平成6年版 通信白書

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第1章 平成5年情報通信の現況

3 情報通信経済の状況

 (1)  生産と雇用等の状況

 ここでは、主に産業連関分析の手法を用いて、情報通信産業の進展を経済的側面からとらえる。
 この分析においては、全産業を「情報通信サービス部門」(付注7参照)、「情報通信支援財部門」(付注8参照)及び「非情報通信関連部門」(付注9参照)の3部門に分け、各部門の構成を第1-2-21図のとおりとしている。
 ア 情報通信産業の生産額の動向
 3年における我が国経済の国内生産額は 906兆 9,061億円であり、このうち情報通信サービス部門の国内生産額は51兆 1,433億円(国内生産額の 5.6%)、情報通信支援財部門の国内生産額は43兆 1,724億円(同 4.8%)であった。この2部門を合わせた情報通信産業の国内生産額は94兆 3,157億円で、我が国経済の国内生産額の10.4%を占めており、昭和60年と3年の国内生産額を比較すると、我が国経済の国内生産額は35.2%の増加であるのに対して、情報通信産業の国内生産額は71.9%と大きく増加しており、我が国経済の国内生産額に占める割合も 2.2ポイント増加している(第1-2-22図参照)。
 また、情報通信産業の中の各部門別の国内生産額をみると、昭和60年と3年の国内生産額を比較して、国内生産額の伸びが特に大きい部門は、第二種電気通信、情報ソフト業等であり、これらは3倍以上の伸びを示している(第1-2-23図参照)。
 イ 情報通信産業の雇用動向
 情報通信産業とそれ以外の産業の雇用者を合計した3年の総雇用者数は、 5,357万人であり、昭和60年と比較して約 738万人の増加(16.0%の伸び)となっている。このうち、3年の情報通信産業の雇用者数は 388万人で、同様に昭和60年と比較して約81万人の増加(26.5%の伸び)となり、情報通信産業の雇用者数の伸びが、我が国の総雇用者の伸びを上回っていることがうかがえる。このため、情報通信産業の雇用者数が我が国の総雇用者数に占める3年の割合は 7.3%と昭和60年と比較して 0.7ポイント増加し、我が国の総雇用者数に占める情報通信産業の雇用者数の構成割合が増加している(第1-2-24図参照)。
 ウ 経済波及効果
 主に産業連関分析の手法を用い、情報通信分野の事業・施設整備及び郵政事業の施設整備を取り上げ、その事業等が我が国経済にもたらす経済波及効果を概観する(第1-2-25表参照)。
 (ア) マルチメディア・パイロットモデル事業(新世代通信網パイロットモデル事業)の経済波及効果
 当事業では、家庭・企業等の利用者が用いる端末機器、伝送設備やセンター設備等の各種機器、センター設備等を設置する建物等が整備され、これら施設整備に要する事業額の2.16倍の国内生産が誘発される。この中で最も大きく経済波及効果が及ぶ分野は情報通信機器製造業であり、誘発される総国内生産誘発額の44.3%に及ぶと算出される。
 (イ) 電気通信格差是正事業の経済波及効果
 電気通信格差是正事業の中から、4・5年度に実施された沖縄県先島地区民放テレビ放送難視聴解消事業を取り上げてみると、この事業では、伝送路となる海底光ファイバケーブルやマイクロ波回線施設、テレビ放送中継施設が整備され、これら施設整備に要する事業額の2.08倍の国内生産が誘発される。この中で大きく経済波及効果が及ぶ分野は情報通信機器製造業であり、誘発される総国内生産誘発額の33.8%に及ぶと算出される。
 (ウ) 4年度の電気通信・放送事業の設備投資の経済波及効果
 この設備投資は、電気通信事業者及び放送事業者が通信や放送の各設備を整備するものであり、産業連関分析によると、4年度の電気通信・放送事業の設備投資額は2兆 8,838億円であり、この設備投資は、投資額の2.07倍の5兆 9,818億円の国内生産と29万4千人の雇用及び 2,985億円の輸入を誘発すると算出される。誘発される国内生産が大きく及ぶ分野は情報通信機器製造業で、誘発される総国内生産誘発額の32.6%に及ぶと算出される。
 (エ) 都市型ケーブルテレビ局開局時の設備投資の経済波及効果
 この設備投資は、都市型ケーブルテレビ事業者が放送局を開局する時に放送施設、伝送施設、センター設備、建物等を整備するものであり、これら設備投資に要する事業額の2.06倍の国内生産が誘発される。この中で大きく経済波及効果が及ぶ分野は情報通信機器等の製造業、電気通信施設建設等であり、製造業全体に誘発される生産額は全体の49.9%、電気通信施設建設については24.2%に及ぶと算出される。
 (オ)  郵政事業の施設整備の経済波及効果
 郵政省では、所管する郵便事業、郵便貯金事業及び簡易保険事業の郵政事業が運営されており、事業に必要となる設備等を購入するなど施設整備が行われている。4年度の郵政事業の施設整備について我が国経済に対する経済波及効果をみると、総施設整備額 3,111億円の2.07倍である 6,453億円の国内生産と 252億円の輸入が誘発される。誘発される国内生産が大きく及ぶ分野は情報通信機器製造を含めた製造業であり、製造業全体に誘発される生産額は全体の47.5%に及ぶと算出される。

第1-2-21図 情報通信経済の部門構成

第1-2-22図 情報通信産業と我が国経済の生産額の推移

第1-2-23図 情報通信産業の国内生産額の推移

第1-2-24図 3年の情報通信産業の雇用者数の構成

第1-2-25表 情報通信分野・郵政事業の主な経済波及効果

 

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