平成6年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(4) 宇宙通信技術開発の推進

 ア 技術試験衛星VI型(ETS-VI)
 郵政省では、6年夏の打上げを目途に技術試験衛星VI型(ETS-VI)の開発を宇宙開発事業団及びNTTと協力して行っている。本衛星は、将来の需要増大に対応できる2トン級の大型衛星の開発に必要となる技術を確立することを目的としたものである。さらに、将来の衛星通信で必要となる様々な周波数帯における通信や、地上だけでなく、衛星と衛星との間の通信といった高度な衛星間通信の技術開発を目的として、各種の実験を行う。
 実験概要は、Kaバンドによる大容量の固定通信及びSバンドによる移動体通信並びに衛星間通信に関する高度の技術開発及び実験を行うことを予定している。
 郵政省では、本衛星通信実験を効率的・効果的に推進するため、郵政省、宇宙開発事業団及びNTTからなる「ETS-VI実験推進会議」を4年6月から開催し、開発担当機関が実施する「基本実験」の計画策定、連絡調整を行ってきたところである。
 「基本実験」では、[1]マルチビーム方式による固定地球局との通信実験、[2]Sバンド( 2.5GHz帯)電波による自動車・船舶との移動体通信実験、[3]持ち運び可能な超小型地球局との通信実験、[4]ETS-VIを経由して、低高度周回衛星との衛星間通信実験[5]ミリ波と光による衛星間通信の基礎実験、等を行う予定である。
 また、今後の多様化する衛星通信需要に対応するため、「基本実験」に加え、幅広く衛星通信に関心を有する企業、機関等に実験施設の機会を提供し、アプリケーション技術の開発や利用の促進に資するための「応用実験」を実施することとし、その基本方針の審議等を目的とする「技術試験衛星VI型応用実験企画推進会議」を6年3月から開催している。
 イ 通信放送技術衛星(COMETS)
 我が国の社会経済の発展に伴い、宇宙通信に対するニーズは今後一層増大、かつ高度化・多様化していくものと考えられる。そこで郵政省では、科学技術庁、宇宙開発事業団と協力して、Kaバンド(20〜30GHz帯)及びミリ波による高度移動体衛星通信技術(小型通信機によるデータ通信、テレビ電話等)、衛星間通信技術、高度衛星放送技術(広帯域HDTV)、大型静止衛星技術の高性能化技術等の開発及びその実験・実証を行うことを目的とした通信放送技術衛星(COMETS)を8年度に打ち上げることを目標に、2年度から搭載用中継器等の開発を進めている。郵政省通信総合研究所においては、3年度から高度移動体衛星通信用搭載中継器と高度衛星放送用搭載中継器受信部の開発を行ってきており、5年度で終了した。また、5年度は、4年度から開始した地上実験設備及び主局実験設備の研究開発を継続した。6年度は、維持設計として、電気性能確認試験に対する支援及び試験結果の評価を行う。さらに、地上実験設備の研究開発、主局実験設備の開発を継続することとしている。
 ウ 次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究開発
 21世紀初頭においては、地上系の通信システムが使えないような山奥であっても利用できる携帯電話、走行中の自動車等移動体においてもCD並の高品質な音声放送が安定的に受信できる移動体音声放送等の実現が期待されている。このため、郵政省では、21世紀初頭に実現が予想されるSバンド( 2.5/2.6GHz帯)移動体衛星通信システム、Sバンド移動体デジタル音声衛星放送システムに必要となる衛星技術の研究開発及び宇宙における実験・実証を目的とした次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究に4年度から着手している。5年度は本衛星技術に関する国際動向調査を実施し、本調査結果及び概念設計結果を踏まえ、設計検討を行った。6年度は、「次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の開発に関する調査研究会」を開催し、研究開発成果の評価・検討を行うとともに、ミッション機器の予備設計、ブレッドボードモデルの製作を行うこととしている。

ガン細胞内の染色体分裂のカラー立体画像

技術試験衛星<6>型(ETS-<6>)の想像図(写真提供:宇宙開発事業団)

 

通信放送技術衛星(COMETS)の想像図(写真提供:宇宙開発事業団)

 

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