平成6年版 通信白書

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第3章 マルチメディアが拓く情報通信の新たな世界

(2) デジタル技術

 文字・図形・音声・データ・映像等表現メディアの統合的な処理・蓄積・伝送、映像情報の容易で効率的な伝送・蓄積等のためには、各メディアのデジタル化・伝送路のデジタル化が必要であり、デジタル技術開発の一層の推進が不可欠である。
 ア デジタル映像技術開発の推進
 郵政省では、通信・放送・パッケージ・映画・印刷等の各種映像メディアに共通して適用されるデジタル映像技術の体系化・規格の統合化の必要、超高精細デジタル映像システム(UDTV)の開発の提言を内容とする5年1月の電気通信技術審議会の答申「21世紀を展望したデジタル映像技術の在り方について」を受けて、今後のマルチメディア化の時代に対応して、通信・放送・蓄積・印刷・医療・映画等の様々な映像メディアに共通して適用できるデジタル映像技術の開発を推進している(第3-3-3図参照)。
 (ア)  デジタル映像技術開発に向けた情報交流
 5年2月、将来のマルチメディア化の時代を踏まえたデジタル映像技術開発に向け、通信事業者・放送事業者・利用者・製造業者等幅広い映像メディアの関係者間の情報交流の促進を図るため、「高度映像技術開発推進会議(AIM)」が設立された。
 AIMにおいては、[1]映像技術に関する現状把握・技術開発課題・開発目標・開発のシナリオ等についての調査研究、[2]映像関連メディアの提供者と利用者の情報交流・普及啓蒙の場として懇談会及びシンポジウムの開催、[3]高度デジタル映像技術の普及促進のための内外の関係機関との連携、調整活動を行っており、郵政省も会員として活動に参加している。
 このうち、[1]の調査研究活動は、開発部会及び特定分野を研究する分科会を設置して活動しており、5年度の活動として、開発部会全体としては「ノンインターレース・スクエアピクセルへの移行の課題」等の論文、「映像技術の高度化の目標」をとりまとめるとともに、分科会においては、アーキテクチャ、画質評価、アプリケーションの観点から調査研究を進めてきている。
 (イ)  MPEG-2確認実験の実施
 マルチメディアの発展に向けた映像のデジタル化を図るにあたっては、通信・放送・蓄積メディアにおける統一的なデジタル圧縮技術が必要不可欠であることから、現在国際電気通信連合は国際標準化機構と共同で、MPEG-2というデジタル符号化技術の国際標準化を進めているところであり、技術的仕様はほぼ固まり、来年初め頃には正式に標準化される予定である(第3-3-4表参照)。
 MPEGでは、MPEG-2が国際標準化されるにあたって、圧縮率と画質の関係等最低限確認しておかなければならない項目を、標準化に参加している各国のメンバーのボランタリにより確認実験を行うこととしている。我が国においては、郵政省、日本ビクター、日本テレビ、NHKが共同で6年1月より確認実験を行っている。
 また、今後、MPEG-2を利用した具体的なデジタル映像システムの構築に向けて、さらに各種実験を進めていく必要があるが、高度映像技術開発推進会議(AIM)では、上記のMPEG-2確認実験を補完する形で、確認実験では考慮されていない画像(シーンチェンジ、フェードイン・フェードアウトを伴う画像等)をMPEG-2で処理した場合の画質評価等を(株)横浜画像通信テクノステーションにおいて行う予定である。
 (ウ)  映像メディア統合伝送処理システムの試験研究
 5年3月に設立された「(株)グラフィック・コミュニケーション・ラボラトリーズ」では、基盤技術研究促進センターの出資を受け、映像メディア統合伝送処理システムの試験研究を行っている。
 本研究では、高解像度映像情報の通信・放送・蓄積等メディア間映像通信を実現することを目標にして、映像情報のメディア間変換方式、高解像度HDTV品質符号化方式を確立するとともに、映像メディア統合伝送処理システム技術について試設計・試作・評価実験を通して技術的可能性を実証することとしている。
 (エ)  超高精細映像のB-ISDN伝送実験
 今後、超高精細映像をB-ISDNで伝送することにより、遠隔医療・電子美術館・電子図書館・電子博物館等といった分野でより高度なサービスを提供できる可能性がある。このためには、電気通信技術審議会の答申で研究開発推進方策の1つとして挙げられているように、超高精細映像のB-ISDN伝送実験が必要となる。
 そこで、郵政省では5年度第三次補正予算により通信・放送機構に出資を行い、通信・放送機構では、超高精細映像のB-ISDN伝送実験を行う上で必要な設備を整備し、各種のアプリケーションを考慮して実際にフィールド・トライアルを行うこととしている。
 (オ)  国際標準化活動への寄与
 郵政省は、5年3月にITU無線通信部門の放送と非放送応用のためのTV規格の調和を研究するタスクグループに上記電気通信技術審議会の答申の概要を提出した。同タスクグループにおいては、HDTV以上の精細度を有する「超高精細映像」を新研究課題案として提案することとなり、5年11月の無線通信総会で正式に承認された。今後、各種の調査研究、実験結果の反映等我が国からの積極的な寄与が期待される。
 イ 放送のデジタル化の推進
 最近のデジタル技術の進歩は目覚ましく、通信分野をはじめコンピュータ、蓄積系メディア等でその効用が十分発揮されてきている。放送分野においても、番組制作や番組素材伝送の一部においてデジタル技術が用いられ、放送局内での番組の編集・加工等の容易性や番組素材伝送における伝送品質の向上などにその効用を発揮している。今後、マルチメディア環境に対応するためには、デジタル放送システムの実現が必要である。
 このような問題意識の下、郵政省において5年5月から「放送のデジタル化に関する研究会」を開催している。研究会では、放送に対する高度化、多様化するニーズヘの柔軟な対応、受信機の高性能化、多目的化、移動体受信の容易性、適切なサービス品質の確保、電波資源の高度利用等の社会的要請に応え、放送のインテリジェント化(高機能化、多チャンネル化、双方向化)を図るためには、長期的視野に立って、地上放送、衛星放送、ケーブルテレビはもちろんのこと、通信等他のメディアも総合的にとらえて放送のデジタル化を推進する必要があるとしている。この場合の基本的な考えとしては、[1]将来への発展が可能でかつ他のメディアとの整合性のある放送方式を採用すること、[2]放送サービスの円滑な発展により放送の活性化を図る制度の創設を図ること、[3]視聴者利益を増進すること、[4]電波資源の高度利用を図ることが示されている。このような基本的考え方に沿って、放送のデジタル化にあたり望ましい基本的枠組みが検討されており、[1]ISDB方式の採用、[2]適切な周波数帯域幅の設定、[3]地上波放送の変調方式としてのOFDM方式の開発・実用化の推進、[4]圧縮方式としてのMPEG-2方式の実用化の推進、[5]必要なビットレートを確保できる周波数帯域幅を単位とした免許の導入、[6]委託放送事業者の一般的導入が提案されている。

第3-3-3図 デジタル映像技術

第3-3-4表 MPEG各方式の概要

 

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