平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

(1)電波天文

 ア 宇宙電波源観測
 宇宙から発せられる電波を観測し、銀河系の構造や星の生成、消滅過程等を明らかにする電波天文学は、1931年に、米国のジャンスキーが、遠距離通信における雑音電波の影響を研究していた際に、銀河の中心方向からの電波を発見したことに始まる。電波天文は、天文学では比較的新しい分野であるが、従来の光学天文学では全く知られていなかった、若しくは予想もされていなかった新しい天体、現象の発見が今日までにもたらされている。
 電波天文においては、観測手段である電波望遠鏡の性能が決定的に重要となるが、電波天文学の普及につれて大型化、高性能化が進み、我が国においても、文部省国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡や郵政省通信総合研究所の34m電波望遠鏡等が、新知見の獲得に大いに貢献している。
 イ VLBI
 数十億光年の距離にある電波星から発せられた電波を、地球上の遠く離れた2つのアンテナで受信すると、それぞれの電波の到着時刻には微妙な差が生じる。この差を100億分の1秒の超高精度で測定し、数千キロメートルも離れた地上の2地点間の距離を数センチメートルの精度で測定することを可能にしたのが、超長基線電波干渉計(VLBI:VeryLong Baseline Interferometry)観測技術である。
 VLBIは、元来、電波天文の分野で電波源を高分解能で観測する技術として研究が進められてきたものであるが、今や天体の位置を所与として地球上の任意の2点間の距離を測る測地学的応用に盛んに活用されている。
 郵政省通信総合研究所では、過去がら培ってきた宇宙通信技術、宇宙電波計測技術、超高精度原子時計技術等を総合してVLBI技術の開発に当たっており、国内外の関係機関の協力を得て、電波天文のほが、測地、地球回転、地球温暖化による海水面上昇予測、国際時刻比較等の広範な分野にその応用を図っている(電波天文による天文学上の重要な発見、知見の詳細及びVLBIによる具体的な観測事例については、第3-1-18表を参照)。

34m電波望遠鏡(郵政省通信総合研究所関東支所鹿島宇宙通信センター)

第3-1-18表 電波天文を通じて得られた重要知見及びVLBIによる観測事例(1)

第3-1-18表 電波天文を通じて得られた重要知見及びVLBIによる観測事例(2)

第3-1-18表 電波天文を通じて得られた重要知見及びVLBIによる観測事例(3)

 

 

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