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第1章 平成3年情報通信の現況(2)情報通信経済の状況ここでは、産業連関分析の手法を用いて、「産業連関表」(総務庁)、「延長産業連関表」(通商産業省)等を基に、産業の情報化の進展を経済的側面からとらえることとする。この分析(注)においては、全産業を情報通信サービス部門(付注8参照)、情報通信支援財部門(付注9参照)及び非情報通信関係部門(付注10参照)の3部門に分け、各部門の構成を第1-3-39図のとおりとした。ア 我が国経済における情報化の進展 (ア)情報通信産業の成長 昭和63年において我が国経済の国内生産額は743兆9,215億円であり、そのうち情報通信サービス部門は35兆3,927億円(我が国経済全体の4.8%)、情報通信支援財部門は35兆6,730億円(同4.8%)であった(第1-3-40図参照)。 この2部門を合わせた情報通信産業の国内生産額は71兆657億円であり、我が国経済の9.6%を占めている(第1-3-41図参照)。 また、昭和55年と比較すると、我が国経済全体は37.0%の拡大であるのに対して、情報通信産業は123.7%と大きく拡大しており、我が国経済に占める割合も3.8ポイント上昇している。 情報通信産業のうち特に伸びが大きい部門は有線放送、ソフトウェア業、情報サービス業、電子応用装置、電子計算機、VTR、事務用機器賃貸業、半導体素子・IC等の部門であり、これらは国内生産額が3倍以上に拡大している。また、非情報通信関係部門に属する他の部門と比較してもこれらの部門は高い伸び率となっている。 (生産額1万円当たりの通信費用からみた利用分野) ここでは、各部門における生産額1万円当たりに通信費用が占める割合を比較し、単位生産当たりの通信費用の大きな分野についてみることとする。 昭和63年において、生産額1万円当たりに占める通信費用の大きい産業を示したものが第1-3-42図である。全産業の平均では1万円の財・サービスのうち、74円を通信料金の費用が占めており、昭和55年の値(65円)から9円上昇している。情報通信サービス部門に属する各部門は、その産出するサービスが情報にかかわるものであるため、全般的に通信費用の古める割合は大きな値となっている。特に、国際電気通信(1,770円)、ニュース供給等(837円)、第二種電気通信(714円)、民間放送(676円)、公共放送(455円)、有線放送(266円)、広告業(228円)等において通信は多く利用されている。情報通信サービス部門以外では、研究(417円)、保険(355円)、金融(207円)、商業(183円)等の産業において大きい値となっでいる。 (イ)組織内情報通信部門の拡大 情報通信活動には、市場にサービスを提供する産業としての活動と、企業内部で自家消費されるものがある。ここでは、このような観点から情報通信支援財部門及び非情報通信関係部門において組織内情報通信部門(付注11参照)を特に独立した部門として取り上げ合計5部門として、我が国経済における情報通信活動の進展状況をみることとする(第1-3-43図参照)。 情報通信活動とは、情報通信サービス部門と情報通信サービス部門以外の部門で行われている組織内情報通信部門の活動を合わせたものである。昭和63年における組織内情報通信部門の生産額は85兆1,110憶円であり、情報通信サービス部門の生産額と合わせた情報通信活動による生産額の合計は120兆5,040億円となる。これは、組織内情報通信部門の生産額を加えた我が国経済全体(注)の生産額の14.5%を占めている。また、昭和55年においては情報通信活動が経済全体の9.7%であり、8年間で4.8ポイント上昇している。組織内情報通信部門は、昭和55年及び63年においてともに情報通信活動の約7割を占めており、市場における情報化と産業内部における情報化が同じテンポで進展したことがうかがわれる(第1-3-44表参照)。 (情報化係数) 情報化係数とは、各部門が財・サービスを生産するときの総費用のうち、情報通信関連費用の比率を示す指数であり、この情報通信関連費用は、情報通信サービス購入のための費用(情報通信サービス費用)及び情報通信支援財のうち部品以外のものの購入費用(情報通信支援財費用)、直接他の産業から購入されない情報通信にかかわる労働者の費用(情報労働費用)及び情報通信関連設備の減価償却費(情報資本費用)の四つに大別される。 昭和63年の主要な産業部門の情報化係数は、第1-3-45図のとおりである。産業全体の情報化係数は14.8であり、その内訳は、情報労働費用が47.4%、情報通信サービス費用が34.1%、情報資本費用が15.5%、情報通信支援財費用が2.9%であった。また、昭和55年の情報化係数は9.1であり、8年間で5.7ポイント上昇している。情報化係数の各費用の構成比を昭和55年と昭和63年で比べると、わずかな動きであり、この期間における情報化は費用面でみると、各費用とも、同じテンポで進展したことがうかがわれる(注)。 昭和63年の情報化係数を部門別にみると、情報通信サービス部門に含まれる産業には情報化係数の大きい部門が多く、広告業(情報化係数76.9)、ソフトウェア業(同74.1)、第二種電気通信(同69.7)、国際電気通信(同65.3)、電子計算機器賃貸業(同63.4)、情報サービス業(同60.6)、第一種電気通信(同56.4)、出版(同56.0)、民間放送(同55.2)、郵便(同50.6)の各部門では、情報化係数が50を超えており、総費用の過半数が情報通信関連費用である。また、情報通信サービス部門以外で情報化係数の大きい部門は、研究(同37.4)、対事業所サービス(同36.5)、公務(同32.4)、金融(同30.8)、保険(同26.2)等である。 イ 情報通信産業と我が国経済とのかかわり 産業分野における情報化の進展は、情報通信サービスや情報通信機器等の需要拡大をもたらし、情報通信産業の発展を促している。ここでは、情報通信産業の発展が我が国経済に及ぼす影響を、波及効果の面からみることとする。 (情報通信産業の生産誘発効果) 情報通信産業の昭和63年の生産誘発効果は1.41(昭和55年は1.54)であり、この部門が71兆657億円の生産を行うことにより他の部門に29兆4,165億円の生産誘発をもたらした(第1-3-46表参照)。 機器製造業を含む情報通信支援財部門は中間投入比率(注)が高いため、生産誘発効果は1.61であり、サービスを提供する情報通信サービス部門の1.36よりも大きい。また、情報通信サービス部門の生産誘発効果を産業別にみると、広告(2.32)、出版(2.23)、第二種電気通信(1.94)、新聞(1.93)等の中間投入比率の高い部門において大きい。設備集約型の第一種電気通信及び国際電気通信、労働集約型のソフトウェア業、ニュース供給等、情報サービス業、郵便等は、中間投入比率が低いため波及効果は小さい。 (情報通信機器への設備投資によ,る波及効果) 産業分野が行う情報通信機器への設備投資は、情報通信機器製造業の生産活動を直接誘発し、さらにその生産が他産業部門へ生産を誘発するというかたちで、我が国経済全体及び海外にその効果が波及していく。 昭和63年における産業分野の情報通信機器への投資額は11兆483億円(昭和55年は3兆5,416億円)であった。これは国内総固定資本形成全体の10.1%に相当する規模であり、昭和55年の割合(4.7%)と比較すると5.4ポイント拡大している。この投資は、投資額の2.14倍(昭和55年は2.12倍)の23兆5,982億円の国内生産、99万7千人の雇用を誘発し、さらに、1兆1,501億円の輸入を誘発し、海外へも影響を及ぼしている(第1-3-47図参照)。
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