平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(2)多メディア・多チャンネル化が進む放送サービス

 3年度の放送サービ又分野における主な動きとしては、衛星放送において有料放送が開始されたこと、ハイビジョン試験放送が開始されたこと、都市型CATVが相次いで開局していること、中波ステレオ放送が開始されたことなどが挙げられる。以下では、このような多メディア・多チャンネル化が進む放送サービスの動向を概観する。
 ア 放送時間・放送局数の動向
(ア)放送時間
 民間放送事業者による、3年10月がら12月の1日当たりの総放送時間については、テレビジョン放送は2,316時間(対前年同期比6.2%増)、ラジオ放送は1,943時間(同2.3%増)であった。これを1社当たりについてみると、それぞれ20時間8分(対前年同期比7分増)、23時間8分(同15分増)であった(第1-1-20図参照)。
 一方、NHKの2年度における1日当たりの年均放送時間を各チャンネル別にみると、ラジオ第1放送は21時間27分(対前年度比123分増)、総合テレビジョン放送は20時間2分(同59分増)であり、大幅に増加している。この要因としては、2年度における湾岸危機、ドイツ統一等による報道番組等の増加が挙げられ、ラジオ第1放送においては元年度よりも1日当たり49分、総合テレビジョン放送は42分報道番組の放送時間が増加した。他方、ラジオ第2放送は18時間30分(同増減なし)、衛星第1テレビジョンは22時間58分(同増減なし)、衛星第2テレビジョンは21時間11分(同1分減)、FM放送は19時間15分(同1分増)、教育テレビジョン放送は18時間1分(同1分滅)であり、横ばいであった(第1-1-21図参照)。
(イ)放送局数
 3年度末現在の放送局数は、3万7,520局(地上系及び衛星系の合計)、前年度末比3.0%増であった。この内訳は、NHKが1万8,201局(対前年度末比0.2%増)、放送大学学園が5局(同増減なし)、民間放送が1万9,311局(同5.8%増)であった(第1-1-22図参照)。
 イ 衛星放送及びハイビジョン放送の動向
(ア)衛星放送
 衛星放送については、元年6月からNHKによって2チャンネルの本放送が行われているが、2年11月には我が国初の衛星民間放送事業者である日本衛星放送(株)(JSB)と衛星デジタル音楽放送(株)(SDAB)が放送衛星3号(BS-3)によって放送を開始し、地上放送と同様に、衛星放送においてもNHKと民放による放送体制となった。なお、JSBは3年4月から、SDABは3年9月からそれぞれ有料放送(注)を実施している。
 3年12月末現在の加入契約者数は、JSBは69万2千契約、SDABは2万6千契約であり、一方、NHKの衛星放送受信契約数は、同336万契約であった(第1-1-23図参照)。
 3年12月末現在のNHK衛星放送受信契約数がNHK受信契約総数に占める割合をみると9.9%となっており、元年度末現在における割合3.6%から大きく上昇しており、衛星放送の普及が進展しつつあることがつかがわれる。
 また、2年から3チャンネルの衛星放送に利用されていた放送衛星3号-a(BS-3a)は、電源回路部の不具合等によって夏至期及び冬至期を中心に2チャンネルのみの運用となるため、3年の夏至期には、放送衛星2号-b(BS-2b)を利用して3チャンネルの放送の継続性の確保を図った。3年8月には放送衛星3号-b(BS-3b)が打ち上げられ、10月がらJSB及びSDABはBS-3bにより衛星放送を実施している。
(イ)ハイビジョン試験放送
 通信・放送衛星機構(注)の保有するBS-3bのハイビジョン専用チャンネル(第9チャンネル)を利用して、(社)ハイビジョン推進協会が、3年11月に、世界で初めてのハイビジョン試験放送を開始した。
(ウ)通信衛星による放送
 元年6月の放送法等の改正により、受託放送事業者及び委託放送事業者からなる新しい放送制度を導入し、通信衛星を利用する放送が可能となった。
 テレビジョン放送については6番組、音声放送については18番組の認定が行われており、通信衛星を利用する放送は4年4月にサービスが開始された。
 ウ CATVの動向
(ア)施設数及び受信契約数
 CATVの施設数及び受信契約数は、2年度末現在、5万448施設(対前年度末比6.6%増)、676万7,537契約(同9.6%増)であり、CATVの受信契約数はNHKの受信契約総数の20.2%(前年度は18.6%)に相当する(第1-1-24図参照)。
 施設数及び受信契約数を規模別にみると、引込端子数50以下の小規模施設が2万1,488施設(対前年度末比8.5%増)及び51万7,328契約(同7.8%増)、引込端子数51〜500の届出施設が2万7,869施設(同4.8%増)及び392万8,064契約(同4.4%増)であるのに対して、引込端子数501以上の許可施設は1,091施設(同15.6%増)及び232万2,145契約(同20.3%増)であり、大きな伸びを示している。
 また、引込端子数が1万以上、自主放送5チャンネル以上で沖継増幅器が双方向機能を有するいわゆる都市型CATVは、3年度末現在126事業者、134施設(対前年度末比で30事業者、31施設増)が許可を受けており、2年度末現在の、受信契約数は40万154契約、対前年度末比105.6%増と倍増している。小規模施設及び届出施設に比べて伸び率の大きい許可施設の中でも、都市型CATVの伸び率は極めて大きい。
(イ)多チャンネル化の進展
 CATVは、テレビジョン放送の難視聴解消(注)を目的として、その補完的なメディアとして普及してきたため、テレビジョン放送の同時再送信を行う難視聴解消のためのものが大半を占めている。ところが、ニュース、スポーツ、映画、音楽、教育・教養、娯楽といった多様な情報をチャンネル単位で提供することが可能であるCATVは、利用者にとって選多チャンネル化が進むCATV択の自由度が高く、多様化・高度化する情報二-ズに効果的に応えるメディアでもあるため、近年は、自主放送を行うCATVの開局が相次いでおり、2年度末現在、369施設(対前年度末比68施設増)、受信契約者数は101万9,056契約(対前年度末比26.2%増)となっている。
 また、CAT<5>の多チャンネル化に伴い、放送番組の需要も増大しつつあり、通信衛星を利用して、多彩な番組が全国のCATV施設に供給されており、4年1月末現在21番組が供給されている。
 エ 地上系民間放送
(ア)地上系民間テレビジョン放送
 地上系民間テレビジョン放送は、全国各地域において最低4系統の放送を受信できることを目標に周波数の割当てが行われてきている。3年度末現在、4チャンネル以上の周波数が割り当てられている地域(予備免許に至らないものも含む。)は、30都道府県(全国の総世帯数の86%)である(第1-1-25図参照)。
 また、開局状況についてみると、3年度には6地域で新しい民間テレビジョン放送局が開局した。その内訳は、3年4月に開局した福岡県(5局目)、長野県(4局目)、長崎県(4局目)及び岩手県(3局目)並びに3年10月に開局した石川県(4局目)及び青森県(3局目)である。さらに、4年10月には秋田県(3局目)及び愛媛県(3局目)で開局することが予定されている。
(イ)民間FM放送
 民間FM放送は、その全国普及を図ることを目標として周波数の割当てが行われてきており、3年度末現在44都道府県(全国の総世帯数の96%)に、民間FM放送の周波数が割り当てられている(予備免許に至らないものも含む。)(第1-1-26図参照)。
 3年度においては、7月に京都府で民間FM放送局が開局した。さらに、4年4月には徳島県、高知県及び佐賀県で開局しており、10月には鹿児島県で開局することが予定されている。
(ウ)民間中波放送
 民間中波放送は、各地域において1系統の放送が受信可能となっており、3年度末現在47社が放送を実施している。
 4年3月には、スポーツ中継に臨場感を持たせたり、音楽放送に立体感を持たせるなど、より高音質な音声放送を目指したものである中波ステレオ放送が、関東地区の3社及び近畿地区の2社で開始され、4年4月には中京地区の2社及び福岡の2社が開始した。さらに、他の地区においても導入が予定されている。

第1-1-20図 民間放送事業者によるテレビジョン及びラジオ放送の放送時間(1日当たり)

第1-1-21図 NHKによるチャンネル別平均放送時間(1日当たり)

第1-1-22図 放送局数の推移

第1-1-23図 衛星放送受信契約数の推移

第1-1-24図 CATV受信契約数及び施設数の推移

多チャンネル化が進むCATV

第1-1-25図 地上系民間テレビジョン放送用周波数割当ての現状(3年度末現在)

第1-1-26図 民間FM放送用周波数割当ての現状(3年度末現在)

 

 

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