平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(4)通信事業の設備投資動向

 昭和56年度以降の主な通信事業体の設備投資の動向を第1-2-17図及び同18図に示す。郵便事業、NTT、KDD、新第一種電気通信事業者、NHK及び民間放送事業者の設備投資額合計は、昭和56年度の1兆9,973億円(注)から2年度には2兆6,691億円に増加している。
 ア 電気通信事業者の設備投資動向
 (第一種電気通信事業者の動向)
 3年10月に郵政省が実施した「通信産業設備投資等実態調査」によると、第一種電気通信事業者全体(69社合計)の2年度の設備投資実績額は2兆2,469億円であり、前回調査(3年2月実施)による元年度の設備投資実績額2兆1,017億円(68社合計)に比べ6.9%の増加であった。
 その内訳をみると、NTTが1兆8,251億円(対前年度実績額比5.2%増)、KDDが570億円(同2.9%増)であるのに対し、新第一種電気通信事業者は、サービス提供地域の拡大、多ルート化等のため3,647億円(67社合計)と前年度実績額3,107億円(66社合計)に比べ17.4%増と大幅な伸びを示した。
 また、第一種電気通信事業者の3年度の設備投資実績見込額(69社合計)は2兆4,218億円(対前年度実績額比7.8%増)となっている。このうち、NTTが1兆8,500億円と前年度実績額に比べ1.4%増の見込みとなっているのに対し、KDDは、721億円(対前年度実績額比26.5%増)と高い投資額を見込んでいる。一方、新第一種電気通信事業者(67社合計)は4,997億円(対前年度実績額比37.0%増)と大幅に伸びており強い投資意欲がうかがわれる。これは設備投資の主体となっているサービス提供地域の拡大、事業の全国展開等に伴う初期投資が依然として盛んに行われているためであり、計画的な設備投資の性格が強いことがうかがわれる(第1-2-19表参照)。
 次に、新第一種電気通信事業者の目的別設備投資額は「需要増加に対処」が2年度実績84.4%、3年度実績見込86.0%、4年度計画87.8%と大部分を占めており、しかも、その比率は増加してきており、事業が拡大していることがうかがわれる(第1-2-20表参照)。
 (第二種電気通信事業者の動向)
 3年10月調査等による第二種電気通信事業者の3年度の設備投資実績見込額についてみると、特別第二種電気通信事業者(24社合計)が1,494億円(対前年度実績額比14.1%増)、一般第二種電気通信事業者(回答339社合計)は979憶円(同19.0%増)と設備投資意欲は引き続き強いと思われる(第1-2-21表参照)。
 イ 放送事業者の設備投資動向
 3年10月調査に回答のあった放送事業者(CATV事業者を除く。)の3年度の設備投資実績見込額についてみると、NHKは、628億円で対前年度実績額と同額であるのに対し、民間放送事業者(回答167社合計)は1,225億円と前年度実績額に比べ8.2%増となっている(第1-2-22表参照)。
 放送事業をめぐる景気動向は、後で述べるように3年度に急激に悪化すると判断している事業者が多いが、設備投資額は逆に増えている。投資目的としては、「施設の更新(老朽代替)」及び「番組制作力の向上」の2項目で50%以上の高い比率を占めている(第1-2-23表参照)。
 一方、3年10月調査に回答のあったCATV事業者の3年度の設備投資実績見込額についてみると、448億円(回答132社合計)であり、前年度実績額に比べ8.6%減となってぃる。
 ウ 設備投資環境の見通し
 「通信産業設備投資等実態調査」(3年10月調査)における通信事業の業況判断指標(BSI:上昇と判断した者の割合から下降と判断した者め割合を引いた数値)についてみると、電気通信事業では4年度上期のBSIは第一種電気通信事業が28で依然として好調、特別第二種電気通信事業が52で極めて好調、一般第二種電気通信事業が20で引き続き堅調と判断している。また、放送事業についてみると、4年度上期のBSIはCATV事業では20で依然として堅調さを維持しているが、民間放送事業では-32となっており、業況の先行きについては強い不安感が広がってきていることがうかがわれる(第1-2-24図参照)。
 エ 要員状況
 電気通信事業及び放送事業全体では、人材確保に問題なしとする事業者が問題ありとする事業者を上回っているが、第二種電気通信事業では、過半数の事業者が人材確保に問題ありと回答しており、特に特別第二種電気通信事業ではその比率は6割以上と高い(第1-2-25表参照)。
 職種別では、技術者不足を挙げる事業者が多く、特に特別第二種電気通信事業者ではその比率が85.7%と深刻である。人材確保難が与える主な影響としては、各事業とも「サービスの提供の遅延・繰延べ」及び「新規事業展開の遅延」を挙げており、人材確保難が設備投資に影響を与えていることがうかがわれる(第1-2-26表参照)。

第1-2-17図 主な通信事業体の設備投資額の推移

第1-2-18図 主な通信事業体の設備投資の推移

第1-2-19表 第一種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-20表 取得設備投資額の投資目的別構成比(電気通信事業)

第1-2-21表 第二種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-22表 放送事業者の設備投資額

第1-2-23表 取得設備投資額の投資目的別構成比(放送事業)

第1-2-24図 設備投資環境の見直し

第1-2-25表 人材確保の状況

第1-2-26表 人材確保難が与える影響(現在)

 

 

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