平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(1)多様化が進む国際電気通信サービス

 2年度における国際電気通信サービスの動向としては、前年度に引き続き、国際電話サービスの取扱数が対前年度比2けた増と好調であるほか、国際専用回線サービスの提供回線数も堅調な伸びを持続している。
 また、3年度においては、国際電話サービスの値下げ(4年間連続13回目)等が実施されるとともに、2年度に国内電気通信サービスに先駆けて市場導入された選択料金制サービスが拡充されている。
 その他、3年度においては、国際VPN(仮想私設通信網:Virtual Private Network)サービスやインマルサット衛星を使った国際線航空機からの国際電話サービスの提供等が開始されるなど、利用者の二-ズに合った多様なサービスの提供が進展しており、国際化の進展とともに国際電気通信サービスは、より身近な存在となってきている。
 3年度における新事業者2社の状況については、国際電話サービスの取扱地域数を、我が国から国際通話がかけられる地域全体の25%程度(国際自動ダイヤル通話の通話量全体では90%程度を占める。)まで伸ばしているほか、1社については、着信国のオペレータを直接呼び出す通話の取扱いを開始するなどの状況となっている。また、国際第二種電気通信事業者の提供する国際VANサービスについても、着実な進展がみられている。
 ア 国際電話サービス
 2年度の国際電話サービスの取扱数(KDD及び新事業者2社の合計)は3億8,890万回で、対前年度比20.O%増と好調な伸びを持続している。
(ア)取扱地域の拡充
 国際電話サービスは、国際通信における主要なサービスであることから、我が国の国際化の進展を支える基盤的要素として、国際電話サービスにおける取扱地域数(注)の状況をみてみると、3年度末現在、我が国から国際電話のかけられる取扱地域数は215地域となっており、我が国が承認しているすべての国(180か国)を網羅し、各国の領有あるいは保護等の関係にある地域(香港等)についても48地域をカバーするなど、全世界的な広がりを有するに至っている。
 取扱地域数について接続形態別の動向を概観すると、3年度においてはKDDにより、廉価なオペレータ通話である番号通話サービスについては7地域増の205地域に、最も廉価な国際自動ダイヤル通話サービスについても7地域増の192地域にそれぞれ拡張されている。この結果、南北アメリカについてはすべての取扱地域で、国際自動ダイヤル通話及び番号通話がかけられる状況となるなど、国際電話サービスの拡充は、量的拡大がほぼ終了し、質的な充実の面で顕著な進展がみられている。
 一方、新事業者2社が提供している国際自動ダイヤル通話サービスの取扱地域数については、3年度末現在、日本国際通信(株)が55地域(対前年度末比18地域増)、国際デジタル通信(株)が54地域(対前年度末比19地域増)と順調な拡大を行っており、今後とも取扱地域の拡充が予定されている。
(イ)サービスメニュー等の多様化
 国際電話に関する多様化の進展状況を、サービスメニュー等の拡充状況において概観すると、国際電話サービスにおいては第1-1-30表にあるとおり、年々、進展が顕著な状況にある。
 例えば、言莱の壁を低くし、だれでも気軽に国際電話がかけられるためのサービスとしては、海外から直接我が国のオペレータを呼び出すサービス(3年度末現在50地域から可能)、海外のオペレータを通さずに国際自動ダイヤル通話料金で受信人払とできるサービス(同31地域から可能)、通訳が入った三者通話サービス等が提供されており、海外旅行者海外留学生、海外赴任者等の増加に対応している。
 また、キャッシュレス社会や生活の深夜化に対応したサービス等としては、国際電話専用クレジットカード等の発行、銀行系等の各種一般クレジットカードにより、国内外から国際自動ダイヤル通話のかけられるサービス(同10地域間・13種類のクレジ-ットカードで可能)、一般クレジットカードを使用できる国際通詰専用電話機の提供等が行われている。一方、料金の支払時においても、一般クレジットカードによる支払や、コンビニエンス・ストアにおける支払も可能(同東日本全域で可能)な状況となっている。その他、外国で発行された一般クレジットカードによる国際電話サービスが開始されるなど、来日外国人の増加にも対応したサービスの拡充がなされている。
 なお、3年度の動きで特徴的であったものとしては、公衆電話網を利用しながら内線番号による呼出しや通話リストによる通信管理を可能とする国際VPNサービスが、国丙に先駆けて開始(5月)されたほか、インマルサット衛星を使った国際線航空機からの国際電話サービスが開始(11月)されている。これらのサービスについては、企業活動の国際化に対応したサービスとして、今後の普及状況が注目される。
 イ 国際専用回線サービス
 2年度末現在の国際専用回線サービスの提供回線数(KDD及び新事インマルサット衛星を使った国際線航空機からの国際電話サービス業者2社の合計)は1,632回線であり、対前年度末比5.0%増と堅調な伸びを示している。
 これを提供品目別にみると、従来主流であった音声級回線の提供回線数は、対前年度末比15.9%減と大幅な減少を示しており、国際専用回線全体に占める割合も、対前年度末比9.9ポイント減の39.5%に後退している。一方、中・高速符号品目の提供回線数は、対前年度末比58.6%増と大幅な伸びを示しており、国際専用回線全体に占める割合も、対前年度末比12.9ポイント増の38.3%となるなど、国際専用回線サービスにおける高速化・大容量化の進展が顕著な状況にある(第1-1-31図参照)。
 ウ 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 国際テレックスサービス及び国際電報サービスは、国際通信における基本的なサービスとして、KDDのみが提供しているものである。
 国際テレックスサービスの2年度の取扱数は、対前年度比18.9%減の1,754万回であった。一方、国際電報サービスの2年度の取扱数については、対前年度比14.3%減の60万通であった。
 両サービスの取扱数は、技術革新の進展に伴う他メディアへの代替、あるいは、高速化・大容量化、高度化等という流れの中で減少してきており、この傾向は、国際テレックスサービスでは昭和60年度から、国際電報サービスでは昭和49年度から継続的なものとなっている。
 エ 国際テレビジョン伝送サービス
 国際間の映像及びそれに付随する音声等を伝送するサービスとしては、KDDの国際テレビジョン伝送サービスがあり、放送局等が専用線的に長期間利用する長期契約と、スポット的な利用の短期契約とがある。
 同サービスの短期契約における2年度の取扱数は、対前年度比46.1%増の1.6万回と大幅な伸びをみせており、国際情勢の変革期に当たって海外の映像情報に対する需要の強さがうががわれる。
 また、3年度においては、インテルサット衛星を利用して通信設備のない地域からでも映像が伝送できる、「可搬型の小型地球局」を貸出すサービスも開始されるなど、映像情報の国際伝送を行う際の、サービス提供環境の整備も進んでいる。
 オ 国際VANサービス
 国際VANサービスは、国際特別第二種電気通信事業者が、KDD等の国際第一種電気通信事業者がら電気通信回線を借りて提供する付加価値電気通信サービスであり、我が国においては、昭和62年の電気通信事業法の一部改正により、その提供が可能となったものである。
 現在、蓄積パケット交換サービス、電子メール、EDI、蓄積交換ファクシミリサービス等多様なサービスが提供されており、また、提供地域数も3年度に7地域増加して16地域となるなど、利用者のニーズに応じたサービス展開がなされている。
 カ 国際通信設備の状況
 光海底ケーブルは、従来の同軸ケーブルに比べて数倍の容量が得られ、デジタル化に対応しやすく高品質な伝送が可能となることから、現在、各国の通信事業者が共同で、世界的な光海底ケーブルネットワークの構築を進めている。
 3年度においては第1-1-32図にあるとおり、光海底ケーブルの建設保守協定が相次いで締結されている。この結果、全世界をループ状につなぐ光海底ケーブル網の枠組みが整ったこととなり、6年度には、アジア、中東地域が光海底ケーブルで結ばれ、既に開設されている太平洋及び大西洋横断光海底ケーブルとともに、光海底ケーブルの世界的な基幹網が完成する予定となっている。なお、3年3月には、我が国を起点とする光海底ケーブルの敷設にあたる、KDDの海底ケーブル敷設船が竣工し、第4太平洋横断ケーブル(TPC-4)の敷設から運行するこ新海底ケーブル敷設船(GMDSS搭載第1号船)ととなっており、光海底ケーブル時代の安全性・信頼性の向上に貢献するものとして期待される。
 また、KDD及び新事業者2社では、マイクロウェーブ回線等を利用した独自の国内中継伝送路の検討を進めており、3年9月にはKDDの東京〜大阪間のマイクロウェーブ回線が運用を開始した。伝送経路を二重化することによる国際通信ネットワークの安全性・信頼性の確保と、独自回線への切り替えによる経済性の向上が見込まれ、今後の国際通信料金の低廉化にもつながるものとして注目される。
 キ 国際電気通信料金の低廉化
 国際電気通信の料金水準についてば、継続的な値下げにより低廉化が進展しており、国際自動ダイヤル通話サービスにおいては、国際的にも最も低廉な水準となっている。また、国内的にみても、サービス業全体の価格が上昇している中で、電気通信サービスの価格は下降しており、特に国際電気通信サービスは、国内電気通信サービスと比較しても大きな下降線を示すなど、低廉化の進展が顕著な状況となっている(第1-1-33図参照)。
 国際電気通信料金の低廉化は、昭和54年10月にKDDが国際専用回線サービスの値下げを実施して以来、第1-1-34表のとおりほぼ毎年のように実施されてきた値下げや、各種サービスにおけるサービスメニューの拡大等により実現されてきており、3年度においてもKDDにより、[1]国際自動ダイヤル通話サービス(3年4月実施)、[2]オペレータ通話サービス(3年11月実施)、[3]国際専用回線サービス(3年11月実施)、[4]国際テレビジョン伝送サービス(4年3月に認可、4月実施)及び[5]企業通信ネットワークサービス(4年3月に認可、4月実施)と、5件の値下げが実施されている。
 また、3年度における大きな動きとしては、KDDが2年度に提供を開始した「選択料金制サービス(定額料金サービス(注1))」について、新事業者2社が拡充して提供を開始(定額料金サービス、電話回線単位及び請求書単位の基本料型低減サービス(注2))し、KDDについてもメニューを拡充(電話回線単位及び請求書単位の基本料型低減サービス)したことが挙げられる。選択料金制サービスは、国際電話サービスの利用者が、月ごとの平均利用額及び利用形態に応じて、適用される料金体系を直接選択できるものであり、よりきめの細かい低廉なサービスの提供として注目される。

第1-1-30表 国際電話系サービスの多様化

インマルサット衛星を使った国際線航空機からの国際電話サービス

第1-1-31図 国際専用回線サービスの推移

新海底ケーブル敷設船(GMDSS搭載第1号船)

第1-1-32図 世界の主要な光海底ケーブルネットワーク

第1-1-33図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-34表 国際電気通信料金の値下げ状況

 

 

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