平成6年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(6) 国際衛星通信をめぐる動向とその対応

 ア インテルサットとインマルサット
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)は各国の電気通信事業体に対して宇宙部分を提供するために、国際海事衛星機構(インマルサット)は海事通信の改善に必要な宇宙部分を提供するために発足した国際機関であり、ともに各国の通信事業者等の共同出資によっている。
 国際衛星通信は、このインテルサットとインマルサットによって、安定的な世界通信を確保する観点に立ち運営されてきた。しかしながら、近年の衛星通信技術の進歩、サービスに対する多様化した需要等が背景となって、民間企業等が自ら衛星を打ち上げ国際通信サービスの提供を行う構想(別個システム構想)が次々と打ち出されてきた。
 この動きをうけてインテルサット及びインマルサットでは、別個衛星との経済的調整手続きの大幅な簡素化の検討に着手している。インテルサットでは1992年11月の第18回締約国総会において、インマルサットでは1993年10月の第9回総会において、それぞれ手続きの簡素化の決定を行い実行に移している。また、インマルサットでは上記検討に加えて、「プロジェクト21」という小型携帯電話の開発を中心とした21世紀へ向けた総合計画を発表している。これは、世界中どこからでも使えるポケットサイズの衛星電話サービスの提供を行うというものであり、1994年中にも構想段階から着手段階へと移行することが予想される。
 イ 別個システムの動向とその対応
 1980年代から、民間企業等が自ら衛星を打ち上げて多種多様な国際通信サービスの提供を行う別個システム構想が打ち出され、そのうちのいくつかは実用化されている。さらには、低軌道(LEO)とよばれる周回衛星を利用して国際移動通信サービスを行う構想もあがっており、その一部には構想実現に向けて実質的な作業が始まっているものもある。
 アジア・太平洋地域においても、既に約30の別個システム計画が発表されている。しかしながら、衛星軌道は有限な資源であり、無秩序に数多くの衛星が打ち上げられることとなると、衛星相互に有害な電波干渉を引き起こしかねない。国際電気通信連合の無線通信規則(RR)では、この衛星間の混信問題を解決するための国際的な調整手続きが規定されており、郵政省はこの調整手続きに従い、我が国の衛星通信網を混信から守るとともに、我が国の新しい衛星軌道位置確保のために外国との調整を行っている。
 また、1992年9月から「国際衛星問題研究会」等の研究会を開催し、アジア・太平洋地域における国際通信分野におけるビジョンの確立、別個システムの利用の促進、我が国の国際テレビジョン映像の受発信のための体制整備等の提言がなされた。また1993年6月に、アジア・太平洋地域諸国の主管庁を招いて意見交換を行うアジア・サテライト・コミュニケーションズ・フォーラムを開催するなど相互理解の促進を図っている。
 なお、1993年9月に、郵政省は我が国の国際電気通信事業者による別個システムの使用を許可した。今後は更なる通信衛星の利用拡大を目指すような施策を講じていくとともに、周回衛星を用いた国際移動通信サービスなどの新しいサービスに対する検討を行っていくことが重要である。

アジア・サテライト・コミュニケーションズ・フォーラム(1993年6月)

 

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