平成6年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

第2節 多様なサービスの実現に向けた電気通信の展開

 1 電気通信事業政策の着実な推進

  (1) 電気通信産業政策の新たな展開

 ア NTTの在り方に関する政府措置の推進
 郵政省は、2年3月30日に決定された「日本電信電話株式会社法附則第2条に基づき講ずる措置」(いわゆる「政府措置」)について、広く国民・利用者への周知に努めるとともに、その具体的推進について、電気通信審議会に適宜検討状況を報告し、同審議会での審議結果を踏まえつつ取り進めている。政府措置は、公正有効競争を促進するため、NTTについて、長距離通信事業部、地域別事業部制の導入・徹底、移動体通信業務の分離、デジタル化の推進等の措置を講ずること、NTTの経営の向上等のため合理化の推進等の措置を講ずること、これらの措置の結果を踏まえNTTの在り方について7年度に検討を行い結論を得ることなどを内容としている。
 5年度においては、4年4月から実施された長距離通信事業部、地域別事業部制の導入・徹底を受け、5年6月NTTにおいて初めて事業部制収支状況が発表された。これにより各事業部の財産目録及び損益計算書が4年度決算から開示され、事業部単位の総収益、総費用、経常収支等が明らかになった。また、5年7月、NTT移動通信網(株)は、全国を9ブロックの地域に分割し、NTT北海道移動通信網(株)等地域ごとの9社体制に移行し、さらに、5年10月、業務の一部を委託していた受託会社とこの9社が地域ごとに合併した(第2-2-1表参照)。
 イ 規制緩和
 (ア)  携帯電話等に関する売切り制の導入
 昭和60年の電気通信制度の改革による競争原理の導入後、通信料金が低廉化すると同時に、移動機の小型化、高度化、軽量化等が進み、移動通信サービスは急速に普及している。このような状況を背景に月額基本料金等の低廉化、事業者間の競争による移動機の多様化等、利用者に対して大きなメリットをもたらすことが期待されることから、移動機の売切り制が実施されることとなった。6年4月、携帯・自動車電話、マリネット電話、簡易陸上移動無線電話について売切り制度が導入され、無線呼出しについては7年3月に導入される予定である。
 (イ) 電気通信事業者の試験サービスに関する料金等の認可制の廃止
 交換機のデジタル化の進展等最近の電気通信技術の進展や利用者ニーズの高度化・多様化に対応して、電気通信事業者に対してはサービスの多様化を図ることが求められている。郵政省としては、開発・改善後直ちに本格的に提供することが難しいようなサービスについて、本格実施前、試験的に行う環境を整えることにより、消費者の視点に立ったサービス開発・改善を電気通信事業者が行うことを促進させる観点から、関連省令の改正を行い、5年12月公布・施行することにより電気通信事業者の試験サービスに関する料金等の認可を廃止した。
 (ウ)  衛星通信の利用の拡大
 国際通信用の衛星は従来インテルサット(国際電気通信衛星機構)が一元的に提供してきたが、1990年代に入り国際電気通信需要の増大、顧客ニーズの多様化等に伴い、米国のパンナムサット等インテルサットに競合する国際衛星(非インテルサット衛星)が数多く出現しており、諸外国ではこれらの衛星利用に関する自由化が進められている。このような衛星通信をめぐる情勢の変化に対応するとともに、国境を越えて広域をカバーするという衛星の特性を最大限に活かした、より多彩な衛星利用を可能とすることが必要となっていることから、郵政省では、5年9月、我が国の第一種国際電気通信事業者が非インテルサット衛星を利用できることとした。
 ウ ニュービジネスの振興
 (ア) 地域情報通信市場の活性化
 昭和60年の電気通信制度改革により電気通信事業分野に競争原理が導入された結果、事業者間の競争を通じて、料金の低廉化等が着実に進展してきている。しかし、国内電気通信市場を通話回数ベースでみてみると、4年度で、市場全体の5分の1に当たる長距離通信(県間通話)市場ではNCC(新事業者)のシェアは26.8%となっているのに対して、市場全体の5分の4を占める地域通信(県内通話)市場では、NCCのシェアは 1.0%にとどまり、NTTの事実上の独占状態となっている。さらに、市場構造からみても、大部分のNCCはNTTの地域電話網と接続することにより初めてその事業展開が可能になるという状況にある。
 しかしながら、技術革新の成果をサービスに反映させ、高度化・多様化していくためには、この地域通信市場における競争を実現する必要があり、米国や英国等においても、近年、CATVや無線通信等を活用し、この分野に競争を導入しようとする積極的な取組がみられるようになっている。
 このため、郵政省が6年1月に発表した「情報通信産業の新たな創造にむけて」においても、CATV事業者による通信を含めたフルサービスや地域系新事業者によるISDN等の新しい高度サービスの実現の促進を重要施策として盛り込み、これを通じて、地域通信市場を活性化し、情報通信の一層の高度化を図ることとしたところである。
 (イ) 簡易型携帯電話システムの事業化の促進
 「いつでも、どこでも、だれとでも」通信できる新しいパーソナル通信サービスとして期待される簡易型携帯電話システムについて、できるだけ早期に事業化を図るための条件整備をする方策として、その社会的受容性確認、技術確認のため、5年10月から1年間の予定で実用化実験が実施されている。
 郵政省としても、この実験の実施状況等を踏まえながら、早期に簡易型携帯電話システムの事業化を推進すべく可能な限り速やかに検討を進めることが必要と考えており、6年1月に発表した「情報通信産業の新たな創造にむけて」においても、年内に事業化への道を開くとの方針を明らかにしたところである。
 エ 電気通信料金の在り方の検討
 郵政省では、利用者の利便の向上、公正かつ有効な競争の条件整備等の観点から、電気通信料金の在り方に関する検討を行っている。
 この中の主要な検討として、事業者間の接続料金制度の導入、移動機の売切り制導入に伴う回線使用料・通話料等が検討されている。
 事業者間の接続料金制度については、郵政省が開催した「事業者間接続料金研究会」の結果(5年6月)を基に、5年10月、NTTと長距離系新事業者3社の間の接続料金の設定等を内容とする接続協定が定められた。また、5年11月には、長距離系新事業者3社によりエンドエンド料金が導入された。
 さらに、移動機の売切り制導入に向け、郵政省が開催した「自動車・携帯電話の料金に関する調査研究会」の結果(5年10月)を基に、6年4月の売切り制導入の際、各事業者により利用者の選択の幅が広がる新たな利用料金の制度が導入されている。
 オ 電気通信の番号計画
 現在の番号計画は、昭和36年に当時の日本電信電話公社が電話サービスを念頭に策定したものを基本としている。今日のISDNサービスや移動体通信サービス等の多様なネットワークやサービスの形態を反映しつつ、今後利用者が大きく伸びることが予想される携帯・自動車電話サービスや新たに導入が考えられているパーソナル・ハンディホン、さらに、通信ニーズのパーソナル化・高度化等に対応できるように番号計画を検討していくことが必要となっている。
 このような状況の中、郵政省で開催した「電気通信の番号に関する研究会」の報告書(5年5月)では、「多様な網・サービスの識別等が可能な統一的な番号体系の検討が必要であること」、「番号管理は電気通信分野に競争原理が導入されている中で、中立・公正に行われる必要があり、番号管理の透明性・客観性を確保し、様々な観点から幅広く意見を聴取するための体制確立が必要であること」などが提言されている。

第2-2-1表 NTTの在り方に関する政府措置の推進状況の概要(6年4月1日現在)(1)

第2-2-1表 NTTの在り方に関する政府措置の推進状況の概要(6年4月1日現在)(2)

 

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