平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

1 21世紀の活力ある情報社会と地球市民時代に向けた電波利用

 (1)豊かさを実感できる暮らしを実現するための電波利用

 今後とも消費ニーズの多様化・高度化、生活行動範囲の広域化、高齢化の進展による一人暮らしの高齢者の増加、週休2日制の普及等による一層の余暇志向等により、多様で高度な通信に対するニーズが増大することが予想される。
 このため、国民だれもが真に豊かさとゆとりを実感できる暮らしを実現するためには、こうしたニーズに的確に応えるよう電波の多様で高度な利用の促進を図ることが必要である。
 ア 21世紀のパーソナル通信時代に向けて
 自動車・携帯電話サービスが5年間で14倍の契約数へと飛躍的に拡大するなど、移動通信を中心に電波利用が急増している。自動車・携帯電話サービス及び無線呼出しサービス(ポケットベル)の契約数は約670万契約(3年9月末現在)、コードレス電話機の出荷台数は約900万台(元年から3年までの合計)と、電波利用は国民生活において身近な通信手段となってきている。
 「いつでも、どこでも、だれとでも」という情報通信の究極の目標に向かい、21世紀には技術開発の進展等により、国民一人ひとりが携帯電話を利用する時代が到来することが期待される。機能面においても1台の端末で、音声・データ・映像等のマルチメディアによるコミュニケーションを実現するとともに、世界中との通信を可能とするネットワークの形成が望まれる。
 このためには、ネットワーク構築に向けた技術開発の推進や通信方式の標準化、携帯電話端末の小型化・軽量化・低廉化等とともに、競争の促進による電気通信市場の活性化や電気通信事業者の一層の経営努力等による通信料金の低廉化が望まれる。
 さらに、携帯電話サービスのほか、MCAシステム、ポケットベル等、各種の移動通信が利用されているが、将来は、パーソナル・ハンディフォン(第二世代コードレス電話)による1駅や屋外からの通信等、利用者のその時々のニーズに応じてより一層多様で便利なサービスが安価に利用できることが望まれる。
 また、一人暮らしの高齢者や身体障害者の不意の事故等に対応するため、ペンダント型の発信機を活用した緊急通報システムの運用が開始されているが、長寿社会・福祉社会に対応して高齢者・身体障害者の生活を支援するため、使いやすさ・簡易さを考慮した各種のサービスの開発及び低廉な料金での提供が急がれる。
 さらに、労働時間の短縮等による自由時間の増加に伴う余暇・レジャー志向の高まりに即応して、スキー・マリンレジャー等のレジャー分野において電波を活用した多様なサービスの提供が期待されるとともに、遭難事故防止等レジャー分野における安全確保のための無線利用システムの普及が必要である。
 イ 放送の多メディア・多チャンネル化の推進
 衛星放送の普及、ハイビジョン試験放送の開始等、多メディア・多チャンネル化が進み、放送新時代を迎えつつある。
 放送普及基本計画において、地上系民間テレビジョン放送については、総合放送4系統の放送が全国各地域においてあまねく受信できること、民間FM放送については、1系統の放送が全国各地域においてあまねく受信できること等とされており、今後とも引き続き地上系民間テレビジョン放送の多局化、民間FM放送の全国普及を推進していく必要がある。
 また、テレビジョン放送の高度化を進めるためにも、第二世代クリアビジョン(EDTV)の開発は重要である。
 一方、ハイビジョン受信機の低廉化も進んでいるが、一般家庭への普及のためには、一層これを進めていくことが必要である。また、現在民間等によって行われている壁掛け型のディスプレイの開発、VTR等の周辺機器の開発を引き継き進めることも必要である。
 さらに、4年度から通信衛星を利用するテレビジョン等の放送が始まったが、現状ではこれらの番組すべてを視聴するには、複数のアンテナやスクランブルデコーダを必要とするなど、利用者にとっては費用面で負担となり、受信機器相互間のインタフェースの共通化やデコーダのモジュール化、機器の低廉化等が望まれる。また、メディア特性にふさわしい放送番組の開発・普及及びこれを支える放送メディア全体の番組制作環境の整備、視聴者からみた契約・支払手続の利便性の確保等が必要である。
 放送のソフト面においては、放送ライブラリーや放送ソフトの制作・供給施設及び人材育成施設に対する支援等の充実により体制整備を一層推進する必要がある。
 ウ 人にやさしいサービス・機器の提供
 電波を利用した情報通信サービス・機器が国民生活のあらゆる場面に普及することで、従来特定の人に限られていた電波の利用が、高齢者から子供まで幅広い年齢層に広がりつつある。暮らしの豊かさとゆとりが求められる21世紀に向けて、電波利用においても、利用者に負担をかけない、使いやすいサービス・機器の開発・提供が必要である。
 電話やテレビジョン放送などの通信・放送サービスについて、多機能化・高機能化を図ることと並行して、複雑な操作や高度な知識を必要とせずだれにでも利用できるサービス・機器の開発が必要である。
 このため、供給側には、様々な層から成る利用者のニーズに対応したサービス開発・商品開発がより求められるところであり、また、利用者の側においても情報活用能力の向上が望まれ、身近な情報通信サービスに機会をとらえて接するなどにより、その活用能力の向上に努め生活の豊かさにつなげることが期待される。
 また、通信のパーソナル化の円滑な進展のためには、受信者の立場も尊重したサービスの開発が重要であり、発信者を表示する機能や都合の悪い場合には受信しない機能等の開発が必要である。
 エ 通信と放送の境界領域的サービスへの対応
 技術開発の進展により通信衛星を介した多種多様なサービスの提供が技術的に可能となっており、いわゆる通信と放送の境界領域的サービスが出現してきている。
 既に通信衛星を利用する放送については制度を整備し、4年4月から放送が開始され、放送の多様化に大きく貢献しているところであるが、更に通信衛星を利用した情報提供サービスの動向や国民のニーズの動向等を勘案しつつ、通信と放送の境界領域的サービスに対して適切に対処していく必要がある。

 

 

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