平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

(2)国際化への対応

 我々を取り巻く社会J経済等あらゆる分野において国際化が進展しており、元来国際性の強い情報通信は、21世紀に向けて、国際化された高度情報社会を支えるものとしてその役割はますます増大し、社会・経済発展の原動力として期待されている。
 電波による通信は、衛星通信に代表きれるように昨今技術的に急速な進歩を遂げており、ますますその重要性を増している。しかし、資源として有限であるがゆえに世界的規模で電波をどのように使用すべきか従来にも増して慎重かつ公正に監理する必要を生じている。
 こうした電波の国際化に対応し、人類の貴重な財産である電波の有効利用と電波利用の国際的な発展を図っていくことが必要である。
 ア 国際協力の惟進
 (開発途上国への技術協力)
 開発途上国においては電波利用基盤が十分に整備されていない国々が多い。各国ごとのニーズに応じた基盤整備のために我が国の積極的な援助が期待されており、それに応えていかなければならない。
 郵政省では、技術協力施策の一環としてアジア・太平洋地域の開発途上国への衛星通信技術の移転を目指す国際協力計画「パートナーズ計画」を1992年9月から開始する予定である。
 これは、宇宙開発事業団の技術試験衛星V型(ETS-V)を利用して、タイやインドネシアなどと日本の間で、地球観測情報、医療情報などの伝送実験を行い、開発途上国に衛星通信の有用性を認識してもらい、これらの国々の情報通信網の整備に貢献することを目的とするものである。
 また、アジア諸国の一部においては、急速な経済発展に伴い、無線の利用ないし小規模無線機の製造が増大する傾向が見られ、無線機器の技術基準の策定、認証制度の創設、測定・較正技術者の養成等を含めた電波利用秩序の確立が急務となっている。
 郵政省ではこうした現状にかんがみ、1990年度及び1991年度において「アジア諸国に対する無線機器認証技術の開発・移転に関する調査研究」を行っており、この調査結果を、アジア諸国の無線利用実態に適した、無線機器の試験技術、測定器の較正技術等認証技術の開発・移転に活用することとしている。
 我が国は電波先進国として、開発途上国における電波利用を促進するために、電波利用技術、周波数監理知識の普及等、技術協力を推進し、専門家の派遣、研修員の受け入れ等を通じて、開発途上国における人材育成に積極的に協力していく必要がある。
 イ 国際理解の促進
 (国際放送の一層の充実)
 今日の世界は相互依存関係をますます強めており、平和な国際社会の発展を図っていくためには各国間の相互理解を深めていくことが必要である。
 国際放送は、直接かつ瞬時に諸外国に情報を提供できる手段であり、各国との相互理解の促進に有効である。米国、中国、英国、ドイツなどの主要国は、重要な国家政策として国際放送に積極的に取り組んでいる(第3-2-7表参照)。
 東欧の民主化、ソ連邦の解体、ECの統合等激動する国際情勢の中で、諸外国の対日理解の促進及び近年ますます増加傾向を見せる在外邦人に対する正確かつ迅速な情報の提供のため、国際放送の一層の充実を図る必要がある。
 1992年度においては、近年の欧州地域の重要性にかんがみ、英国BBC放送のスケルトン送信所からの欧州向け中継放送を7月から開始し、欧州地域における放送時間の拡充と欧州全域の受信改善を図るほが、我が国の近隣地域の一層の受信改善を図るため、1993年1月から3月にかけて茨城県の八俣送信所に300kW送信機3台の増設が予定.されている。
 今後とも、我が国の国際放送の受信状況の改善、送信時間の拡大、交換中継の拡充に対応できる送信体制の整備を図るなど、我が国からの情報発信機能の強化に努めていくことが必要である。
 (放送番組の国際交流支援)
 国際的な相互理解を進めるに際しては、外国からの番組の導入、外国放送機関との共同制作、外国への自国の放送番組の提供といった「放送番組の国際交流」もまた、その重要な手段となる。放送メディアは、表現力・即時性に優れたメディアであり、各国の社会において極めて大きな社会的影響力を有している。放送番組の国際交流を推進することで、相互理解が促進され、国際摩擦の中でも情報不足や誤解に端を発する摩擦が回避あるいは緩和されることが可能となる。
 また、放送が欠くことのできない基幹メディアであり、国づくりや人づくりのために放送の有する機能を重視している開発途上国にとっては、教育番組の充実は重要な政策課題となっているが、番組制作能力が十分でないことから、日本の豊富な放送番組に対し大きな期待が寄せられている。
 郵政省では、こうした状況を踏まえ、我が国の姿を伝えるテレビ番組の海外提供を通じて各国の相互理解を促進するとともに、開発途上国の放送の発達・普及を図るために放送番組に関する協力を行う体制を整備し、放送番組の外国語への吹き替え等に対する支援を行っており、放送番組の国際交流の一層の促進を図っていくため今後とも支援の充実に努めていく方針である。
 ウ 国際協調の推進
 電波には、その資源としての有限性や国際性などの性質から、国際的な監理が必要であり、衛星時代を迎えた今日、電波利用に関する国際間の協調はますます重要な課題となっている。我が国としても、ITU等の国際機関あるいは二国間協議等の場において審議される国際規格の統一化の問題、国際周波数調整等について更に積極的に寄与し、世界的な電波利用技術の向上に貢献していくこどが必要となっている。
 1991年7月には、東京において、新しい移動通信システムの開発に当たり国際協調を推進する観点がら、日米欧の主要各国が定期的に情報交換を行うことを目的とした、第1回の日米欧Mobile Communication Study Meeting(移動通信に関する研究会議)が開催された。1992年度には第2回の会議が欧州において開催される予定である。
 また、人命の安全性を確保するための電波利用の国際的なルールとして、1992年2月、従来のモールス信号に代わって、衛星通信技術やデジタル通信技術を利用した新しい海上遭難安全通信システムであるGMDSS(海上における遭難及び安全の世界的な制度)の導入が全世界的に開始された。郵政省でも国際協調の一環としても、本制度の円滑な導入推進に努めているところである。
 我が国はこうした国際的な協調施策を推進するとともに、さらに、将来における公衆陸上移動通信システム(FPLMTS)、国際的な宇宙開発計画(宇宙ステーション、データ中継衛星等)、地球環境保護のためのマイクロ波帯及びミリ波帯のリモートセンシングの開発等の世界的プロジェクトの推進に、電波技術先進国として積極的に参画し、先導的な役割を果たすことによって、国際社会に貢献していくことが求められている。

第3-2-7表 主要国の国際放送実施状況(1991年12月現在)

 

 

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