平成4年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

(2)地域の活性化と電波利用基盤整備

 現在、我が国においては、国土の均衡ある発展に向けた多極分散型国土の形成が不可欠とされ、地域の活性化のための様々な施策が打ち出されている。地域の活性化のためには地域の情報通信の充実、強化が欠かせないが、これを実現する手段の中でも特に電波メディアは、有線系のメディアと比較して、設置が容易、災害に強いといった特長を有し、情報通信基盤の整備が立ち遅れている地域においても有効に活用することが可能である。
 地域における電波利用基盤の整備においては、電波による通信・放送サービスの一部が享受できない地域の解消を図り、情報の受発信が全国どこでも等しく行えるようにすることが重要である。それぞれの地域が必要とする情報を迅速に入手、伝達できる環境が整い、外部に向けて地域の独自情報の発信が活発化すれば、情報交流を通じた地域の活性化が図られ、より豊かな生活環境づくりの一助になるものと期待される。
 郵政省では、このような基本的認識の下で、地域間の情報格差の是正と地域からの独自情報の発信に貢献する電波利用基盤の整備に取り組んでいるところである。
 ア 電波利用基盤の格差是正の推進
 国は、3年度に「生活関連」の公共投資として創設された、「移動通信用鉄塔施設整備事業」及び「民放テレビ放送難視聴解消事業」から成る「電気通信格差是正事業」を推進している。これらは、郵政大臣及び都道府県知事の許可を受けて設立された公益法人が、自動車電話、携帯電話等の移動通信サービスを受けられない地域を解消するために基地局のための鉄塔施設を整備する場合及び地上系民間テレビジョン放送が1波も良好に見えない地域を解消するために中継施設を整備する場合に、地方公共団体が当該公益法人に対してその経費の一部を補助していることを条件として、国がその経費の一部を補助するというものである。
(ア)移動通信用鉄塔施設整備事業
 将来、飛躍的な需要増が見込まれる移動通信サービスの提供状況は、近年特に伸長著しい自動車電話を例にとると、全国の7割以上の地域においていまだサービスが受けられない状況にあるなど、全国どこでもあまねく公平にサービスが享受できるまでには至っていない。
 民間による移動通信サービスの提供が見込めない地域に移動通信用の鉄塔施設を整備し、自動車電話、携帯電話等の移動通信サービスを全国どこでも使えるようにし、地域間の情報格差の是正を図るのが移動通信用鉄塔施設整備事業である。3年度における同事業の実施地区は、13道県16地区となっている。また、4年度から、国の補助率が引き上げられるとともに、対象地域、事業主体が変更された。
(イ)民放テレビ放送難視聴解消事業
 山間辺地等電波が届きにくい地形にあるため、テレビジョン放送が良好に受信できない世帯は、昭和59、60年度に行われた実態調査では、NHKが約10万世帯、民放が1波も良好に受信できない世帯が約40万世帯と推計されている。これについては、基本的に、NHKの難視聴世帯については衛星放送によりその解消を図ることとしており、元年度の補正予算で認められた衛星放送受信対策基金により、衛星放送受信設備を設置する世帯に対する購入経費の一部助成措置がとられており、2年度では15都道府県、19市町村、335世帯に対して、3年度では29道県、55市町村、2,853世帯に対して助成が行われている。
 一方、地上系民間テレビジョン放送の難視聴世帯については、中継施設等の増設により対処することを基本としており、民間による中継施設の整備が困難な地域においてこれを積極的に推進するために創設されたのが民放テレビ放送難視聴解消事業である。具体的には、地上系民間テレビジョン放送が1波も良好に見えない地域に対して中継施設の整備を行うものであり、3年度における同事業の実施地区は、26道県36地区となっている。また、4年度からは、補助対象施設として中継施設の他に共同受信施設が追加されるとともに、移動通信用鉄塔施設整備事業と同様、国の補助率、対象地域、事業主体が変更された。
 なお、既存の2事業に加えて、4年度からの新規事業として、外国波混信や地形的条件により民間中波ラジオ放送が良好に聴取できない地域の解消を図る「民放中波ラジオ放送受信障害解消事業」及び電波伝搬上沖縄本島からのテレビジョン放送電波が届かない沖縄県先島地区における地上系民間テレビジョン放送の難視聴の解消を図る「沖縄県先島地区民放テレビ放送難視聴解消事業」が認められるなど、制度の拡充が図られている(3年度と4年度の事業スキームの比較については、第2-1-2表参照)。
 イ 地上系民間テレビジョン放送の多局化及び民間FM放送の全国普及の推進
 郵政省では、全国各地域における受信機会の格差を是正するため、地上系民間テレビジョン放送の多局化及び民間FM放送の全国普及を推進している。
(ア)地上系民間テレビジョン放送の多局化
 地上系民間テレビジョン放送については、放送普及基本計画において、総合放送4系統の放送が全国各地域においてあまねく受信できること等とされており、4年3月現在、30都道府県、全国世帯数の85.6%で4系統以上の放送の視聴が可能となるよう措置されている。
(イ)民間FM放送の全国普及
 民間FM放送については、放送普及基本計画において、1系統の放送が全国各地域においてあまねく受信できること等とされており、4年3月現在、44都道府県(43地域)、全国世帯数の95.7%で1系統以上の放送の視聴が可能となるよう措置されている。
 ウ 地域共同利用無線ネットワーク施設整備事業の推進
 地域共同利用無線ネットワーク施設整備事業は、テレトピア計画の一環として、地域の振興、活性化、電波の有効利用を図るため、一定地域における通信需要を満たす新しい電波利用システムで共同利用型の情報通信網の整備を行うものであり、テレトピア指定地域において実施されている。具体的な事業の内容は、[1]コミュニティ型移動無線電話事業(コンビニエンス・ラジオフォン)、[2]地域共同利用無線ネットワーク整備事業、[3]山岳無線利用システム整備事業、[4]衛星利用ローカル・ネットワーク整備事業、[5]地域海洋通信整備事業の5つから成っている。
 エ マルチ・メディア・タワー整備事業の推進
 マルチ・メディア・タワー(多目的電波利用基盤施設)整備事業は、地域における今後の無線通信利用の拡大に対応するため、共同で電波塔を設置し、無線ニューメディアによる電気通信システムの導入の促進を図るとともに、地域企業及び住民の電気通信に関する理解の向上を図ることを目的として、昭和63年に郵政省所管の民活法特定施設に追加されたものである。元年2月に東京都田無市の田無タワー、福岡県福岡市の福岡タワーの2か所が当該施設の認定を受けている。
 オ コミュニティ放送の制度化
 市町村内の一部の区域において、FM放送により、地域に密着したきめ細かい各種情報を提供することを通じて、当該地域の振興に寄与することを目的とするコミュニティ放送が、4年1月に制度化された。
 コミュニティ放送については、放送普及基本計画において、全国各地域で実施されるコミュニティ放送の対象地域ごとに1系統の放送の普及を図ることとしている。
 なお、コミュニティ放送の普及を図るため、以下の措置を講じている。
[1] 市町村内の一部の区域を対象とする小規模な放送局であること及び季節的な需要があることがら、毎日放送義務を緩和する。
[2] 行政情報等共通の情報を提供できるようにするために特に必要がある場合、同一市町村内に同一事業者が複数のコミュニティ放送局を開 設することを認める。
 以上、郵政省が推進する地域の活性化に向けた種々の電波利用基盤整備施策を概観したが、いわばナショナル・ミニマム的な水準までの整備が完了したとしても、その後の時代の要請や社会の変化に呼応して、その地域にふさわしい方法により絶えず情報通信機能のレベルアップが意識されるべきであろう。なお、周波数資源が逼迫している首都圏近郊では、地価の高騰等の要因により電波利用基盤施設の設置区域の確保が極めて困難であることから、建物壁面へのアンテナ設置等、基地局の小型化が検討される必要がある。

 

 

第3章第2節1(1)増大する電波利用ニーズに対応した基盤整備の必要性 に戻る (3)電波の不感地帯の解消 に進む