平成6年版 通信白書

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第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(1) 21世紀前期における情報通信のマルチメディア化の進展

 アンケートによると、21世紀前期までのマルチメディア化を支える要素は以下のとおりであり、これらの要素の普及によって、より多様な表現メディアを、優れたヒューマンインターフェイス技術により、容易にかつ自在に受信発信することが可能となると予想されている(第3-1-1図参照)。
 ア 20世紀中
 高品質の動画を送受信することができる「映像通信」が普及し始め、テレビ電話やテレビ会議システムにより、遠く離れた者と互いに表情を見ながら、会話をしたり、打合せを行ったり、家庭で容易に動画を作成することができる「コンピュータグラフィクス作成装置」を用いて作成した映像を電子メールにして友人に送信したりできるようになろう。
 また、「インタラクティブテレビ」の利用が始まり、放送局から送られてきた番組をそのまま見るだけではなく、例えばスポーツ番組において適宜選手のプロフィールを呼び出したり、ビデオ・オン・デマンドで見ている映画を早送りしたり、一時停止することが可能となろう。
 イ 21世紀前期
 映像通信に加えて、高精細な動画を含む多様な表現メディアによる情報を蓄積し、情報通信ネットワークを介して、欲しい情報を引き出すことができる「動画データベース」の普及が始まるとともに、あいまいな条件設定でも必要な情報を検索することができる「あいまい検索」機能や高度な知能を有し、音声による指示により自動的に情報の検索や加工・処理を行う「電子秘書」、文字や音声等の表現メディアの情報を意味内容を保存したまま、他の表現メディアに変更する「メディア変換」機能、情報通信ネットワーク上の各種データベース等のどこに求める情報が存在するかを探し出す「ナビゲーション」機能などの高度なヒューマンインターフェイス技術が実用化すると予想されている。これにより、電子図書館・電子美術館・企業の電子カタログ等情報通信ネットワーク上の世界各地のデータベースから、文字による指示だけでなく、音声や絵によるあいまいな条件設定による指示により、欲しい情報を、動画を含む多様な表現メディアで、容易に入手することができるようになろう。
 屋外においては、動画をも送受信することができる「携帯マルチメディア端末」が普及し始めることにより、電子図鑑データベースからの映像で、動植物の生態や資料を確かめながら、野山の散策を楽しんだり、旅先の風景や遭遇した出来事をリアルタイムで、友人や報道機関に送信することが可能となろう。
 また、立体映像を送受信することができる「3次元映像通信」が普及し始めることにより、家庭等に居ながらにして、遠く離れた家族や友人、会社の同僚とあたかも同じ空間で対面しているかのような臨場感で対話やゲームを楽しんだり、3次元映像通信等を活用して遠隔地間を結んで高度な協同作業を行うことができる「テレワークシステム」による会議や研究開発を行うことができるようになるとともに、会話をリアルタイムで相手や自分の母国語に翻訳してくれる「自動翻訳」機能を利用して世界の人々との臨場感溢れる交流も可能となると考えられる。
 さらにマルチメディアに関する技術が一層進展することにより、コンピュータが構成した世界を視覚・聴覚・触覚、ゆくゆくは味覚・嗅覚で、あたかも現実の世界であるかのようなリアルな臨場感で体験すること(バーチャルリアリティ)を可能とする「バーチャルリアリティ通信」が普及し、情報通信ネットワークを通じてより高度な協同作業や臨場感に溢れる交流が可能になろう。
 また、ヒューマンインターフェイス技術を一層高度化し、文字や言葉による指示だけではなく、表情や身振り手振りによる指図も認識することができる「マルチモーダルインターフェイス」機能が普及し始め、人々は一層容易に、かつ自然にマルチメディアのアプリケーションを利用できるようになろう。

第3-1-1図 情報通信のマルチメディア化を支える要素の普及開始時期

 

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