平成4年版 通信白書

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第1章 平成3年情報通信の現況

(1)産業における情報化の進展状況

 ア 指標からみた産業の情報化の進展
 ここでは、産業分野における情報化の進展状況を、通信回線、コンピュータ機器及び非コンピュータ機器の装備指標並びに利用指標(付表10参照)等によりみることとする。
 装備面からみた産業分野における情報化の進展状況の推移を示したものが第1-3-31図である。
 通信回線の装備状況をみると、雇用者1万人当たりの装備回線容量は昭和55年度を100とすると、2年度の指数は147(対前年度比9ポイント増)へ拡大している。特に、昭和59年における高速テジタル専用線サービスの提供開始、昭和61年以降の新第一種電気通信事業者による相次ぐサービスの提供開始、昭和63年におけるISDNサービスの開始等によって、伝送容量当たりの通信料金の低廉なサービスが相次いで提供され、産業分野におけるおう盛な情報通信ニーズとあいまって、近年は通信回線装備指標の伸びは著しい。特に、データ伝送の伸びは大きく、主なデジタル通信回線(注)の雇用者1万人当たりの装備容量は昭和55年度の12.5kb/sから2年度の2.83Mb/s(対前年度比34.1%増)へ226倍に飛躍的に拡大している。
 一方、通信回線とともにデータ通信に必要不可欠なコンピュータシステムの装備状況については、昭和55年度を100とすると2年度の指数は450であり、通信回線装備指標よりも大きな伸びを示している。特に超小型コンピュータ(付注6参照)の指数は昭和55年度の100から2年度の611へ飛躍的に伸びている。
 また、コンピュータ機器以外の情報通信機器の装備状況についても、堅調な伸びを示しており、特にファクシミリ端末の装備が昭和55年度の11倍になるなど普及が顕著である。
 他方、利用面の推移を示したものが第1-3-32図であり、おおむね装備面の進展状況に対応した動向を示している。しかし、通信回線の支出からなる通信回線利用指標については、通信料金の低廉化、通信回線の大容量化等によって、昭和60年度以降の通信回線装備指標の著しい伸びに比べて、近年における伸び率は相対的に小さくなっている。
 (業種別にみた通信回線装備)
 「ネットワーク化動向調査(3年10月調査)」((財)日本データ通信協会)(付注7参照)によると、常用従業員千人当たりの通信回線の装備容量は2,266kb/sであり、その内訳は第一種電気通信事業者の提供する通信回線容量が1,877kb/s、第二種電気通信事業者の提供する通信回線容量が389kb/sであった。また、通信回線数は常用従業員千人当たりで164回線であり、そのうち第一種電気通信事業者の提供する回線が158回線、第二種電気通信事業者の提供する回線が7回線であった(第1-3-33図参照)。
 業種別にみると、回線容量が最も大きいのは、商社・卸売業であり、サービス業、小売業と続いている。また、第二種電気通信事業者の提供する通信回線の容量が大きいのは、サービス業、製造素材、小売業の順であった。一方、回線数でみると、金融保険業、小売業、サービス業の順であっな。金融保険業(1回線当たり6.7kb/s)、建設設備業(同7.3kb/s)は、回線容量に対して通信回線数が多く、相対的に通信速度の低い回線を多く装備しており、逆に運輸倉庫業(同34.1kb/s)、商社・卸売業(同29.1kb/s)、サービス業(同19.7kb/s)は回線数に対して回線容量が大きく、通信速度の高い回線が装備されている。
 回線容量のうち、第一種電気通信事業者の提供する回線の種類別の構成比をみると、全産業では高速デジタル回線、帯域品目専用回線、電話網の順に大きい。業種別にみると、建設設備業におけるISDNパケット回線、製造加工における回線交換回線、商社・卸売業におけるISDNパケット及び回線交換回線、運輸倉庫業における符号品目及び帯域品目専用回線等が、それぞれの業種で装備されている回線容量において構成比が大きい(第1-3-34図参照)。
 また、第二種電気通信事業者の提供する回線の種類別の構成比をみると、全産業では、高速デジタル回線、パケット交換回線が大きい割合を占めている。サービス業ではパケット交換回線、製造素材では高速デジタル回線、小売業では高速デジタル及び符号品目専用回線の構成比が大きい。
 イ ネットワーク化の動向
 産業分野においては、業種、業務によって様々な情報通信ニーズ、情報化の目的等が存在しているものと思われる。
 ここでは、「ネットワーク化推進会議(注1)」においても検討されているネットワーク化の動向を、「ネットワーク化動向調査」((財)日本データ通信協会)によりみることとする。
(ア)ネットワーク(注2)の利用状況
 各企業においで行っている業務を13に区分し、それぞれにおける業務が存在する企業数と各業務についてネットワーク化を図っている企業数を示したものが第1-3-35図である。
 ネットワークを各業務のいずれかで利用している企業は回答企業(506社)のうち91.5%(463社)であり、これらの企業は1社平均4.8業務でネットワークを利用している。また、全回答企業に存在する業務の合計の71.1%の業務でネットワークが利用されており、利用率が高い業務は、物流管理、情報検索、販売・在庫管理、受発注・商品管理等であった。これらの業務は、自社外にもネットワークが伸びている割合が大きく、さらに、物流、販売・在庫、受発注・商品管理等は相互に関連の深い業務であり、複合的にネットワークを利用している企業が多いと考えられる。
(イ)ネットワークシステムにかかわる関係経費の状況
 2年度の各企業のネットワークシステムにかかわる関係経費の総額について、1社の常用従業員(臨時雇・外部からの派遣員を除く)千人当たりに対する支出額でみると、全業種平均では、10億6千4百万円となっている(第1-3-36図参照)。
 その内訳をみると、コンピュータや交換機等の設備に対する減価償却費、レンタル・リース料及び保守料等に支出したネットワーク設備関係経費が5億1千5百万円(総額の48.4%)、電気通信事業者の提供するサービスに対する利用料として支出した情報通信サービス利用経費が7千6百万円(同7.2%)、ネットワークシステムにかかわる人件費その他の経費が4億7干4百万円(同44.5%)であった。
 業種別平均でみると、総経費では金融保険業が突出して大きく、17億8千7百万円であった。また、各経費の比率をみると、ネットワーク設備関係経費が最も高いのは小売業(84.0%)、情報通信サービス利用経費が最も高いのは運輸・倉庫業(12.5%)、また、人件費その他の経費が最も高いのはサービス業(67.5%)であった。
(ウ)ネットワークの利用による効果
 各企業においてネットワークシステムの利用によって効果があったと実感しているものを、利用する立場と管理上の立場から示したものが第1-3-37表である。
 (利用する立場からみたネットワーク化の効果)
 全産業においてネットワークシステムを利用する立場からみた効果としては「事務処理・業務処理が迅速に処理できた」(全回答企業の78.2%)、「事務処理・業務処理が省力化された」(同58.3%)、「事務処理・業務処理がより正確に処理できた」(同41.7%)の順に多く挙げられている。すべての業種において事務処理の迅速化が7割以上と、最も多く挙げられており、事務処理の省力化についてもすべての業種で過半数の企業が効果として挙げている。
 (管理する立場からみたネットワーク化の効果)
 企業の管理上の立場からみたネットワークシステムの効果として、全産業では「企業競争力の強化」(全回答企業の70.8%)、「顧客の確保、取引の拡大」(同58.5%)の順に多く挙げている。各業種ともこの二つの効果については上位に実感しているが、建設設備業、製造加工、製造素材においては社内決定・決裁の迅速化も多く挙げられている。
(エ)ネットワーク化を図る上での阻害要因
 各企業が今後ネットワーク化を図っていく上で阻害要因となると考えられるものを示したのが第1-3-38表である。
 各業種とも回答企業の約6割がら9割が「コスト負担の増加」及び「開発・運用・保守等の人材不足」を挙げている。その他には、プロトコルの整合、安全・信頼性の問題等のネットワークの質的要素も挙げているが、コスト及び人員と比べると比率は小さく、通信回線、ソフトウェア、ハードウェア、運用保守費等の一層の低廉化と人材確保が、今後のネットワーク化を推進する上で必要不可欠であると考えられている。

第1-3-31図 装備指標の推移

第1-3-32図 利用指標の推移

第1-3-33図 従業員千人当たりの業種別の通信回線容量及び回線数

第1-3-34図 業種別の回線種類別装備回線容量の構成比

第1-3-35図 ネットワークによる業務処理の割合

第1-3-36図 ネットワークシステムにかかわる経費の状況

第1-3-37表 ネットワークの利用による効果

第1-3-38表 今後ネットワーク化を図っていく上での阻害要因

 

 

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