平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(3)通信事業の経営動向

 ア 第一種電気通信事業者の経営状況
 3年度上半期の第一種電気通信事業における営業収益は、2年度上半期の対前年度同期比の伸び率5.3%には及ばながったものの、2年度上半期比4.9%増の3兆2,182憶円とおおむね順調に拡大した。これを国内電気通信と国際電気通信とに分けてみると、国内は前年度同期比4.8%増の3兆747億円、国際は同8.1%増の1,435億円であった(第1-2-4表参照)。
 2年度の経営状況についてみると、国内は前年度比6.2%増の6兆504億円で、電気通信事業法が施行された昭和60年度の1.23倍となっており、その間の年斗均伸び率は4.2%であった。2年度の単年度伸び率は過去5年間の平均伸び率を2ポイント上回っている。国際は前年度比2.2%増の2,659億円で、昭和60年度の1.24倍となっており、その間の年平均伸び率は4.4%であった。2年度の単年度伸び率は過去5年間の平均伸び率の半分となっている。
 主な電気通信事業者及び放送事業者の2年度の財務状況を他の公益事業及び全産業と比較すると、売上高経常利益率及び総資本経常利益率については、ともに全産業、他の公益事業より高くなっている。総資本回転率については、電気通信事業者は他の公益事業者と同様、設備産業であることから放送事業者及び全産業よりも低くなっている(第1-2-5表参照)。 (ア) NTTの経営状況
 3年度上半期のNTTの経営状況は、総収益3兆34億円(前年度同期比1.8%増)、営業収益2兆9,645億円(同1.9%増)、経常利益1,351億円(同12.8%減)の増収減益であった。
 営業収益のうち電気通信事業営業収益は前年度同期比1.7%増の2兆8,153億円であり、これをサービス別にみると同社の主力収入部門である電話収入は、民営化以来初めて横ばいの2兆3,834億円となった。これは、フリーダイヤル、キャッチホン、自動車・携帯電話などは、前年度同期を大きく上回る増収となったものの、ダイヤル通話料収入が新規事業者との競争の激化、3年3月の大幅な料金引き下げ、景気の減速等の影響を受け、大きく減少したためである。収益全体に占める電話収入の割合も79.4%(前年度同期80.8%)と1.4ポイント減少している。
 これに対して専用収入、データ伝送収入及び無線呼出し収入は、前年度同期比でそれぞれ4.4%増、10.3%増、14.5%増と引き続き好調な伸びを示している(第1-2-6表参照)。
 2年度の財務状況は、売上高経常利益率7.0%(前年度8.4%)、総資本経常利益率3.8%(同4.5%)、総資本回転率0.54回(同0.53回)であった。
 また、2年度の電話役務の営業損益をみると、基本料は10,526億円の収益に対し1,899億円の赤字、市内通話は15,074億円の収益に対し32億円の赤字、市外通話は14,500億円の収益に対し9,543億円の黒字となっている(第1-2-7表参照)。
(イ)長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況
 3年度上半期の長距離系新第一種電気通信事業者3社の営業収益は、サービス提供地域の拡大などで順調に伸展し、その合計は前年度同期比40.0%増の1,905億円であった。
 このうち電気通信事業営業収益の合計は、同45.9%増の1,545億円で国内の電話及び専用線市場(注)の5.8%を占めており、前年度同期より1.7ポイント増加した。
 各社の経営状況をみると、第二電電(株)の営業収益は前年度同期比31.8%増の932億円、経常利益は同23.8%増の107億円、日本テレコム(株)の営業収益は同57.6%増の806億円、経常利益は同35.9%増の79億円と大幅な増収増益であった。これに対し日本高速通信(株)の営業収益は同17.0%増の165億円を計上したものの、設備投資、人件費等の増加により経常損益は38億円の赤字であった(第1-2-8表参照)。
(ウ)地域系新第一種電気通信事業者の経営状況
 3年度上半期の地域系新第一種電気通信事業者6社(注)の営業収益の合計は前年度同期比58.8%増の238億円と大幅な増収となった。経常損益の合計は31億円の赤字となったが、赤字幅は半減している。
 6社合計の営業収益のうち電気通信事業営業収益は、前年度同期比66.2%増の133億円であった。電気通信事業営業収益のうち電話及び専用線に係る収益は130億円で同市場の0.5%を占めており、専用線に限ると127億円で同市場の5.6%を占めている(第1-2-9表参照)。
(エ)衛星系新第一種電気通信事業者の経営状況
 3年度上半期の衛星系新第一種電気通信事業者2社(日本通信衛星(株)及び宇宙通信(株))の営業収益は前年度同期比8.2%増の132億円であった。
 衛星系2社の営業収益における専用収入の合計は102億円で、3年度上半期の国内の専用線市場の4.5%を占めている。
(オ)自動車・携帯電話事業者等の経営状況
 3年度上半期の自動車・携帯電話事業者等16社(自動車・携帯電話事業者8社、簡易陸上移動無線電話事業者4社、マリネット電話事業者3社、テレターミナル事業者1社)の経営状況は、営業収益が前年度同期比87.8%増の586億円、経常損益が15億円の黒字となった。
 営業収益の大部分を占める自動車・携帯電話事業者についてみると、日本移動通信(株)とセルラー電話グループ7社の電気通信事業営業収益は前年度同期比72.8%増の534億円と大幅に伸展した。これは、自動車・携帯電話市場の35.5%を占めており、前年度同期より10.4ポイント増加した(第1-2-10表参照)。
(カ)無線呼出し事業者の経営状況
 3年度上半期の無線呼出し事業者36社の経営状況は、総収益は前年度同期比33.3%増の232億円、経常損益は22億円の黒字であった。
 うち電気通信事業営業収益の合計は226億円で、無線呼出し市場の31.6%を占めており、前年度同期より3.3ポイント増加した(第1-2-11表参照)。
(キ)KDDの経営状況
 3年度上半期のKDDの経営状況は、総収益は前年度同期比0.6%増の1,291億円、総費用は同0.6%減の1,152億円であった。このうち営業収益は前年度同期比1.2%増の1,236億円、営業費用は同1.3%増の1,134億円、営業利益は同0..%増の101億円、経常利益は同12.4%増の139億円であり、増収増益であった。
 営業収益のうち電気通信事業営業収益は1,212億円(前年度同期比0.4%増)であった。サービス別に前年度同期比の増減をみると、電話収入は、新規事業者との競争の激化、2年11月及び3年4月の2回の値下げ等もあり1.2%減、テレックス収入はファクシミリ等へのメディアの交代により15.4%減、電報収入も10.8%減となった。一方、企業通信の増加を背景に、専用収入は7.1%増、データ通信収入は20.6%増となった。
 2年度の財務状況は、売上高経常利益率は10.8%(前年度11.4%)、総資本経常利益率は5.4%(同6.2%)、総資本回転率は0.50回(同0.54回)であった(第1-2-12表参照)。
(ク)国際新第一種電気通信事業者の経営状況
 3年度上半期の日,本国際通信(株)、国際デジタル通信(株)の経営状況は、電話サービスの取扱地域を増やしたことなどがら営業収益は前年度同期比86.6%増の224億円と大幅な増収となった。経常損益は51億円の赤字となったが、赤字幅は前年度同期と比べて減少している。
 2社の国際電話及び国際専用線市場に占める割合は、前年度同期比7.5ポイント増加して17.9%となった(第1-2-13表参照)。
 イ 放送事業者の経営状況
 NHKは、2年度において受信料額の改定を行った。2年度決算を予算と比較してみると、事業収入及び事業支出は予算を下回ったが、事業収支差金は予算を上回っている。
 一方、2年度の民間放送の経営状況は、広告収入が比較的好調に推移し、営業収益は堅調な伸びを示した。
(ア)NHKの経営状況
 2年度一般勘定(注)における事業収入は前年度比23.1%増の4,838億円、事業支出は同10.0%増の4,472億円で、この結果事業収支差金は366億円となり、元年度の事業収支差金を大幅に上回った。
 3年度の収支予算は、事業収入5,427億円、事業支出4,869億円、事業収支差金558億円を計上している。また、4年度の収支予算は、事業収入5,404億円、事業支出5,132億円、事業収支差金272億円を計上している(第1-2-14表参照)。
(イ)民間放送の経営状況
 2年度の民間放送の収支状況をみると、営業収益は前年度比8.8%増の2兆1,096億円、経常利益は同7.4%増の2,492億円であった(第1-2-15表参照)。
 営業収益の対前年度伸び率の推移をみると、昭和62年度以降、9.9%(62年度)、10.4%(63年度)、12.4%(元年度)とほぼ2桁の伸び率で推移してきたが、2年度においては後半広告収入の伸びが鈍化したため8.8%の伸びとなった。
 事業別に2年度の営業収益の伸び率をみると、ラジオ・テレビジョン兼営社が前年度比7.5%増、テレビジョン単営社が同8.9%増、文字放送単営社が同17.2%増、ラジオ単営社が同12.6%増となっている。
(ウ)CATV事業者の経営状況
 営利を目的としでCAT<5>事業を行う許可施設135社の2年度の経営状況については、経常収入は前年度比49.8%増の322億円、経費費用は同62.5%増の463億円であり、経常損益は同2倍の141億円の赤字であった。
 ウ 郵便事業の経営状況
 2年度の郵便事業の経営状況は、収益が前年度比6.1%増の1兆8,026億円、費用が同6.4%増の1兆7,901億円で、差し引き125億円の利益計上となった。これにより郵便事業経営については、昭和56年度以降10年連続して黒字となった(第1-2-16表参照)。
 収益のうち郵便業務収入は、取扱郵便物数が前年度に比べて13億通増加し、228億通となったこと等により前年度比7.3%増の1兆6,494億円(収益全休の91.5%)を計上した。一方、費用の約8割を占める郵便費は、前年度比6.3%増の1兆3,728億円で、その内訳は人件費が同4.3%増の9,534億円、物件費が同11.3%増の4,194億円となっている。

 

第1-2-4表 第一種電気通信事業営業収益の推移

第1-2-5表 通信事業者等の財務状況(2年度)

第1-2-6表 NTTの経営状況

第1-2-7表 2年度NTTの電話役務損益明細表

第1-2-8表 長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-9表 地域系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-10表 新自動車・携帯電話事業者の経営状況

第1-2-11表 新無線呼出し事業者の経営状況

第1-2-12表 KDDの経営状況

第1-2-13表 国際新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-14表 NHKの経営状況(一般勘定)

第1-2-15表 民間放送の経営状況

第1-2-16表 郵便事業の経営状況

 

 

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