平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

(2)電波利用の仕組み

 電波に大きく依存している現代社会においては、電波の利用には、次の観点から電波監理が必要不可欠となっている。
[1] 電波が有限な資源であり、電波利用に対する需要に対処し、公共の福祉を増進する方向で電波を利用するには、電波の公平かつ効率的な利用を確保する周波数の配分が必要であること
[2] 電波は、共通の空間に発射されるものであり、利用者が電波を無秩序に発射した揚合は相互に混信や妨害が生じ、結果的には誰も利用できなくなる物理的特性を有していることから、周波数や使用場所を適切に選択し、適正な出力で使用する必要があること
[3] 電波は、その物理的特性がら人為的に定めた国境等に制約されることなく伝搬することかち、利用に当たっては、国際的な取決めに基づくとともに、隣接国等との国際的な調整が必要であること
[4] 電波を利用した通信は、離れた地点間の通信を目的としており、それを可能とするためには、送信側、受信側双方の技術上、運用上の方式を統一する必要があること
[5] 船舶や航空機にとっては無線通信が唯一の通信手段であり、乗客や乗組員の安全のためには世界中どこでも通信ができるように無線通信設備やレーダ等の設置、運用に関する国際的なルールが必要であること
 このような電波監理の必要性により、国際電気通信連合(ITU)をはじめとする国際機関において電波の国際的利用秩序の維持、調整等が図られている。世界各国の電波監理は、こうした国際的な合意を得た枠組みの中で、各国の状況に応じて独自の監理制度が採られている。我が国においても、電波法に基づく監理制度を持ち、郵政省がこれを管轄し、電波行政を行っている。
 ア 国際的な電波利用の仕組み
 (ア)lTUにおける電波監理
 電波を含む電気通信に関する様々な問題を処理する国際的な組織が、国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)である。ITUの組織の基本法である国際電気通信条約は、同時に、電気通信の国際的な規律の基本法でもあり、1991年末現在166か国(注)が批准している。
 現代社会においては、電波利用をはじめとする電気通信に関する国際間の協力は、ますます重要な課題となってきており、ITUでは、このような多くの問題を、国際的な取決めによって調整し、また、各国の技術的水準を向上させるための技術協力の調整などの業務を行っている。
 ITUにおける無線に関する主な活動組織としては、[1]世界無線通信主管庁会議(WARC)、[2]国際周波数登録委員会(IFRB)、[3]国際無線通信諮問委員会(CCIR)がある。WARCは、周波数の国際的な分配、静止衛星軌道の利用方法、無線局の運用に関する規定、技術基準等、電波の使い方などを決める議決機関であり、各国ではこの決定に基づいて各周波数帯の利用方法などを決めている。IFRBは、周波数及び静止衛星軌道位置の割当ての記録、登録等を通じて、国際的混信が生じるおそれのある周波数の使用について関係各国との調整を行っている。CCIRは、無線通信の分野における技術と運用の問題の研究、勧告を行うことを主たる任務としている。
 (イ)電波利用に関する国際機関
 電波利用に関する主な国際機関としては、以下のものが挙げられる。
[1] 国際電気通信衛星機構(インテルサット)
  国際公衆電気通信業務に必要な宇宙部分(衛星及びその管制等に必要な関連地上設備)を世界のあらゆる地域に提供することを主たる目的とした国際機関。1991年末現在の締約国数は121か国。
[2] 国際海事衛星機構(インマルサット)
  海事通信を改善するために必要な宇宙部分(衛星及びその管制等に必要な関連地上設備)を提供することを目的とした国際機関。1991年末現在の締約国数は64か国。
[3] 国際海事機関(IMO)
  国際海運に影響のある事項について国際協力を促進することを目的として設立された国際連合の専門機関の一つ。海上の安全の確保のための無線通信に関する事項について検討。「海上人命安全条約」はIMOの関係条約の一つであり、その中では無線施設の強制、聴守義務などを規定。1991年末現在の加盟国数は134か国。
[4] 国際民間航空機関(ICAO)
  国際民間航空の安全かつ秩序ある発展等を目的として設立された国 際連合の専門機関の一つ。任務の一つとして、航空通信の要件、技術 基準、周波数の使用等について国際的な統一基準を設定。1991年末現在の加盟国数は164か国。
 イ 我が国における電波利用の仕組み
 (ア)無線局免許制度
 電波を利用するためには無線設備を備えた無線局が必要となるが、我が国では電波法において、無線局の開設を原則として郵政大臣の免許制とし、無線局の勝手な開設を禁止している。これにより、無秩序な電波の発射によって、相互に混信が生じたり、周波数不足のために電波が利用できない事態が起こらないようにしている。
 無線局の免許を取得するには、免許の申請、申請書の審査、予備免許、落成後の検査、免許交付等の手続きがある。
 また、電波の利用が合法的かつ合目的的に行われることを確保するため、電波法では、定期的又は臨時に無線局の検査を行って無線局の適正を維持し、必要に応じて電波の発射の停止を命じて違法状態を是正し、違反者に対する行政処分を行って侵害された法秩序を回復するなどの監督権限を郵政大臣に認めている。
 さらに、郵政大臣は、免許人等に特段の帰責事由がなくとも、電波の秩序の維持や公益上の必要のために、周波数や空中線電力の指示変更を命じたり、非常の場合の無線通信を命じたりすることも認められている。
 (イ)無線従事者制度
 電波利用の秩序を保つには、無線局を運用する者にも知識や技能が必要であり、電波法においては、無線設備の操作を行う者は、原則として郵政大臣の免許を受けた者でなければならないと定めている。この免許を受けた者を「無線従事者」と呼び、無線局にはそれぞれの無線設備の操作を行うために必要な無線従事者の配置が義務づけられている。
 無線従事者の資格は、利用分野、無線局の種別、使用する周波数、空中線電力などによって分けられており、操作できる無線設備の範囲が規定されている。無線局数の増加とともに、無線従事者数も増加を続けており、3年12月末現在の無線従事者数の合計は392万であった(第3-1-5図参照)。

第3-1-5図 無線従事者数の推移

 

 

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