等のソフト分野、ショッピング・出版等のサービス分野、端末機器・ソフトウェアの分野、通信や放送の分野等国内外の様々な分野の企業が新たな事業展開や市場開拓を目指して、提携・連合する動きが顕著にみられる。このような動きは、特に米国において顕著にみられるが、我が国においてもケーブルテレビの分野を中心に新たなサービス提供を目指した提携・連合の動きや通信事業者によるマルチメディアの利用実験が進められる動きなどがある。
 ここでは、通信・放送の統合サービス等の新たなサービス提供の側面と技術開発の側面から企業の提携・連合の動きを概観する(第3-2-9表参照)。
 ア 通信・放送の統合サービス等新たなサービス提供をめぐる動向
 通信・放送の統合サービス等の新たなサービス提供をめぐり、特に米国において、地域通信事業者とケーブルテレビ事業者を中心とする提携・連合の動きが著しい。地域通信事業者は、従来の自社のエリア内では従来の通信網で、またエリア外では提携するケーブルテレビ網で通信・放送の統合サービス等を提供可能となるためマーケットが拡大するメリットを得る。一方、ケーブルテレビ事業者は、長距離通信網への接続のノウハウ等の通信系の技術基盤を得ることができる。さらに、提供する映画等の映像ソフトの質的・量的な充実や提供する設備機器を開発するために、豊富なソフトを有する映像ソフトの提供企業やコンピュータメーカーがこの提携・連合に加わる動きが進んでいる。
 我が国においても、最新ゲームソフトの迅速な利用者への配信、ゲームソフトの利用状況の正確かつ迅速な把握、多彩なケーブルテレビ番組の提供等を図るため、ケーブルテレビ事業者とゲームメーカーが協力してケーブルテレビ網を利用したゲームソフトの配信実験を行う動きが進んでいる。また、映像等による最新商品情報の利用者への迅速な提供、商品の販売状況の正確かつ迅速な把握、提供する通信サービスの多様化・高度化等を図るために、通信事業者と通信販売会社が協力して通信網を利用したショッピングサービス実験を行う動きも進んでいる。
 イ 技術開発をめぐる動向
 情報通信のマルチメディア化を進め、新たなサービスを提供するため、各企業は基盤となるハードウェアやソフトウェアの技術開発を、他企業と提携・連合するなどして活発に進めている。このような動きの背景には、開発した製品が将来の新たな市場でデファクトスタンダード(業界標準)として位置づけられ市場における優位性を確保するとともに、自社の事業が有利に展開していくことを目指した各企業の意図がある。ここでは、情報通信のマルチメディア化の進展を支える重要な要素技術であり、かつ技術開発のための提携・連合の動きが活発化している携帯情報端末や通信サービス系ソフトウェア等をめぐる動きを取り上げる。
 (ア)  携帯情報端末をめぐる動向
 米国のコンピュータメーカーと我が国の家電メーカーが提携・連合し、通信機能のある新しい携帯情報端末の開発を進める動きが著しい。特に、ファクシミリ通信・電子メール等の通信機能性を重視して開発が進められている。
 このような通信機能を実現するために、通信サービス系プログラミング言語、通信モデム機能のカード化、通信処理能力の向上を目指したCPUの技術開発等が進められている。また、ペン等による手書き文字入力、手書き図形の認識の高度なヒューマンインタフェース機能の向上も進められ、通信機能の実現と併せて、通信機能のある携帯情報端末の機能の向上が進められている。このような機能の実現に、データを処理し、通信するなどの情報通信技術を基にしたコンピュータメーカー、従来の携帯型端末の技術等を基にした家電メーカ等の取組が顕著に進んでいる。
 (イ)  通信サービス系ソフトウェア等をめぐる動向
 将来のB-ISDN等の実現を支える要素技術として広く世界の注目を集めているATM技術の標準化活動をめぐり活発な動きがみられる。
 ATM技術は、B-ISDNの転送モードとしてITU-Tにおいて国際標準化が進められている一方、米国において、相互接続性の確保された規格を迅速に定め産業界の協力を促進することによりATM製品及びサービスの普及・促進を目指すため、コンピュータメーカー、通信事業者等の世界中の企業が参加した民間の非営利団体としてATMフォーラムが設立されている。このフォーラムでは、世界的視野に立った一元的な技術活動の推進、地域ユーザーに適合した周知啓発の実施等の活動が活発に行われている。また、我が国においてもATMフォーラムとの密接な連携を行うとともに、ATMの利用技術や適用及びその円滑な普及・発展を促進するため、通信事業者、コンピュータメーカー、電気通信網の大規模ユーザー、電気通信関連団体、学識経験者・研究者等の企業・団体・個人等から構成されたATMフォーラム日本委員会が、5年11月に設立され、6年1月末現在、92社(または団体)による活発な活動が行われている。
 通信サービス系ソフトウェアの分野では、携帯情報端末等が利用する通信規格等の標準がなされていないため各企業で開発される端末間での相互接続性を確保することが難しいことから、標準的な規格が求められている分野である。このため、米国のコンピュータメーカーや長距離通信事業者、我が国の家電メーカーや国内通信事業者等が提携・連合し、電子メールや携帯情報端末に利用する新しい汎用的な通信サービス系プログラミング言語の開発が進められている。

第3-2-9表 企業間の主な提携・連合の動き

 

(2)先進諸外国における利用・開発動向 に戻る 第3章第2節2 外国政府における取組 に進む