平成5年版 通信白書

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第1章 平成4年情報通信の現況

(1) 国内電気通信サービス

 4年の国内電気通信サービスに関して、電話サービスにおいては、契約数、通話回数等の伸び率は鈍化している。一方、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展に伴い、料金の分野において、選択制電話料金サービス制度の提供が始まるなど、多様な電話サービスが進展しており、サービスの向上が図られている。
 移動通信サービスの分野においては、無線呼出しサービスと自動車・携帯電話サービスの契約数の伸び率は鈍化しているものの、無線呼出しサービスが前年同期比14.0%増、自動車・携帯電話サービスが同42.5%増と引き続き増加している。4年10月に9社目の新事業者がサービスを開始し、全国で新事業者の提供する自動車・携帯電話サービスが受けられるようになり(県域の一部の地域での提供も含む。)、今後サービス提供地域の一層の拡大が進むものと思われる。
 専用サービスにおいては、企業等における高度化・高速化する情報通信に対する需要に支えられて高速デジタル伝送サービスが、前年同期比33.9%増と引き続き増加傾向にある。また、各社により高額利用者への割引料金制度の提供が開始され、サービスの向上が図られている。
 高速・高品質のデジタル公衆網であるISDNサービスは、NTTの加入者線交換機のデジタル化の進展も伴って、サービス提供地域が前年同期比36.5%増、契約回線数が同 100.6%増と、ともに伸びている。
 衛星通信サービスの分野においては、企業内映像情報伝送等の衛星通信の特長を活かした需要が増大しており、通信衛星を利用したサービスの提供が進んでいる。4年12月には新たな通信衛星の打ち上げが成功し、5年2月より運用が開始されている。
 このように高度化・多様化する電気通信サービスの中で、利用者にとっては、自己のニーズ・利用形態等に応じて事業者、サービス、料金等を選択する幅が広まってきている。また、技術開発等により情報通信機器についても高度化・多様化は進展しつつあり、利用者へのサービスの向上が図られている。
 ア 電話サービス
 (ア)  契約数及びサービス提供地域
 (NTTの動向)
 NTTの加入電話等契約数は、4年9月末現在 5,720万契約であり、伸び率は、対前年同期比 2.9%増となっている。
 加入電話等のサービスは、加入種類によって一般加入電話等(単独電話、共同電話、地域団体加入電話及び有線放送電話接続回線)と集団電話(事業所集団電話及び地域集団電話)とに区分されている。
 契約数全体の9割以上を占める一般加入電話契約について、事務用と住宅用とに分けてみると、4年9月末現在、事務用は 1,784万契約(対前年同期比 2.6%増)、住宅用は 3,899万契約(同 3.1%増)である。
契約数の伸び率でみると、3年度以降事務用の伸び率の低下幅が住宅用よりも大きく、事務用、住宅用の伸び率は、それぞれ対前年同期比で1.2ポイント、 0.5ポイント低下している(第1-1―2図参照)。
 (新第一種電気通信事業者の動向)
 長距離系新第一種電気通信事業者(第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株))3社の市外電話サービス契約数(ID登録数の3社単純集計)は、4年9月末現在、 1,682万契約(対前年同期比32.6%増)、ID登録実数は、 1,137万回線(同40.0%増)であり、NTTのID登録可能な加入電話契約数に占めるID登録実数の割合は対前年同期比 5.2ポイント増の19.9%となった。
 新事業者が市外電話サービスを提供している地域(一部地域の場合を含む。)を各社別にみると、4年度末現在、第二電電(株)及び日本テレコム(株)は全国で(対前年度末比2県増)、日本高速通信(株)は28都府県(同8県増)であった(第1-1-3図参照)。
 一方、地域系新第一種電気通信事業者のうち、唯一加入電話サービスを提供している東京通信ネットワーク(株)(電話サービス開始は昭和63年5月)のサービス提供地域は、東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨及び静岡の9都県の一部の地域であり、加入電話契約数は、4年9月末現在、 8,172契約(対前年同期比57.0%増)であった。
 (イ)  トラヒック状況
 3年度における総通話回数と総通話時間(NTT、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)の5社合計)は、それぞれ 768.7億回(対前年度比 2.4%増)、36億1千万時間(同 4.4%増)であった。
 電話の利用状況を米国と比較してみると、1人当たりの通話回数及び1加入契約当たりの通話回数がともに米国の方が3倍近い利用量となっている。米国と日本では、国土の広さやコミュニケーションの在り方といった社会環境の相違や、米国は日本と比べ料金・サービスの多様化が進んでいるなど、電話サービス制度の在り方が異なるために単純には比較できないが、我が国の電話利用も今後まだ伸びる余地があるものと考えられる(第1-1-4表参照)。
 総通話回数をNTTと新事業者(4社の合計)別にみると、NTTは 732.7億回(総通話回数に占めるシェア95.3%)、対前年度比 0.9%の微増であるのに対して、新事業者は36.0億回(同 4.7%)、同46.9%の大幅増であった。新事業者の通話回数の大幅な増加は主に県間通話によるものであり、県間通話の通話回数は 141.1億回で総通話回数の18.4%を占めており、この県間通話回数をNTTと新事業者別にみると、NTTが 109.6億回、対前年度比 4.4%の減少であるのに対して、新事業者は31.5億回、同45.8%の大幅な増加であった。これに伴い、新事業者の県間通話におけるシェアは前年度の15.9%から 6.5ポイント上昇して22.4%となった(第1-1-5図参照)。
 なお、東京都、大阪府、愛知県相互の通話をみてみると、新事業者の通話回数は、この3都府県相互間の通話回数の51.0%を占めている。ただし、この3都府県相互間の通話回数は県間通話回数の 5.1%に相当するものである。
 (距離段階別通話回数・通話時間)
 総通話回数及び総通話時間を「区域内通話」(3分間の通話が10円でかけられる単位料金区域の中に終始する通話)、中距離の「100km 以内」及び遠距離の「100km 超」のように距離段階別に分けてみると、「区域内通話」の通話回数及び通話時間は、 508.0億回(総通話回数の66.1%)、21億3千万時間(総通話時間の59.0%)であり、「100km 以内の通話」が 195.6億回(同25.4%)、10億9千万時間(同30.1%)であり、「100km を超える通話」が65.1億回(同 8.5%)、3億9千万時間(同10.9%)であった(第1-1-6図参照)。
 さらに、NTTと新事業者別に市外通話の通話回数及び通話時間を距離段階別構成比でみると、NTTの市外通話については、通話回数が、「100km 以内の通話」で80.8%(対前年度比 2.2ポイント増)、「100km を超える通話」で19.2%(同 2.2ポイント減)で、通話時間が、「100km 以内の通話」で78.1%(同 1.9ポイント増)、「100km を超える通話」で21.9%(同 1.9ポイント減)であった。新事業者の市外通話については、通話回数が、「100km 以内の通話」で39.3%(同 2.1ポイント減)、「100km を超える通話」で60.7%(同 2.1ポイント増)であり、通話時間が「100km 以内の通話」で37.2%(同 2.4ポイント減)、「100km を超える通話」で62.8%(同 2.4ポイント増)であった。
 (通話時間別通話回数)
 総通話回数を通話時間別にみると、「1分以内に完了する通話」の回数が 392.9億回(対前年度比 2.8%増)で最も多く、総通話回数の51.1%(同 0.2ポイント増)を占めており、以下、「1〜3分」の通話回数は同29.1%(同 0.6ポイント減)、「3〜5分」の通話回数は同 8.1%(同 0.1ポイント減)、「5〜10分」の通話回数は同 6.3%(同 0.1ポイント増)、「10分を超える」通話回数は同 5.4%(同 0.4ポイント増)であった。通話時間が長くなるにつれ通話回数は減少する傾向にあり、また、1分以内の通話と5分を超える通話の回数の割合が前年度より増加した(第1-1―7図参照)。
 NTT、新事業者別では、この傾向はほぼ同様であった。
 (時間帯別通話回数・通話時間)
 総通話回数を1日の時間帯別にみると、9時から10時の1時間における通話回数が72.2億回で最も多く、全体の 9.4%を占めている。NTT及び新事業者別にそれぞれの通話回数構成比をみると、NTTは、昼間(8時から19時)77.4%(対前年度比 0.4ポイント減)、夜間(19時から23時)16.7%(同 0.1ポイント増)、深夜早朝(23時から翌朝8時) 5.9%(同 0.3ポイント増)であり、新事業者は、昼間89.4%(同0.8 ポイント減)、夜間 8.6%(同 0.4ポイント増)、深夜早朝 2.0%(同 0.4ポイント増)であった。NTT、新事業者ともに、昼間の割合が減少し、夜間及び深夜早朝の割合が増える傾向にある。
 また、総通話時間を1日の時間帯別にみると、21時から22時の1時間における通話時間が 295億2千万時間で最も多く、全体の 8.2%を占めている。NTT、新事業者別にそれぞれの通話時間構成比をみると、NTTは、昼間61.1%(対前年度比 7.5ポイント減)、夜間29.6%(同6.9 ポイント増)、深夜早朝 9.3%(同 0.6ポイント増)であり、新事業者は、昼間75.0%(同 3.4ポイント減)、夜間18.3%(同 2.3ポイント増)、深夜早朝 6.7%(同 1.1ポイント増)であった。NTT、新事業者ともに、昼間の割合が減少し、夜間及び深夜早朝の割合が増える傾向にある。
 1日の時間帯別通話の傾向としては、通話回数は、ピークが9時から10時に生じており、13時から14時及び16時から18時の比率が高くなっているのに対して、通話時間は、ピークが21時から22時に生じている。通話回数の傾向については、昼間の業務用の通話が大きな影響を与えており、通話時間の傾向については、夜間の家庭での長電話が大きな影響を与えていることがわかる(第1-1-8図参照)。
 (ウ)  加入者線交換機端子数
 4年9月末現在のNTTの加入者線交換機の総端子数は、 6,154万端子であった(対前年同期比 2.4%増)。そのうち、長距離系新事業者に加入契約が可能な端子であるID送出可能端子数は 5,631万端子で、総端子数に占める比率は91.5%(同 6.3ポイント増)であった。また、高度な付加サービスや料金の多様化を実現するための基礎となるデジタル交換機の端子数は 3,203万端子で、総端子数に占める比率は52.0%(同 9.5ポイント増)であった。
 一方、新事業者である東京通信ネットワーク(株)の加入者線交換機の総端子数は、4年9月末現在、1万 9,737端子(対前年同期比49.4%増)であり、全端子がデジタル交換機の端子であり、ID送出可能端子である。
 イ ファクシミリ通信網サービス
 送信情報の蓄積機能等の付加機能がネットワークに付与され、ネットワークが同報通信等のサービスを提供するNTTのファクシミリ通信網サービスの契約数は、4年9月末現在、51万 2,444契約(対前年同期比12.2%増)であった。昭和56年9月にサービスを開始して以来、契約数は順調に増加している(第1-1-9図参照)。
 ウ 移動通信サービス
 (ア)  無線呼出しサービス
 4年9月末現在における無線呼出しサービスの総契約数(NTT移動通信網(株)と新第一種電気通信事業者36社の合計)は、 633万 2,992契約(対前年同期比14.0%増)であった(第1-1-10図参照)。
 総契約数をNTT移動通信網(株)及び新事業者別にみると、NTT移動通信網(株)の契約数は、 405万 2,945契約(同 9.9%増)であり、新事業者の契約数(新事業者36社の合計)は、 228万47契約(同22.3%増)であった。総契約数における新事業者のシェアは、4年9月末現在36.0%であり、前年同期より 2.4ポイント増加している。
 無線呼び出しサービスについては、既に、全国でNTT移動通信網(株)と新事業者のサービスを選択することができ、また、首都圏等の一部地域では、他県でも使用できる広域呼び出しサービスがNTTと新事業者で提供されている。
 (イ)  自動車・携帯電話サービス
 4年9月末現在の自動車・携帯電話サービスの総契約数(NTT移動通信網(株)と新事業者8社の合計)は 155万 3,872契約で、対前年同期比42.5%増であり、総契約数の伸び率は鈍化しているものの、依然大きな伸び率を示している(第1-1―11図参照)。
 総契約数をNTT移動通信網(株)及び新事業者別にみると、NTT移動通信網(株)の契約数は、94万 4,897契約(同41.6%増)であり、新事業者の契約数(新事業者8社の合計)は、60万 8,975契約(同43.9%増)であった。総契約数における新事業者のシェアは、4年9月末現在39.2%であり、前年同期より 0.4ポイント増加している。
 4年度新たにサービスを開始した新事業者については、4年10月に沖縄セルラー電話(株)が事業を開始し、4年度末現在、9社が全国(県域等の一部地域の場合を含む。)でサービスを提供しており、前年度末に比べて1社、6県増加した。
 4年12月には、日本移動通信(株)と各地域セルラー電話(株)との間でローミング(自己のサービス提供区域にいる相手事業者の加入者に対して、移動電話のサービスを受けることを可能とするサービスで、NTT移動通信網(株)と新事業者相互間では従来より提供中。)の提供が開始された。
また、5年3月には、通話品質の向上、高度な秘話通信の実施可能等の特徴を有するデジタル方式の自動車・携帯電話サービスが、NTT移動通信網(株)により開始された。
 (ウ)  その他の移動通信サービス
 第一種電気通信事業者が提供するその他の移動通信サービスとしては、従来からNTTが提供している船舶電話、列車公衆電話、航空機公衆電話等のサービスと、新事業者が提供を開始したサービスがある。
 NTT移動通信網(株)により提供されている船舶電話サービスは、昭和34年にサービスが開始され、4年9月末現在の契約数は2万 2,763契約(対前年同期比19.9%増)であり、航空機公衆電話は昭和61年にサービスが開始され、4年9月末現在 164台(同22.4%増)が設置されている。
また、NTTにより提供されている列車公衆電話は、昭和40年に東海道新幹線においてサービスが開始された後、山陽、東北及び上越新幹線等と利用可能な列車が拡大され、4年9月末現在 1,362台(同12.0%増)が設置されている。
 一方、新事業者が提供する移動通信サービスであるマリネット電話サービスは、4年9月末現在3社がサービスを提供しており、総契約数は 3,427契約(対前年同期比45.4%増)であった。同じく、簡易陸上移動無線電話(コンビニエンス・ラジオ・フォン)サービスは、4年9月末現在4社がサービスを提供しており、総契約数は 7,349契約(同16.8%増)であった。また、元年12月に日本シティメディア(株)がテレターミナルシステムによりサービスを開始したデジタルデータ伝送サービスの4年9月末現在の契約数は 1,467契約(同40.0%増)であった。
 エ 専用サービス
 専用サービスには、一般専用サービス、高速デジタル伝送サービス、映像伝送サービス、テレビジョン放送中継サービス、無線専用サービス等がある。映像伝送サービスには、サービスの高品質化・多様化に対する需要に応えるため、高品質映像伝送が可能な広帯域の映像伝送サービスであるデジタル映像伝送方式のサービス(150Mb/s)が、4年4月よりNTTにより、また、4年10月から12月に地域系新事業者により新たに提供されている。
 ここでは、近年伸び率が著しい高速伝送が可能な高速デジタル伝送サービスと、国内専用サービスの総回線数の9割以上を占める一般専用サービスについてその動向を概観する。
 (ア)  高速デジタル伝送サービス
 高速デジタル伝送サービスは、[1]データ伝送と電話を統合した利用、[2]LAN相互間の高速データ伝送、[3]広帯域を要するテレビ会議等の企業情報通信ネットワーク等の回線として利用されている。
 高速デジタル伝送サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者10社の合計)は、4年9月末現在1万 7,248回線で対前年同期比33.9%増(伸び率は 1.8ポイント増) であり、増加傾向にある。このうち、新事業者の回線数は 4,504回線、対前年同期比32.2%増であり、総回線数におけるシェアは26.1%で前年同期より 0.3ポイント減少した(第1-1―12図参照)。
 主なサービス品目別に、総回線数をみると、64kb/s回線は 5,884回線(新事業者のシェア13.9%)で対前年同期比70.4%増、 384kb/s回線は 2,655回線(同29.1%)で同14.2%増、 768 kb/s回線は 2,659回線(同34.4%)で同 9.0%増、 1.5Mb/s 回線は 2,172回線(同38.5%)で同15.7%増、6Mb/s 回線は 500回線(同41.2%)で同10.9%増であった。サービス品目別回線数の伸びは、全体として速度の遅い回線ほど増加傾向が大きい。また、サービス品目別回線数における新事業者のシェアは、速度の速い回線ほど大きい傾向にあった。
 企業等における高度化、大容量化及び高性能化している自社内のネットワークの構築等により、高速デジタル伝送サービスに対する需要は依然高く、回線数の伸び率は3年に引き続き拡大傾向にあることがうかがえる。
 (イ)  一般専用サービス
 一般専用サービスは、[1]電話、ファクシミリ通信のほか、[2]銀行の預金業務のオンライン処理、[3]航空会社の座席予約業務のリアルタイム処理、[4]流通業のPOSシステム等のデータ伝送、[5]放送業のラジオ放送中継等に利用されている。
 一般専用サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者10社の合計)は、4年9月末現在98万 9,858回線であり、対前年同期比 5.4%増(伸び率は 2.8ポイント減)であった(第1-1-13図参照)。
 総回線数を帯域・符号品目別にみると、帯域品目の総回線数は67万6,841 回線で対前年同期比 3.8%増(伸び率は 3.4ポイント減)であり、主なサービス品目別では、電話網相当の規格を有する3.4kHz回線及び音声伝送回線が大部分(帯域品目の回線数の98.5%)を占めており、これら品目の総回線数は66万 6,774回線で対前年同期比 3.9%増(伸び率は3.3 ポイント減)であった。一方、符号品目の総回線数は31万 3,017回線で同 9.1%増(同 1.5ポイント減)であり、主なサービス品目別では、50b/s 回線は24万 7,300回線で同 8.0%増(同 0.8ポイント減)、2,400b/s回線は 5,539回線で同 7.3%増(同18.4ポイント増)、4,800b/s回線は 8,837回線で同13.3%増(同 1.4ポイント減)、9,600b/s回線は3万 5,363回線で同23.5%増(同16.1ポイント減)であった。
 また、新事業者の総回線数は 9,292回線であり、総回線数におけるシェアは 0.9%(伸び率は 0.2ポイント増)であった。
 オ デジタルデータ伝送サービス
 NTTの提供するデジタルデータ伝送サービスには、パケット交換サービス及び回線交換サービスがある。回線交換サービスの回線数は減少傾向にあるのに対して、パケット交換サービスの回線数は順調な増加傾向を示している(第1-1―14図参照)。
 パケット交換サービスの回線数は、4年9月末現在36万 3,661回線、対前年同期比20.6%増であった。特に、電話網を介してパケット交換網にアクセスする第2種パケット交換サービスの回線数は、4年9月末現在31万 7,435回線、対前年同期比25.9%の増加であり、サービスが開始された昭和60年以降、順調に増加している。この要因としては、パソコンや高機能電話機等の普及に伴って、ホームバンキング、各種のデータベースアクセス、企業の受発注システム及び通信ゲーム等の利用が進展しつつあることなどがある。
 回線交換サービスは、2年度以降減少傾向にあり、4年9月末現在8,222 回線で対前年同期比 3.1%減であった。
 また、新事業者の提供するデジタルデータ伝送サービスには、地域系新事業者の中部テレコミュニケーション(株)が、4年4月よりパケット交換サービスを開始しており、4年9月末現在、 142回線を提供している。
 カ ISDNサービス
 ISDNサービスは、音声による通信、ファクシミリ、データ及び映像等の情報を大量に、高品質かつ経済的に伝送したいという高度化、多様化する情報通信の需要に応えるため、デジタルネットワークにより提供するサービスである。現在、NTTが提供しているISDNサービスには、基本インタフェースによるINSネット64と、より高速な通信も可能なINSネット1500がある。さらに、通信形態に応じた通信モードの選択が可能であり、通信モードの種類には、通話、デジタル通信(64kb/sのほか、1次群インタフェースは384kb/s 及び 1.5Mb/s の選択が可能)、パケット通信がある。さらに、通話中着信通知、フレックスホン等の電話サービスよりも高度な付加サービスもある。
 INSネットサービスの利用分野としては、[1]高品質音声通信による電話会議、[2]高速・高精細画像伝送による写真等のファクシミリ通信や電子写真の転送、[3]経済的な高速デジタル通信によるテレビ会議、[4]コンビニエンスストア等の売上高管理、[5]データベースに対する情報検索、等がある。
 NTTにより提供されているISDNサービスについて、サービス提供地域数は、4年12月末現在 2,321地域(対前年同期比36.5%増)となった。提供地域数の増加により契約回線数も増加傾向にあり、4年12月末現在INSネット64が13万5,834(同 100.6%増)、INSネット1500が同2,769(同 110.1%増)であった(第1-1-15図参照)。
 ISDNの特長を生かした上記のような利用分野での形態が増えてきており、今後も契約回線数は増加していくものと考えられる。
 キ 衛星通信サービス
 衛星通信サービスは、衛星通信が有するサービスエリアの広域性、回線設定の柔軟性、伝達の同報性等の特徴を利用して、NTTが昭和59年11月に通信衛星2号(CS-2)により開始した。NTTは、離島通信、災害対策、臨時回線の設定等に衛星通信を利用してきており、新しいサービスとして衛星デジタル通信サービスや衛星ビデオ通信サービス等も提供している。衛星系新第一種電気通信事業者として、日本通信衛星(株)が元年4月に通信衛星のJCSATにより衛星通信専用サービス等の提供を開始し、また宇宙通信(株)が同年7月に通信衛星のスーパーバードにより専用サービスの提供を開始した。宇宙通信(株)は、所有していた通信衛星の不具合のために衛星通信サービスを停止していたが、4年2月に新たなスーパーバードBの打ち上げに成功し、4年4月よりサービスの提供を再開した。さらに、4年12月に新たなスーパーバードAの打ち上げに成功し5年2月から実用に供している。
 衛星通信サービスを利用したサービス事例には、サテライト・ニュース・ギャザリング、ケーブルテレビへの番組配給、企業内映像情報伝送等があり、通信衛星を利用したサービスの提供が進んでいる。
 5年3月末現在運用中の通信衛星は、衛星を開発した宇宙開発事業団と現在利用しているNTT等が共同所有している通信衛星3号-a(CS-3a)及び通信衛星3号-b(CS-3b)、日本通信衛星(株)のJCSAT-1及びJCSAT-2、宇宙通信(株)のスーパーバードA及びスーパーバードBの6機であり、トランスポンダ(電波中継器)数は 140本、(CS-3の24本、JCSATの64本、スーパーバードの52本)である。また、通信衛星を利用して情報の送受信を行う地球局として無線局免許を受けている数は、4年12月末現在 2,538局(NTT 203局、日本通信衛星(株) 1,316局、宇宙通信(株) 1,222局)であった。
 ク 電報サービス
 4年度上半期の電報通数は、 2,181万通であり、昭和61年度以降総通数の増加傾向は続いていたが、対前年度同期比 1.4%減となり、4年度上半期は、前年度同期と比べて減少した(第1-1-16図参照)。
 4年度上半期の電報通数の内訳は、一般電報が 202万通で対前年度同期比で 2.5%増、慶弔電報 1,979万通で同 1.8%減であった。慶弔電報の通数は電報通数の90.7%を占めているが、4年度上半期の慶弔電報の通数は前年同期通数を下回った。また、昭和60年度以降にサービスが開始された「メロディ」、「押し花」等の付加価値電報の通数が慶弔電報に占める割合は増加を続けており、4年度上半期の付加価値電報の通数は 1,195万通で対前年度同期比18.3%増であり、慶弔電報の通数の60.4%を占めた。
 ケ ビデオテックス通信サービス
 キャプテン方式によるビデオテックス通信サービスがNTTにより提供されており、ビデオテックス通信サービスの利用契約数は、5年2月末現在13万 7,772契約で対前年同期比14.4%増であった。契約数を家庭用と事業所用とに分けると、事業所用の利用契約数6万 7,736契約(対前年同期比 9.5%増)に対して、家庭用の利用契約数は7万36契約(同19.6%増)となっており、家庭用の伸びが事業所用を上回っている。
 ビデオテックス通信サービスで利用頻度が高いサービス分野は、事業所用ではニュース・天気予報サービス分野で、事業所用での利用の約25%を占め、家庭用では趣味・娯楽サービス分野及びホームショッピングサービス分野であり、この2分野での利用は家庭用での利用の約30%を占めている。
 コ 国内電気通信料金の低廉化・多様化
 国内の電気通信料金については、昭和55年度以降、日本電信電話公社(現NTT)の電話サービス及び専用サービスを中心とした料金の値下げが段階的に実施されてきていたが、電気通信事業法等が施行(昭和60年4月)され、電気通信市場に競争原理が導入された昭和60年度以降は、新規の電気通信事業者が相次いで参入し、電話サービスだけではなく、自動車電話系、無線呼出し等の各分野においても料金の低廉化が進んできている。
 さらに、従来の電話料金等の競争は、主として料金の水準面を中心に展開されてきたが、利用者のニーズ、利用形態の多様化等を背景として、電気通信事業者が同一のサービスに複数の料金メニューを用意し、利用者が自己のニーズに応じて料金メニューを選択できる料金制度の導入が進んできている。また、加入者交換機のデジタル化の進展により設備面からも多様な料金制度を導入できる環境が整備されてきており、料金制度の多様化が一層進んでいくと考えられる。
 日本銀行の「企業向けサービス価格指数」によると、全サービス業の総平均では昭和60年を100 とすると、4年は 116.3であり16.3ポイント上昇しているのに対して、4年の国内電気通信は90.9であり、 9.1ポイント低下している。特に、自動車電話(4年の指数73.8)、無線呼出し(同71.8)、専用回線(同85.5)の指数の低下幅が大きい(第1-1-17図参照)。
 4年度においては、料金の低廉化・多様化の制度が各事業者において実施されており、低廉化として、電話サービスの分野で通話料金の値下げが実施され、また、多様化の制度として、電話サービス、専用サービス及び自動車・携帯電話サービスの分野で選択料金制度による料金の多様化の制度が提供されている(第1-1-18表参照)。
 電話サービスの料金の値下げについて、事業者別に1度数あたりの通話秒数で値下げ率を比較すると、NTTが4年6月に160km を超える遠距離通話料金について平日昼間で約17%、深夜で約18%、それ以外の時間帯で約16%の値下げを実施し、長距離系新事業者3社(日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び第二電電(株))が4年4月に170kmを超える遠距離通話料金を平日昼間で約9%、それ以外の時間帯で約7%値下げし、地域系新事業者の東京通信ネットワーク(株)が4年5月に20kmを超え30kmまでの通話区分の通話料金を平日昼間で約33%、それ以外の時間帯で約25%値下げした。
 料金多様化の制度としては、電話サービスの分野において、4年4月にNTTにより、通話料金について利用者の選択により毎月一定額を支払うことにより特定時間帯の通話料金を割引く制度が提供された。また、4年7月から8月に長距離系新事業者3社により、通話料金について月極め定額料金を選択し支払うことにより特定時間帯の一定時間内の通話に対して定額料金を適用する選択料金制度が提供された。
 専用サービスの分野において、4年10月にNTTにより、高速デジタル伝送サービスの高額利用者に対する割引制度が提供された。また、4年12月に長距離系新事業者3社により、一般専用サービス及び高速デジタル伝送サービスの高額利用者に対する割引制度が提供され、5年2月に地域系新事業者である大阪メディアポート(株)により、専用線サービスの基本料金の割引制度が提供された。
 自動車・携帯電話サービスの分野において、4年4月に日本移動通信(株)により、TACS方式の携帯電話サービスの通話料金に関して基準度数まで選択制の定額制料金を設定する制度が提供された。
 サ 公衆電話サービス等をめぐる社会的問題
 公衆電話サービスについて、通話の不正利用を目的としたテレホンカード変造、公衆電話機の破壊等の刑事事件が社会問題化してきており、郵政省では電気通信事業の健全な運営や正当な利用者の不利益の防止等の観点からこれらの犯罪対策の対応等に努めてきている。
 カード公衆電話を不法に入手し、制御プログラムをパソコン等に記録させ、通話度数の書換え増加を行うことなどによりテレホンカードを変造して行使するテレホンカードの変造犯罪について、4年4月から8月の間の現行犯逮捕の件数は95件であった。公衆電話サービスを提供するNTTがテレホンカードの変造犯罪に対して講じている対策には、[1]4年1月に高額テレホンカード(3,000円及び 5,000円のカード)の販売停止、[2]4年10月からは全ての公衆電話機での高額テレホンカードの利用の停止等がある。
 また、公衆電話機を破壊する犯罪例としては、[1]公衆電話機の硬貨収納箱に収納されている現金を盗むことを目的としたもの、[2]変造テレホンカードを作成するために公衆電話機の悪用を目的とするもの、[3]公衆電話機を破壊し通信料を支払わずに通話することを目的としたものなどがある。公衆電話機を設置・管理しているNTTで実施されている公衆電話への対策には、[1]公衆電話機の材質を強化する対策、[2]公衆電話機をチェーン等で固定したり、防犯ブザーを設置するなどの公衆電話機の盗難防止の対策、[3]カード公衆電話機が解体された場合、変造に使用される機能が自動的に破壊される機能を公衆電話に付与する対策等がある。
 こうした対策を実施した結果、電話の利用に関する犯罪の発生件数は現在のところ減少傾向にあると考えられているが、引き続き対策の継続に努めていく必要がある。
 また、電話サービスの高度化・多様化に伴い、ダイヤルQ2(情報料回収代行サービス)がNTTにより元年7月より提供されているが、一部の悪質な「アダルト情報提供」等に利用されて、[1]青少年に悪影響を与える番組の登場、[2]高額利用の料金請求、[3]他人の電話回線の無断利用による不正通話等が社会的に問題視された。
 このような問題に対し、サービスを提供するNTTではダイヤルQ2の健全化に向けた観点から、[1]不良番組を排除するため、番組内容の第三者機関による倫理審査結果に基づく不良番組の解約実施、[2]一部番組の情報料上限額の引下げ、[3]高額利用者への料金請求前の通知、[4]請求書への通話料とダイヤルQ2の情報料の分計表示、[5]加入者の希望によりダイヤルQ2を利用できなくする利用規制や利用規制できない交換機からのサービス提供の休止等の対策が3年より実施されており、サービスの健全化が図られている。

第1-1-2図 事務用・住宅用一般加入電話契約数及び伸び率(前年同期比)の推移

第1-1-3図 長距離系新第一種電気通信事業者の電話サービス提供地域(4年度末現在)

第1-1-4表 1人当たり及び1加入契約当たりの電話利用状況

第1-1-5図 NTT,新事業者の県間通話回数におけるシェア(3年度)

第1-1-6図 電話サービス 距離段階別通話回数及び通話時間(3年度)

第1-1-7図 電話サービス 通話時間別通話回数(3年度)

第1-1-8図 電話サービス 時間帯別通話回数(3年度)

第1-1-9図 ファクシミリ通信網サービス契約数の推移

第1-1-10図 無線呼出し契約数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-11図 自動車・携帯電話契約数及び新事業者のシェアの推移

テレターミナルシステム
第1-1-12図 高速デジタル伝送サービス回線数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-13図 一般専用サービス回線数の推移

第1-1-14図 デジタルデータ伝送サービス回線数の推移

第1-1-15図 ISDNサービス契約回数及び提供地域数の推移

第1-1-16図 電報通数の推移

第1-1-17図 企業向けサービス価格指数の推移

第1-1-18表 4年度における主な通信料金の低廉化・多様化の状況

 

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