平成4年版 通信白書

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第3章 ゆとりと活力のある情報社会の形成と電波利用

(1)自営通信システムの利用

 ア 公益事業の通信システム
 電気・ガス・水道などの公益事業においては、事故や災害等による供給の停止は非常に大きな社会的損害と不安をもたらすことになる。このため、事故や災害等の影響を極力抑え、昼夜を問わず安定した供給を維持するため、事故の未然防止のためのパトロール、災害、事故等の復旧、設備の保守、安全の確保等、各種の業務に広く移動通信が利用されている。電波利用の耐災害性、機動性がここでも重要な役割を演じている。公益事業用の移動体通信は、通常は、営業地域、ダム水路の管理区域等に分割して顧客サービスや設備の運用、監理、保守、工事等に利用されている。
 移動通信以外にも、設備の系統運用、ダムの雨量・水位観測用のテレメータ、雷の発生状況観測用の雷レーダなど様々に利用されている。
 2年度末現在、公益事業用無線の無線局数は電気関係が約4万7千局、ガス関係が約1万5千局、水道関係が約1万1千局で、過去10年間に約5割増加している。これらの通信システムでは、周波数の有効利用を図るために、主に60MHz、150MHz及び400MHz帯の周波数を適当な地理的間隔をおいて繰り返し使用しているが、現在は、MCA方式による一層の有効利用を図っている例もある。
 イ 陸上運輸業、製造販売業等の通信システム
 宅配便などの陸上運輸業、製造販売業、土木建築業、各種のサービス業などの事業活動に幅広く利用されているシステムにMCAシステムがある。
 MCAシステムは、複数のチャネルを多数の利用者が共同して利用することで周波数の節約ができる一方、利用者の側も少ない設備投資で広範囲の地域をカバーすることができる。また、MCAシステムは、使用回数にかかわらず、毎月一定のコストで利用できることから、短い通信時間で繰り返し使用する業務で多く利用されている(第3-1-13図参照)。
 3年9月末の利用数は基地局が3万6,597局、移動局が47万974局で、昭和57年に実用化されてから、わずか10年間で急激な増加を見せている。
 また、タクシーの配車、バスの運行管理等、運行中の車両の位置や活動状況(実車、空車、作業中等)の情報を常時的確に把握するためのシステムとして、車両位置等自動表示システム(AVMシステム:Automatic Vehicle Monitoring System)が利用されている。
 代表的なAVMシ又テム方式である分散送信方式では、都市内に多数配置したサインポストからの位置情報を受信して、これに自車の車両番号等の情報を加えて、基地局等に送信する。基地局等で受信された位置情報信号は、有線伝送路により利用者の通信所(利用者運用管理センター)に伝送され、そこで車両の位置等が表示されるものである。タクシー事業者についてみると,2年度末の同システムを利用するタクシー事業者は805免許人、移動局数は59,211局となっている。
 ウ 漁業における電波利用システム
 海洋におけるあらゆる活動において、無線通信は唯一の連絡手段として船舶の安全確保に不可欠な役割を果たしている。また、漁業、海運、海洋調査、レジャー等の幅広い分野において利用されている。
 特に漁業では、漁業通信を中心とする陸船間、船間用通信として短波や超短波を使用した自営の専用通信が利用されている。その他にも、海象・気象情報の受信のためのファクシミリ、航行や漁労の効率向上のためのロラン、GPS等の測位システム、ラジオ・ブイなどはなくてはならないものとなっている。
 2年度末の漁業用の船舶局数は8万2千局余りで国内の全船舶局の90%を占めている。そのうち7万1千局は電力が1W以下の小型の無線電話であり、全国の漁業協同組合等を単位とした海岸局を中心に運営されている。海水動力漁船に対する無線局の普及率は5トンを超える漁船については77%に達しているが、5トン未満の小型漁船では16%にとどまっている。5トン未満の小型漁船が全漁船の91%を占めている現状から、簡易な無線連絡システムの整備が望まれており、このため、郵政省では3年度から、新しいシステムとして漁業地域情報システム(マリンホーン)の普及を推進しでいる。マリンホーンは携帯型の無線設備で、4年3月現在全国4地域で利用されている。
 また、近年振興が図られている養殖・栽培漁業では、海洋環境の観測、監視及びこれら施設の遠隔制御のために電波が利用されている(第3-1-14図参照)。

第3-1-13図 MCAシステムの業種別利用状況(全国移動無線センター協議会)

第3-1-14図 養殖漁業における電波利用

 

 

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