平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

3 国際社会の発展への貢献

 (1)電波メディアを通じた国際社会における相互理解の推進

 湾岸戦争の勃発で幕を開け、ソ連邦の解体に終わった1991年は正に激動の1年であった。激動する国際情勢を印象づけるのに大きな役割を果たしたのは、電波メディアの発達の象徴ともいえる衛星回線を通じた生の映像であった。湾岸戦争当時、連日現地から、通信衛星や放送衛星を経由して24時間茶の間に送り込まれてくる生々しいニュース映像は地球が小さくなったことを痛感させた。
 こうした衛星通信・衛星放送技術の目覚ましい発展により、現在では、世界各地で起きている事件や現象についての情報を瞬時にして入手できるようになっており、世界的に情報の共有化が進んでいる。
 中でもヨーロッパは、狭い地域の中に多くの国と人口が集中し、政治・経済・文化の各方面で相互に密接な関係を有し、人的交流・情報交流も盛んに行われており、衛星放送又は衛星通信による映像情報の提供に適した条件下にある。このため、各国が競って衛星を打ち上げ、CATV局への配信向け、あるいはパラボラアンテナ、チューナーによる直接受信向けの放送・映像情報提供サービスが行われている。現在、ルクセンブルクが1989年に打ち上げたアストラを初め、ユーテルサットなどの衛星を利用したテレビチャンネルが60以上も提供され、諸国間の相互理解に大きく貢献している(第3-2-6表参照)。東欧における連鎖的な民主化は、国民がこれらの衛星から生の映像情報を受信し、自国についての客観的な情報を得たことにより加速されたといわれている。
 また、海外への情報伝達という面において、短波放送は大きな役割を果たしており、特に非常時には威力を発揮する。湾岸危機の際、イラクの人質となった邦人にとって唯一の日本語の情報源として、心のよりどころとなったのは、日本からの短波による国際放送であった。さらに、1991年8月の旧ソ連邦のクーデタの際にモスクワ市民の心の支えとなったのは、英国からの短波による国際放送であったといわれている。あらゆる国境の壁を越えて伝わる短波の特性が、権力による情報管制下で不安な状態に置かれていた人々に勇気と希望を与えたのである。
 このように電波メディアの発展は、世界的に情報の共有化をもたらし、国際社会における相互理解の醸成に貢献してきた。1992年末に控えたECの統合、ロシア連邦を中心としたCISの動向等新しい国際社会の枠組みが形成されつつある今限一層複雑化していくと思われる国際情勢に対処していくために、ボーダレスな情報の交流、相互理解に大きな役割を果たす衛星を利用した通信、放送等の電波メディアの重要性は一層高まっていくものと思われる。
 我が国としてもかかる認識のもと、電波メディアの発達による情報の共有化を享受しつつ、更に積極的に海外に目を向け、諸外国との相互理解に努め、協力し合っていくことが必要であり、責務となっているのである。

第3-2-6表 ヨーロッパの主な衛星利用テレビチャンネル

第3-2-6表 ヨーロッパの主な衛星利用テレビチャンネル(1992年2月現在)

 

 

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