平成6年版 通信白書

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第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(2) マルチメディア化を支える技術的背景

 情報通信のマルチメディア化の背景としては、近年のデジタル技術をはじめとする情報通信関連技術が急速に進展していることがあげられる。
 ア ネットワーク技術
 情報通信ネットワークのデジタル化及び高速・大容量化、画像圧縮技術の進展により、映像を含めた様々な表現メディアの伝送が可能となっている。現在の電話回線は、データ伝送速度が9.6 〜14.4kb/s程度で、音声通信以外にファクシミリ、パソコンなどのデータ通信は可能であるが、現在のテレビジョン方式であるNTSC方式のテレビジョン放送信号は約115 Mb/sであり、たとえ1/100 程度にデータ圧縮しても迅速に伝送することは難しい。これに対してISDNでは、データ伝送速度が電話回線のおよそ6〜150 倍の64kb/s〜1.5Mb/s に向上されており、後述のような画像圧縮技術を併用することでアナログの電話回線では困難だった動画像伝送が可能であり、ISDNを利用したテレビ会議・テレビ電話・遠隔診断等が始められている。
 また、無線についても、デジタル化や制御技術の革新が進み、画像や高速データを伝送できる移動通信が可能になってきているとともに、ミリ波等の高い周波数の開発が進み、小型化や有線網に対応する高速・大容量無線通信も可能になってきている。
 一方、ケーブルテレビでも、広帯域伝送特性を活かしたデジタル伝送技術や映像圧縮技術の研究が進められており、ケーブルテレビネットワークの持つ双方向機能と合わせて、マルチメディア化の進展が期待されている。
 画像圧縮技術は、1980年代以降次々と新しい符号化方式が開発され、テレビ会議・テレビ電話用の圧縮技術として、動きを制限した準動画をISDNの基本速度(64kb/s〜)で伝送するH.261、蓄積系の圧縮技術として、VTRと同程度の品質の動画を1.5 Mb/s以下に圧縮するMPEG-1が国際標準化され、これらの方式を採用したテレビ会議システムやパーソナルコンピュータの発売・利用が始まっている。さらに、現行テレビ、HDTVの映像を放送用品質で、通信・放送・蓄積等で共通に利用することを目的とした圧縮技術であるMPEG-2が現在検討されており、技術的仕様がほぼ固まり、本年末か来年はじめにも国際標準化される予定である。
 イ ハードウェア、ソフトウェア関連技術
 ハードウェアやソフトウェアに関する技術の進展により、文字・図形・音声・データ・映像等様々な表現メディアの統合的な利用が可能となるとともに、優れたヒューマンインターフェイスによる映像等の情報の容易な加工・処理等が可能となってきている。
 ハードウェアに関する技術については、CPU(中央処理装置:Central Processing Unit )の処理能力の向上と小型化が進み、動画などの大量のデジタル情報の高速処理が可能となるとともに、今後のマルチメディアのプラットフォームとして期待される携帯情報端末のような小型の端末の開発が可能となっている。また、入出力装置については、テレビジョン受像機をはじめ、パソコン、ワークステーションに使用され最も普及しているブラウン管(CRT:Cathode Ray Tube)の高精細化や携帯情報端末の出力装置として期待されている液晶ディスプレイについても高精細化・大型化が進んでいる。入力装置としてはペンが指している位置を検出することができ、ペンによる入力が可能なタブレットが注目を集めており、なかでも表示一体型の液晶タブレットは携帯情報端末に利用され、ヒューマンインターフェイスの向上に貢献している。
 ソフトウェアに関する技術については、近年、映像・音声などの時間軸をもった情報を、これまで扱ってきた文字や図形などの情報と同様にしかも統合的に取り扱うことができるマルチメディアOSが相次いで開発されており、映像や音声に対して、簡単に編集や特殊効果を加えることができるとともに、LAN・VANなどの情報通信ネットワークを通じて、映像・音声情報のやりとりを行うことができるようになっている。また、マウスとウィンドウを用いたグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)により、情報の処理・加工が容易になってきている。
 

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