平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(1)高度化・多様化が進む国内電気通信サービス

 3年度の国内電気通信サービスのうち電話サービスにおいては、長距離系新第一種電気通信事業者(付注1参照)のID登録実数(注)及び通話回数の大きな伸びが続いているほか、NTTの加入者線交換機のデジタル化も進展しており、高度な付加サービスの提供、多様な料金等を実現する基礎が整いつつある。
 移動通信サービスの分野においては、無線呼出しサービス及び自動車・携帝電話サービスの契約数が引き続き大きな伸びを示している。このサービスでは腕時計型の無線呼出し機器、小型化・軽量化の進んだ携帯電話機等の多様な機器が提供されたり、通信料金の値下げが実施されるなど、企業における利用だけにとどまらず広い範囲で需要を喚起しつつある。また、4年3月には、9社目の自動車電話新事業者が事業許可を受けている。
 専用サービスにおいては、企業における高度化・高速化する情報通信ニーズに支えられで高速デジタル専用線サービスが高い伸び率を維持している。また、長距離系新事業者3社及び地域系新事業者7社は専用サービスの値下げを実施した。
 高速・高品質のデジタル公衆網であるISDNサービスは、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展にも伴ってサービス提供地域、契約回線数ともに大幅な伸びを示している。
 衛星通信サービスの分野においては、企業内映像情報伝送等の衛星通信の特性を生かしたニーズが増大しつつあり、3年4月には3社目の衛星系新事業者が事業許可を受けた。また、4年2月にはスーパーバードBが打ち上げられたほか、4年度以降においても新たな通信衛星の打ち上げ計画が進行中である。
 このように高度化・多様化する電気通信サービスの中から、利用者は二-ズに応じてサービス、事業者を選択することが可能となっている。通信料金についても、昭和60年の電気通信事業法の施行によって電気通信事業における独占を廃止し、事業者間の競争を導入した結果、各社の経営努力、技術革新等とあいまって、低廉化が進展してきている。さらに、加入電話及び携帯電話サービスの通話料金において、選択制の料金が4年4月から実施されるなど、通信料金における多様化も進展しつつある。
 ア 電話サービス
(ア)契約数及びサービス提供地域
 (NTTの動向)
 NTTの加入電話等契約数は、3年9月末現在5,560万契約であり、対前年同期比3.6%増となっている(第1-1-2図参照)。
 加入電話等のサービスのうち一般加入電話契約について、事務用、住宅用別にみると、3年9月末現在、事務用は1,739万契約(対前年同期比3.8%増)、住宅用は3,783万契約(同3.6%増)であった。伸び率は、それぞれ前年同期比で1.2ポイント、0.2ポイント低下している。特に事務用の伸び率は、ファクシミリの普及等に伴う加入電話の新設により昭和61年度以降住宅用を上回ってきているが、景気の減速等の影響を受け、伸び率の低下幅が住宅用よりも大きい。また、就業者1人当たりの事務用契約数は、0.28契約(前年同期は0.27契約)であり、1世帯当たりの住宅用契約数は0.90契約(同0.89契約)であった(注)
 (新第一種電気通信事業者の動向)
 長距離系新第一種電気通信事業者(第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株))3社の市外電話サービス契約数(ID登録数の3社単純集計)は、3年9月末現在、1,268万契約(対前年同期比44.6%増)、ID登録実数は812万回線(同52.6%増)であり、ともに大きな伸びが続いており、NTTの加入電話契約数に占めるID登録実数の割合は対前年同期比4.7ポイント増の14.7%となった。
 新事業者が市外電話サービスを提供している地域(一部地域の場合を含む。)を各社別にみると、3年度末現在、第二電電(株)は45都道府県(対前年度末比5県増)、日本テレコム(株)は45都道府県(同1県増)、日本高速通信(株)は20都府県(同増滅なし)であった(第1-1-3図参照)。
 一方、地域系新第一種電気通信事業者のうち、唯一加入電話サービスを提供している東京通信ネットワーク(株)(電話サービス開始は昭和63年5月)のサービス提供地域は、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨及び静岡の9都県の一部の地域である。加入電話契約数は、3年9月末現在5,206契約(対前年同期比62.3%増)であった。
(イ)トラヒック状況
 2年度におけるダイヤル総通話回数及びダイヤル総通話時間(NTT、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)の5社合計)は、それぞれ750.6億回(対前年度比2.5%増)、34億6千万時間(同4.1%増)であった。通話回数に比べて通話時間の伸び率が大きく、1回当たりの平均通話時間は前年度よりも3秒長い2分46秒であった。また、1日当たりの電話利用状況を計算すると、国民1人当たり約1.7回、4.6分間であり、1加入契約当たりでみると約3.8回、10.4分間であった(注)
 一方、ダイヤル総通話回数をNTTと新事業者(4社の合計)別にみると、NTTは726.1億回(ダイヤル総通話回数に占めるシェア96.7%)、対前年度比1.1%の微増であるのに対して、新事業者は24.5億回(同3.3%)、同79.4%の大幅増であった。新事業者の通話回数の大幅な増加は主に県間通話によるものであり、ダイヤル総通話回数の18.1%を占める県間通話についてみると、NTTは114.6億回、対前年度比2.0%の滅少であるのに対して、新事業者は21.6億回、同74.2%の大幅な増加であった。これに伴い、新事業者の県間通話におけるシェアは前年度の9.6%がら6.3ポイント上昇して15.9%となった(第1-1-4図参照)。
 (距離段階別通話回数)
 ダイヤル総通話回数を3分間10円の区域内通話、100km以内及び100km超に分けてみると、区域内通話が500.3億回(ダイヤル総通話回数の66.6%)、100km以内の通話が187.6億回(同25.0%)、100kmを超える通話が62.7億回(同8.3%)であり、距離が近いほど通話回数は多い(第1-1-5図参照)。
 また、市外通話の構成比をNTTと新事業者別にみると、NTTは100km以内の通話が78.6%(対年度比1.4ポイント増)、100kmを超える通話が21.4%(同1.4ポイント減)であり、100km以内の通話の構成比が大きいのに対して、新事業者の構成比はそれぞれ41.4%(同3.0ポイント増)、58.6%(同3.Oポイント減)であり100kmを超える長距離通話の割合が大きい。
 (通話時間別通話回数)
 ダイヤル総通話回数を通話時間別にみると、1分以内に完了する短時間の通話が382.2億回で最も多く、全体の50.9%を占めており、通話時間が長いほど通話回数は少なくなっている。NTT、新事業者のそれぞれにおける構成比をみると、この傾向はほぼ同様であるが、前年度と比べると、NTTにおいては1分以内の通話の構成比(対前年度比0.9ポイント増の51.2%)だけが拡大しており、新事業者においては10分超の通話の構成比(同1.0ポイント増の4.3%)及び1分以内の通話の構成比(同0.7ポインド増の42.8%)がそれぞれ拡大している(第1-1-6図参照)。
 (時間帯別通話回数)
 ダイヤル総通話回数を1日の時間帯別にみると、9時から10時の1時間における通話回数が71.5億回で最も多ぐ、全体の9.5%を占めている。NTT、新事業者のそれぞれにおける構成比をみると、両者とも昼間(8時から19時まで)の占める割合が高い傾向にある。この時間帯の占める割合はNTTが77.8%(前年度は78.0%)、新事業者が90.2%(同91.7%)であり、新事業者においてこの傾向は強く、新事業者の通話は事業所等による利用の割合がNTTの通話よりも更に大きいことがうかがわれる。また、前年度との比較では、NTTにおいては深夜早朝(23時から翌朝8時まで)の通話回数が9.1%増加したことにより、この時間帯の構成比が0.4ポイント上昇して5.7%になった。新事業者は、昼間以外の通話回数の伸び率が大きかったため、夜間(19時から23時まで)の時間帯における通話回数の構成比は8.2%(対前年度比1.2ポイント増)、深夜早朝(23時から翌朝8時まで)が1.6%(同0.3ポイント増)となった(第1-1-7図参照)。
(ウ)電話サービスの多様化の状況
 利用者の高度化・多様化する二-ズに対応し、電話サービスにおける新しいサービスの実用化が進められてきており、3年度においては、契約者があらかじめ決めておいた暗証番号等を用いてどこからでもメッセージの録音・再生・消去が可能なメッセージインサービスが実用化された。なお、昭和60年度以降のサービスの多様化の状況については、第1-1-8表のとおりである。 (エ)加入者線交換機端子数
 3年9月末現在のNTTの加入者線交換機の総端子数は、6,010万端子であり、前年同期比で5.1%増加した。そのうちID送出可能端子数は5,118万端子、総端子数に占める比率は85.2%であり、前年同期の73.3%から11.9ポイント上昇した。また、高度な付加サービスや料金の多様化を実現するための基礎となるデジタル交換機の端子数は2,550万端子、同42.5%であり、前年同期から10.0ポイント上昇した。
 一方、新事業者である東京通信ネットワーク(株)の加入者線交換機の総端子数は、3年9月末現在1万3,209端子(対前年同期比44.9%増)であった。すべてがデジタル交換機であり、ID送出可能端子である。
 イ ファクシミリ通信網サービス
 NTTのファクシミリ通信網サービスの契約数は、3年9月末現在45万6,901契約(対前年同期比12.8%増)であった。昭和56年9月にサービスを開始して以来、契約数は順調に増加している(第1-1-9図参照)。
 3年においては、ISDNに収容されているG4機から高速でファクシミリ通信網へ送信が可能になったほか、再コール回数を自由指定できるようになるなどの新機能が追加され、サービス内容も充実してきでいる。
 ウ 移動通信サービス
(ア)無線呼出しサービス
 3年9月末現在における無線呼出しサービスの総契約数(NTTと新第一種電気通信事業者36社の合計)は、555万3,110契約、対前年同期比18.5%増であった(第1-1-10図参照)。
 新事業者については、2年度中に全国において参入を果たしており(36社がサービス開始済)、契約数は3年9月末現在186万3,708契約、対前年同期比29.3%増であった。一方、NTTの契約数は同368万9,402契約、同13.6%増であった。総契約数における新事業者のシェアは、3年9月末現在33.6%であり、前年同期よりも2.9ポイント上昇している。
 無線呼出しサービスについては、全国でNTTと新事業者のサービスを選択できるほか、一部の地域では、他県でも使用できるいわゆる広域呼出しサービスがNTTと新事業者の両者でそれぞれ提供されている。また、呼出し専用のほか、より高機能な表示式のサービスもあり、腕時計型、カード型等の多様なものが提供されている。
(イ)自動車・携帯電話サービス
 3年9月末現在の自動車・携帯電話サービスの総契約数(NTTと新第一種電気通信事業者8社の合計)は109万700契約、対前年同期比61.5%増であった。自動車・携帯電話サービスの契約数は、新事業者の参入が本格化した元年度以降、急激に増加しており、その傾向は続いている(第1-1-11図参照)。
 新事業者については、3年度末現在、8社が41都道府県(県域の一部地域の場合を含む。)でサービスを提供しており、前年度末に比べて8県増加した。また、4年3月には沖縄セルラー電話(株)が新たに第一種電気通信事業者として事業許可を受けており、4年度に沖縄県で自動車・携帯電話サービスを開始する予定である。
 新事業者の契約数は、3年9月末現在42万3,196契約であり、前年同期比104.6%増と倍増している。そのうち、携帯電話サービスが37万3,034契約と88.1%を占め、自動車電話よりも,携帯電話が主流となっている。
 一方、NTTの契約数は、3年9月末現在66万7,504契約であり、前年同期比42.4%増であった。このうち、携帯電話サービスは36万2,911契約(従来は自動車電話の区分であったものの一部を3年度から携帯電話に計上している。)であり、NTTにおいても携帯電話が過半数を占めている。
 また、総契約数に占める新事業者のシェアは38.8%であり、前年同期比で8.2ポイント上昇している。特に、携帯電話のシェアでは、NTTを上回る50.6%となっている。
 3年度にも、小型化・軽量化された電話機が相次いで提供されるなど、機器の面での進展がみられ、契約数が急増した反面、今後の周波数不足が懸念されており、基地局の増設等が相次いで実施されているほか、4年度以降は、デジタル方式によるサービスの提供などが予定されている。
(ウ)その他の移動通信サービス
 第一種電気通信事業者が提供するその他の移動通信サービスとしては、従来からNTTが提供してきている船舶電話、列車公衆電話、航空機公衆電話等のサービスと、新事業者が提供を開始したサービスがある。
 NTTの提供している船舶電話サービスは昭和34年にサービスが開始され、3年9月末現在の契約数は1万8,992契約である。列車公衆電話は昭和40年に東海道新幹線においてサービスが開始されており、3年9月末現在1,216台設置されている。また、航空機公衆電話は昭和61年にサービスが開始され、3年9月末現在134台設置されている。
 一方、新事業者が提供する移動通信サービスについては、マリネット電話サービスは、3年4月に瀬戸内マリネット(株)がサービスを開始しており、3年9月末現在サービスを提供している3社の契約数は2,357契約であった。簡易陸上移動無線電話(コンビニエンス・ラジオ・フォン)サービスについては、3年9月末現在サービスを提供している4社の契約数の合計は6,292契約であった。また、テレターミナルシステムによるデジタルデータ伝送サービスの3年9月末現在の契約数は1,048契約であった。
 エ 専用サービス
 専用サービスには、一般専用サービス、高速デジタル専用線サービス、映像伝送サービス、テレビジョン放送中継サービス、無線専用サービス等があるが、ここでは、高い伸びを示している高速デジタル専用線サービスと最も回線数の多い一般専用サービスについてその動向を概観する。
(ア)高速デジタル専用線サービス
 64kb/s以上の高速伝送が可能な高速デジタル専用線サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者10社の合計)は、3年9月末現在1万2,883回線、対前年同期比32.1%増であった(第1-1-12図参照)。
 このうち新事業者の回線数は3,407回線であり、対前年同期比45.8%の大幅な増加であった。これに伴って、総回線数におけるシェアは前年同期の23.8%から26.4%へ2.6ポイント上昇した。品目別では、6Mb/s回線(新事業者のシェア36.8%)、3Mb/s回線(同36.9%)、1.5Mb/s回線(同35.1%)等の、より高速度の回線におけるシェアが、64kb/s回線(同13.5%)等の速度の低い回線におけるシェアよりも大きい。
 高速デジタル専用線サービスは、一般専用サービスに比べて伝送情報量当たりの回線料金が割安に設定されており、データ伝送と電話を統合して利用したり、LAN相互間の高速データ伝送、テレビ会議等に幅広く利用できるため、企業の情報通信ネットワークの基幹回線として必要不可欠なものとなりつつある。昭和59年11月にサービスが開始されて以降、順調に回線数が増加しており、6年余りで1万回線を突破した。特に、新事業者のサービスが開始された昭和61年度以降は、総回線数は急増している。 (イ)一般専用サービス(注)
 一般専用サニビスは、通話、ファクシミリ通信のほか銀行における預金業務のオンライン処理、航空会社の座席予約業務のリアルタイム処理、流通業におけるPOSシステム等のデータ伝送、放送業におけるラジオ放送中継等に幅広く利用されており、総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者10社の合計)は、3年9月末現在93万8,871回線、対前年同期比8.2%増と堅調な増加を続けている(第1-1-13図参照)。
 品目別にみると、帯域品目は65万1,857回線(対前年同期比7.2%増)、符号品目は28万7,014回線(同10.6%増)であった。帯域品目においては、電話網相当の規格を有する3.4kHz回線及び音声伝送回線が大部分(帯域品目の回線数の98.5%)を占めており、増加数の大半はこれらによるものであった。一方、符号品目においては、テレックス等の簡易なデータのやりとりに適した最も通信速度の低い50b/s回線(符号品目の回線数の79.8%)、一般専用サービスの中では最も通信速度の高い9,600b/s回線(同10.0%)が大部分を占めており、増加数の大半はこれらによるものであった。
 また、新事業者の回線数は6,471回線であり、総回線数におけるシェアは0.7%(前年同期は0.5%)にとどまっている。
 オ デジタルデータ伝送サービス
 NTTの提供するデジタルデータ伝送サービスには、パケット交換サービス及び回線交換サービスがある。回線交換サービスは減少傾向にあるのに対して、パケット交換サービスは順調な増加傾向を示している(第1-1-14図参照)。
 パケット交換サービスの回線数は、3年9月末現在30万1,647回線、対前年同期比49.3%増であった。特に、電話網を介してパケット交換網にアクセスする第2種パケット交換サービスの回線数は、3年9月末現在25万2,069回線、対前年同期比60.9%の大幅な増加であり、サービス開始(昭和60年)以降順調に増加している。この要因としては、企業の受発注システム、各種のデータベース・アクセス等のオンラインによる通信における利用が進展しつつあることに加えて、ホームバンキング、通信ゲーム等に応用分野が拡大しつつあることが挙げられる。
 また、回線交換サービスは、昭和62年度以降伸び率は低下傾向にあったが、3年9月末現在の回線数は、対前年同期比6.3%減少し、8,485回線であった。この要因としては、高度化・高速化するデジタルデータ伝送への需要に対応するものとして、回線交換サービスと同様にデジタルデータ伝送に適したサービスであり相対的に通信料金の低廉である専用サービス、ISDNサービス等に利用が移行しつつあることが挙げられる。
 カ ISDNサービス
 ISDNサービスは、音声による通信の他にデータ、映像等の情報も、大量、高品質かつ経済的にやりとりしたいという高度化・多様化する情報通信二-ズに応えるデジタルネットワークである。現在NTTが提供しているISDNサービスには、基本インタフェースによるもの(INSネット64)とテレビ会議等の高速伝送も可能な1次群インタフェースによるもの(INSネット1500)がある。さらに、デジタル通信モード(64kb/sのほか、1次群インタフェースは384kb/s及び1.5Mb/sの高速通信も選択可能)、通話モード、パケット通信モードの通信種類があり、必要な回線数、伝送容量、用途に応じてこれらを選択できる。また、通話中着信通知、フレックスホン等の電話サービスよりも高度な付加サービスも利用可能である。
 NTTにより提供されているISDNサービスは、2年4月から全国的に利用が可能となっていることから、サービス提供地域は3年度も拡大を続け、3年12月末現在1,700地域(注)(対前年同期比152.2%増)となった。これに伴い、回線数も急増しており、基本インタフェースによるサービス(INSネット64)は同6万7,705回線(同258.7%増)、1次群インタフェースによるサービス(INSネット1500)は同1,318回線(同227.9%増)となった(第1-1-15図参照)。
 キ 衛星通信サービス
 衛星通信サービスは、昭和59年11月に通信衛星2号(CS-2)により、NTTによって開始されていたが、元年には衛星系新第一種電気通信事業者である日本通信衛星(株)と宇宙通信(株)が、初の民間通信衛星を打ち上げてサービスを開始した。ところが、宇宙通信(株)の打ち上げたスーパーバードAは2年12月に故障したため、3年12月末現在、同社は衛星通信サービスを停止しており、3年12月末現在運用中の通信衛星は、衛星を開発した宇宙開発事業団と現在利用しているNTTなどが共同所有している通信衛星3号-a(CS-3a)及び通信衛星3号-b(CS-3b)と日本通信衛星(株)のJCSAT-1及びJCSAT-2の4機であり、トランスポンダ(電波中継器)数は88本(CS-3の24本、JCSATの64本)である。また、通信衛星を利用して情報の送受信を行う地球局として無線局免許を受けている数は、3年12月末現在1,824局(NTT206局、日本通信衛星(株)1,592局、宇宙通信(株)26局(休止中))であった。
 通信衛星の打ち上げ状況については、4年2月に宇宙通信(株)がスーパーバードBの代替機(トランスポンダ数25本)を打ち上げており4月からサービスを再開しているほか、4年12月にはスーパーバードAの代替機を打ち王げて衛星2機の運用体制となる予定である。また、3年4月には(株)サテライトジャパンが3社目の衛星系新第一種電気通信事業者として事業許可を受けており、6年度に通信衛星を打ち上げてサービスを開始する予定である。さらに、NTTはCS-3の後継機として独自に衛星を調達し、7年度に打ち上げる予定である。
 衛星通信は、地上系の通信と比べて、同報性及び広域性、回線設定の柔軟性及び迅速性、広帯域性、耐災害性等の特質があり、これらを生かして、CATVへの番組配信、サテライト・ニュース・ギャザリング(SNG)、企業内映像情報伝送等に利用されている。
 ク 電報サービス
 3年度上半期の電報通数は、2,212万通であり、対前年度同期比9.1%増であった。昭和61年度以降、総通数の増加傾向は続いているが、3年度上半期の伸び率は、2年度までの伸び率と比べると大きなものになっている(第1-1-16図参照)。
 3年度上半期の内訳は、一般電報が197万通、慶弔電報が2,015万通であり、慶弔電報が総通数の91.1%を占めている。それぞれの伸び率は、対前年度同期比で10.7%増、9.O%増であった。慶弔電報の増加の要因としては、昭和60年度以降にサービスが開始された「メロディ」、「押し花」等の付加価値電報の通数の伸びが挙げられる。これに伴い、慶弔電報に占める付加価値電報の割合も増加を続けており、3年度上半期の付加価値電報通数は1,010万通、対前年度同期比20.0%増であり、初めて慶弔電報通数の過半数を占めた。
 ケ ビデオテックス通信サービス
 NTTでは、キャプテン方式によりビデオテックス通信サービスを提供しているが、同サービスの利用契約数は、4年2月末現在12万423契約であり、対前年同期比8.0%増となっている。家庭用と事業所用に分けてみると、事業所用の利用契約数6万1,847契約(対前年同期比6.5%増)に対して、家庭用の利用契約数は5万8,576契約(同9.6%増)となっており、家庭用の伸びが事業所用を上回っている(第1-1-17図参照)。
 また、3年10月には、パソコン通信等において使用されている伝送速度1,200b/s及び2,400b/sでの接続機能を追加した。これにより、これらの速度のモデムを利用したパソコン端末、ディスプレイ付多機能電話機、ゲーム用コンピュータ等の利用者は、新たに端末を購入することなく、キャプテン機能付通信ソフトを用意し、NTTと契約するだけでビデオテックス通信サービスの利用が可能となった。
 コ 国内電気通信料金の低廉化
 国内の電気通信料金については、昭和55年度以降NTTの電話及び専用サービスを中心とした値下げが段階的に実施されてきており、通信料金の低廉化という社会的要請にも応えてきている。特に、電気通信事業の独占が廃止された昭和60年度以降は自動車電話系、無線呼出し等の各分野においても料金の低廉化が顕著である。日本銀行の「企業向けサービス価格指数」によると、全サービス業の総平均では昭和60年を100とすると、3年は114.1であり14.1ポイント上昇しているのに対して、3年の国内電気通信は93.1であり、6.9ポイント低下している。特に、無線呼出し(3年の指数73.4)、自動車電話(同76.4)、専用回線(同86.2)の指数の低下幅が大きい(第1-1-18図参照)。
 3年度においても、無線呼出し、自動車・携帯電話、専用サービス等の分野で料金値下げが実施された(第1-1-19表参照)。
 無線呼出しサービスについては、3年4月に新事業者のうち9社がトーン式、数字表示式及び文字表示式(3社のみ)のサービスの料金を約4%から約11%値下げした。
 自動車・携帯電話サービスの値下げについては、3年9月に通話料金を距離・時間帯によってNTTが7.1%から18.2%、日本移動通信(株)が3.4%から16.7%、セルラー電話グループ7社(注)が3.8%がら16.7%の値下げ率で実施した。
 また、専用サービスについては、3年4月に長距離系新事業者3社が高速デジタル及び一般専用サービスの料金を、5月に地域系新事業者7社が高速デジタル及び一般専用(4社のみ)サービスの料金を値下げした。
 一方、NTT及び日本移動通信(株)について、選択制の通話料金が、4年4月から実施されている。NTTの電話サービスにおける月ぎめ割引サービスは、料金明細が記録可能な加入電話契約者に対して、特定時間帯の通話料金について、選択可能な基準度数まで定額料金(最大14%割引)、基準度数を超えた場合は一定度数まで割引料金(割引率15%)となるものである。日本移動通信(株)における選択制の通話料金は、TACS方式の携帯電話サービスの利用者に対して、基準度数まで定額料金(最大40%割引)となるものである。
 さらに、4年4月には、長距離系新事業者3社が、170kmを超える遠距離通話料金を平日昼間で8.7%、それ以外の時間帯で7.4%値下げした。

第1-1-2図 事務用・住宅用一般加入電話契約数の推移

第1-1-3図 長距離系新第一種電気通信事業者の電話サービス提供地域(3年度末現在)

第1-1-4図 NTT,新事業者の県間通話回数におけるシェア(2年度)

第1-1-5図 電話サービス 距離段階別通話回数(2年度)

第1-1-6図 電話サービス 通話時間別通話回数(2年度)

第1-1-7図 電話サービス 時間帯別通話回数(2年度)

第1-1-8表 電話サービスの多様化

第1-1-9図 ファクシミリ通話網サービス契約数の推移

第1-1-10図 無線呼出し契約数及び新事業者のシェアの推移

腕時計型無線呼出し機器

第1-1-11図 自動車電話契約数及び新事業者のシェアの推移

テレターミナル端末

第1-1-12図 高速デジタル専用線サービス回線数及び新事業者のシェアの推移

テレビ会議

第1-1-13図 一般専用サービス回線数の推移

第1-1-14図 デジタルデータ伝送サービス回線数の推移

第1-1-15図 ISDNサービス契約回線数及び提供地域数の推移

第1-1-16図 電報通数の推移

第1-1-17図 ビデオテックス通信サービス利用契約数の推移

第1-1-18図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-19表 3年度における主な通信料金の低廉化状況

 

 

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