平成6年版 通信白書

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第1章 平成5年情報通信の現況

2 情報化の進展状況

 (1) 家庭の情報化

 ここでは、家庭の情報化の進展状況を指標により概観するとともに、近年、家庭及び個人消費者層への普及が進んできていると言われる主な情報通信サービス・機器として、無線呼出し、ファクシミリ及びパソコン通信に関し、その普及の動向、新たな利用の傾向等について紹介する。
 ア 情報化指標の動向
 家庭における情報化の進展状況を、情報の入手手段の多様化、情報を入手するために支出した費用及び各種情報通信メディアからの情報提供の3つの面から指標によりとらえたものが、第1-3-14図である(付表5参照)。
 (ア)  情報装備指標
 情報装備指標は、家庭における情報入手手段の多様化の推移を表すものであり、情報通信機器の保有数と情報通信ネットワークへの加入率により構成されている。
 昭和58年を 100とした4年の指数は、前年比11.5ポイント増の 181.3となっており、昭和60年以降の高い伸びが持続している。これは、主として情報通信機器保有数の伸びが要因となっている。
 (イ)  情報支出指標
 情報支出指標は、家計消費支出における情報通信関連支出の推移を表すものであり、情報通信機器の購入、情報通信ネットワークへの加入・継続及び情報ソフトウェアの購入に係る実質購入費により構成されている。
 我が国の4年における家計消費支出は、対3年比で実質 0.4%の増加となっているが、情報支出指標は、昭和58年を 100とした指数でみると、4年は対前年比 1.3ポイント減の 113.7となっている。この内訳(第1-3-15図参照)をみると、本指標を構成している3指標(情報通信機器系、情報ネットワーク系及び情報ソフトウェア系)がともに減少しており、とりわけ情報通信機器支出指標の減少(対前年比38.6ポイント減)が著しい。また、4年の家計消費支出に占める情報通信関連(機器、ネットワーク及びソフトウェア)支出の割合は、対前年比 0.1%減の 4.1%となっている。
 (ウ)  情報入手可能性指標
 情報入手可能性指標は、家庭において入手可能な情報量の推移を表すものであり、テレビジョン、ラジオ、パッケージ系メディア(音声系・映像系ソフト)、新聞及び書籍・雑誌からの提供情報量により構成されている。
 昭和58年を 100とした4年の指数は、対前年比 4.2ポイント増の 126.8となっており、昭和60年以降の伸びが持続している。これは、指標を構成しているパッケージ系メディアの伸びが顕著であるためである(第1-3-16図参照)。
 イ 家庭における情報メディアの利用動向
 5年11月、郵政省郵政研究所が委託調査により、約6千世帯の世帯員を対象に実施した「家庭における情報化の動向に関する全国調査」(付注10参照)に基づき、情報メディア機器の保有動向・家庭における情報の流れに関する調査結果について記述する。
 (ア)  世帯における情報メディア機器の保有動向
 世帯における情報メディア機器の保有または保有意向の動向をみると、衛星放送受信設備を保有または保有の意向があるとする世帯が約7割と最も多く、次いでパソコンが約5割となっており、以下、ファクシミリ(38.8%)・携帯電話(29.7%)の順となっている(第1-3-17図参照)。情報メディア機器の保有または保有意向の動向を都市規模別にみると、郡部では携帯電話(33.9%)、自動車電話(16.7%)が、10万人以上30万人未満の都市ではパソコン(53.2%)、無線呼出し(29.8%)が、政令指定都市ではファクシミリ(48.1%)が、それぞれ高くなっている(第1-3-18図参照)。
 (イ)  家庭における情報の流れ
 電話及び郵便の発信・着信の交流先について、調査対象世帯における5歳以上の世帯員を対象に調査を行ったところ、電話は、発信・着信とも友人・知人・仲間との間の通信が全体の4割を占め、これに、親類及び家族を含めると、全体の4分の3に達する。また、郵便は、発信については友人・知人・仲間と事業所がそれぞれ3分の1を占める一方、着信については、事業所が7割と高い値になっている(第1-3-19図参照)。
 同様に、電話発信の交流先を地方別にみると、関東、東海等の都市圏では、その他の地方に比べ、友人・知人・仲間との交流割合が大きくなっている反面、家族・親類との交流割合が小さくなっている(第1-3-20図参照)。
 また、都市規模別に見ると、大都市ほど友人・知人・仲間との交流の割合が大きく、親類との交流割合が小さくなっている(第1-3-21図参照)。
 ウ サービスや機器の新たな普及・利用の状況
 近年の家庭の情報化における特徴として、専らビジネスの分野で活用されている機器やサービスの家庭への普及が進んでおり、従来想定されていなかった新しい利用方法も現れている。
 ここでは、そうした主なサービスや機器として、無線呼出し、ファクシミリ及びパソコン通信を取り上げ、郵政省の委託調査を通じて行った、サービスや機器の提供者へのヒアリングや利用者に対するインタビューの結果を参考とし、家庭における普及動向や使われ方の特徴について紹介する。
 (ア)  無線呼出し
 昭和43年に提供が開始された無線呼出しサービスは、昭和62年に事業者間の競争が始まった。契約数の対前年同月比は19%を越える伸びを見せたが、3年度末は16%台、4年度末は13%台と、契約は増加しているものの、その伸び率は低下していた。
 しかしながら、5年6月から、毎月の対前年同月比が再び上昇に転じ、12月末においては18%強の伸びとなっている(第1-3-22図参照)。
 ある無線呼出しサービス提供事業者へのヒアリングによると、全契約者数に占める個人契約者の割合は1割〜2割程度であるが、5年の新規契約者における個人の割合は、概ね7割を占めており、上述の契約数の伸びはこのような個人契約者の急増のために生じているものと考えられる。
 また、同ヒアリングによると、このような最近の家庭及び個人への無線呼出しサービスの普及は、20才代の若年層が中心となっているほか、女子高校生などを中心とした20才未満の層に対しても急激に進んでいる。
 無線呼出しサービスの個人利用者へのインタビュー等によると、無線呼出しサービスにより、日常生活において、家族に気兼ねなく友人等との連絡を行ったり、通学や遊びに伴う頻繁な移動に対しても、仲間との待ち合わせの約束や、「おしゃべり」等を一層自由に楽しむための利用を行っているものと考えられる。
 更に、無線呼出しのメッセージ表示機能を活用し、数字等の組み合わせにより、語呂合わせや、仲間内だけに通じる暗号等により、仲間同士の連絡に利用するほか、特に相手への連絡を目的としない意思表示等、遊び感覚のコミュニケーションを楽しんでいる。
 このような無線呼出しサービスの利用の進展の背景としては、一般の電話サービスより安い費用で契約及び利用が可能であること、メッセージ表示機能の活用によって、必要最低限のコミュニケーションが行えること、また呼び出しがあった際、相手と連絡を取るか否かの選択を、受信者側ができることなどが挙げられる。
 (イ)  ファクシミリ
 4年度末の我が国におけるファクシミリの設置台数は、全体としておよそ 530万台と推定されており、近年、急速に設置台数が伸びている(第1-3-23図参照)。
 ファクシミリの家庭への普及の推定に関しては、経済企画庁の「家計消費の動向」によれば、4年度末現在の調査世帯における保有率が 6.7%となっており、3年度末の 5.5%から 1.2ポイント増加している。
 これは、近年、10万円前後ないしそれ以下への低価格化、機器の小型化を図るとともに、簡便な操作性等を図った、いわゆる「家庭用ファクシミリ」端末の商品化が機器メーカー等において進められていることが背景となっていると考えられる。
 家庭におけるファクシミリ利用者に対して行ったインタビューによると、ファクシミリの家庭における利用目的としては、勤務先との業務連絡、単身赴任世帯等における家族間の連絡、サークルや同好会における連絡、子供同士の勉強や遊びに関する情報交換等が挙げられている。また、簡易な複写機としての利用も挙げられている。
 家庭におけるファクシミリの普及を背景に、ファクシミリを導入している家庭を対象としたサービス等も様々な分野で広がっており、放送番組における視聴者の声等の収集や、学習塾におけるテストの添削、地域の商店における商品注文の連絡などのサービスが現れている。
 また、最近ファクシミリによって観光、商品販売、公共関係等の情報を案内するサービスが進展しており、ある電気通信事業者が推進しているサービスでは、推計利用回数が、4年度には 169万回と、3年度(70万回)に比べ、倍増以上の伸びを示している。
 このサービスを通じて、例えば、スキー場の現地案内、中古車販売、旅行者向けの海外の治安状況等の最新の情報が、個々の情報提供者により提供されている。
 (ウ)  パソコン通信
 商用パソコン通信サービスを提供する大手事業者2社の合計利用者数の推計は、事業者の発表によると、5年3月末現在で約 102万人に達しているといわれ、前年同月末現在からおよそ41%の高い伸びが見られている。
 当該2事業者のサービスは、我が国における商用パソコン通信サービスの利用者全体の半数以上をカバーしているといわれているが、この利用者全体に占める個人の割合は徐々に高まっている。同事業者によれば、5年時点における利用者全体の約7〜8割が個人であるといわれている。
 個人利用者へのインタビューによると、パソコン通信によって、生活地域・性別・年齢・利用時間等を越えた通信ネットワーク上のコミュニケーションが進展しているものと考えられる。
 例えば、家庭内にいる時間が比較的長い、育児に携わる人同士が、パソコン通信によって互いに情報交換することによって、居ながらにして、身の回りの出来事に関する自由な意見交換や、育児等の相談を容易に行うことができるといった点において効果があり、家庭生活における通信手段の一部としても、普及が進展してきていることがうかがえる。
 こうしてパソコン通信サービスにおける個人利用が伸びてきた背景として、特定の趣味や関心を持つ利用者同士の交流の場である、いわゆる「SIG」(Special Interest Group)がパソコン通信サービスのメニューの中で伸びてきたことが挙げられ、これまでパソコン愛好者が中心となっていた個人利用者層が、初めてパソコンを利用するような層にまで広がってきているものと考えられる。また、近年のハードウェアの低価格化も一翼を担っているものと考えられる。

第1-3-14図 家庭の情報化指標

第1-3-15図 情報支出指標を構成する各系の推移

第1-3-16図 情報入手可能性指標を構成する各系の推移

第1-3-17図 世帯における情報メディア機器の保有動向

第1-3-18図 情報メディア機器の都市規模別保有動向

第1-3-19図 電話・郵便の通信先構成比

第1-3-20図 電話の地方別の通信先構成比(発信,通話回数)

第1-3-21図 電話の都市規模別通信先構成比

第1-3-22図 無線呼出しサービス契約数の推移

無線呼出し

第1-3-23図 ファクシミリ設置台数の推移

 

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