平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

2 電気通信事業・放送事業における電波利用

 (1)電気通信事業

 電気通信事業の分野においては、社会経済活動の広域化・多様化の進展による移動通信ニーズの高まりに対応して、自動車・携帯電話、無線呼出し等の移動通信サービスが急速に普及しており、機動性や回線設定の容易さを兼ね備えた無線通信は、移動通信には欠かせないものとなっている。
 以下では、移動通信サービスを中心に、代表的な電気通信事業における電波利用について概観する(第3-1-6図、第3-1-7表参照)。
 ア 陸上移動通信
(ア)自動車・携帯電話
 自動車電話サービスは、昭和54年12月、NTTにより東京23区でのサービスが開始され、昭和62年4月以降、携帯電話サービスも開始された。現在ではNTTのほが日本移動通信(株)、各地域セルラー電話会社により提供されている。
 自動車・携帯電話サービスの総契約数は、3年9月末で約109万契約であり、対前年同期比61.5%増、昭和56年度末の契約数1万3千契約の84倍となっているなど、利用が急速に拡大しており、加入者収容能力を増加させるため、サービス提供地域を複数の無線基地局でカバーする小ゾーン方式、いわゆるセルラー方式がとられている。
(イ)無線呼出し
 無線呼出しサービスは、昭和43年7月、NTTにより東京でサービスが開始され、現在はNTTが全国でサービスを提供しているほか、各地域に新事業者が1社ずつサービスを提供している。
 3年9月末における無線呼出しサービスの総契約数は、約555万契約であり、昭和55年度から2年度までの10年間の年平均伸び率は、16.3%となっている。特に、新事業者がサービスを開始した昭和62年度以降は、受信機の小型化・利用可能時間の長時間化等の高性能化が積極的に図られたことなどにより、伸び率は20%前後と高くなっている。
 (ウ)その他の陸上移動通信
 その他の陸上移動通信サービスとしては、簡易陸上移動無線電話、テレターミナルがある。
 簡易陸上移動無線電話は、元年11月、十勝テレホンネットワーク(株)が帯広市内及びその周辺の地域においてサービスの提供を開始し、現在、同社を含め4社がサービスを行っている。
 本システムでは、エリア内の乗用車、トラックなどの移動局とのチャネル設定は、MCA方式(注)により行い、さらに、通話時間を制限することによって周波数の効率的利用を図っている。
 簡易陸上移動無線電話の加入局数は、元年度末900局、2年度末5,200局、3年9月末現在約6,290局と増加してきている。
 テレターミナルシステムは、無線技術を利用して事務所にある中央コンピュータと、外勤中のセールスマン等が携帯する端末機や車両に搭載する端末機を結び、双方向のデータ通信を行うサービスであり、MCA方式とパケット交換方式の採用により、多数のユーザが周波数と設備等を有効に利用することのできるデータ無線通信システムである。
 日本シティメディア(株)が元年12月がら東京23区を対象にサービスを行っており、加入局数は、元年度末100局、2年度末700局、3年9月末現在約1,050局となっている。
 イ 海上移動通信
 海上移動通信サービスには、主なものとして、船舶電話、港湾無線電話(マリネット電話)がある。
 船舶電話は、港や沖に停泊中の船舶や、日本沿岸を航行中の船舶に設置された電話と、全国の一般加入電話・自動車電話と通話できる公衆無線電話で、船舶相互の通話も可能である。
 昭和54年3月から、NTTがダイヤル自動通話によるサービスを行っており、日本沿岸から約50kmまでの海域での使用が可能となっている。契約数は、3年9月末現在で、約1万9千局となっており、増加傾向にある。
 港湾無線電話は、港湾地域における小型船舶などのための簡易な無線通信システムとして、昭和63年から導入された。本サ-ビスは、MCA方式による大ゾーン(無線ゾーン半径が50km)の移動無線電話であり、現在、東京湾地域においては東京湾マリネット(株)が、大阪湾地域においては関西マリネット(株)が、広島湾地域においては瀬戸内マリネット(株)がそれぞれサービスを行っている。港湾無線電話の加入契約数は3年9月末現在で約2,360局である。
 ウ 航空移動通信
 航空移動通信サービスには航空機公衆電話・空港無線電話がある。航空機公衆電話は、国内線旅客機を対象とする航空機発信専用の公衆電話サービスで、既存の自動車電話システムと共用のシステムにより一般加入電話に接続する経済的な航空機電話方式であり、昭和61年5月からNTTによりサービスが開始された。全国6か所の無線基地局から発射される電波により、日本のほぼ全域を5,000m以上の高度でカバーしている。航空機公衆電話は、3年9月末現在134台が設置されている。
 空港無線電話は、航空会社と各社所属の航空機との間で行われる通話(地対空通信)及び空港関係機関とそれらの従業員や車両との間で行われる通話(地上通信)を可能とするもので、NTT及びKDDが空港無線電話設備を用いて提供しているサービスである。また、新たな地上通信のサービスは、2年6月から新東京国際空港(成田)に導入されており、局数は3年12月末現在で約1,680局である。
 また、インマルサットを用いた航空衛星移動通信サービスが現在KDDにより提供されており、4年3月末現在で3局となっている。
 エ 衛星通信
 衛星を利用した無線通信は、広域性、同報性、回線設定の柔軟性など他の電気通信手段にはない多くの特徴を有しており、CATV番組配信、企業内通信、サテライト・ニュース・ギャザリング(SNG)等に利用されている。
 SNGは、取材現場の映像・音声を放送局に送る手段として通信衛星を使って伝送するもので、回線設定が自由にできることから山間部や離島などからの中継がやりやすくなり、テレビニューズの報道になくてはならないものとなっている。
 衛星通信サービスを提供する電気通信事業者としては、NTTのほか、日本通信衛星(株)、宇宙通信(株)、(株)サテライトジャパンがあり、衛星のトランスポンダは、3年12月末現在88本である。
 オ 中継系(マイクロウェーブ伝送)
 電気通信事業者が全国網を構築する回線の一つとして、マイクロ波帯(3〜30GHz)の無線回線が使用されている。
 NTTにおけるデジタルの中継システムでは、1システムの標準的な中継距離は10〜50kmで、全国で約16,600システム、延べ中継距離は約81,500kmとなっている。
 また、第二電電(株)は、市外中継ネットワークの伝送を主にマイクロウェーブ伝送により行っており、無線局数が全国で392局、延べ中継距離は約7,300kmとなっている。

第3-1-6図 電気通信事業における電波利用状況

第3-1-6図 電気通信事業における電波利用状況

第3-1-7表 電気通信事業における電波利用システム

第3-1-7表 電気通信事業における電波利用システム

 

 

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