平成4年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

3 宇宙通信政策の展開

 (1)宇宙通信技術開発の推進

 ア 通信放送技術衛星(COMETS)の開発
 我が国の社会経済の発展に伴い、宇宙通信に対するニーズは、今後一層増大、かつ高度化、多様化していくものと考えられる。そこで郵政省では、科学技術庁、宇宙開発事業団と協力して、将来の通信・放送分野における新技術等の開発を自的とした通信放送技術衛星(COMETS)の開発に2年度から着手している。
 COMETSは、高度移動体衛星通信技術、高度衛星放送技術、衛星間通信技術、大型静止衛星の高性能化技術等の開発及びその実験・実証を行うことを目的とする衛星であり、8年度に打ち上げが予定されている。COMETSに搭載する通信機器のうち高度移動体通信のための中継器及び高度衛星放送のための中継器受信部については、3年度から、郵政省通信総合研究所において開発が開始された。搭載通信機器の開発と並行して、4年度以降は、通信実験のための地球局施設等の地上施設の整備が開始される。
 イ 次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究
 21世紀初頭においては、自動車等に向けて高品質音声放送を行う移動体デジタル音声放送、大容量衛星間通信等の実現が期待されている。
 このため、郵政省では、4年度から、移動体デジタル音声放送に必要な高出力中継器、1〜2トンクラスの衛星に搭載できる大型展開アンテナ、将来のデータ中継・追跡衛星に必要なミリ波帯及び光衛星間通信機器を搭載した次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究に着手することとしている。
 ウ 電波を利用した宇宙インフラストラクチャの整備方策に関する調査研究
 郵政省では、将来の宇宙活動の発展に備えて、宇宙環境モニタリングシステム、宇宙における情報通信ネットワーク、宇宙航行安全システム等、電波を利用した宇宙インフラストラクチュアについて、国際協力の進め方や行政施策等を含めた整備方策の検討を行っているところである。3年度より、宇宙環境モニタリングの在り方に関して調査研究を行っており、スペースデブリ(宇宙空間に存在する使用済みの人工衛星等の不要物体)問題に焦点を当て、スペースデブリ観測の国内外の現状、スペースデブリ観測システムに必要な機能や技術等について検討を行ったところである。4年度は、引き続きスペースデブリ観測のシステムイメージ、国際協力の在り方等について検討を行うとともに、太陽活動による宇宙環境の変化の観測・予報システムの在り方についても検討を行うこととしている。
 エ 測位衛星システムの在り方に関する調査研究
 衛星を利用した測位システムは、広範囲にわたって簡便に高精度の位置情報を提供することができることから、今後、自動車のナビゲーション、マリンレジャー等幅広い用途での利用が期待されている。
 このため、郵政省では、3年7月より「測位衛星システムの在り方に関する調査研究会」を開催し、衛星を用いた測位システムの安定的・継続的な利用方策について検討を行っている。
 オ 熱帯降雨観測衛星の開発研究
 エルニーニョ現象、砂漠化等の地球的規模の環境変化を把握することは、近年、世界的に緊急かつ重要な課題となっている。このためには、地球の水や熱の収支・循環を支配する降雨の状況を正確に知ることが必要であり、特に地球全体の約3分の2を占める熱帯地域における降雨を観測することが不可欠である。
 熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、人工衛星によるリモートセンシング技術を用いて熱帯地域の降雨強度及びその分布に関わるデータを取得し、これによって地球環境変動のメカニズムの解明や地球環境保全に資するものであり、8年度頃にH-IIロケットにより打ち上げられる予定である。TRMM計画は、日米共同プロジェクトとして進められている。郵政省通信総合研究所では、3年度より、宇宙開発事業団と協力してTRMM搭載用降雨レーダの予備設計及び試作試験に着手している。

 

 

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