平成5年版 通信白書

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第3章 映像新時代を迎える情報通信

(2) 映像ソフトの制作動向

 テレビやビデオをはじめとして、ケ-ブルテレビ、BS放送、CS放送等の映像メディアの多様化に対応するため、急速に映像ソフトの需要が高まり、新しいビジネスチャンスの広がりで、異業種からの参入・大資本の参入によって、放送ソフト制作業界においても大きな変革が起こりつつある。このような背景のもとに郵政省が、4年12月に実施した「郵政関連業実態調査」に基づき[1]放送番組制作業、[2]ケーブルテレビ番組供給業の動向を概観する。
 ア 放送番組制作業
 メディアの多様化と技術革新のなかで、放送ソフトは、政治、経済、社会、その他の情報を提供し、国民生活や社会経済文化活動等において重要な役割を果たしている。その放送ソフトを制作する放送番組制作業の現状について概観する。
 なお、ここで、放送番組制作業とは「テレビ放送番組制作」、「テレビコマーシャル制作」、「ラジオ放送番組制作」及び「ラジオコマーシャル制作」を行っている者をいう。
 (ア)  規模
 調査対象事業者の地域別分布をみると、関東地方が57.4%、近畿地方が10.5%、九州地方が 8.1%となっている。都道府県別では、東京についてみると、全体の55.0%と半数以上が集中しており、その次の大阪が 7.5%と放送番組制作事業者も東京一極集中していることがうかがえる。
 また、放送番組制作事業者の規模は、資本金が 1,000万円以上5,000 万円未満の事業者が53.0%となっている。一方、 5,000万円以上は、わずか12.2%でしかなかった。
 なお、中小企業基本法に定める中小企業の範囲「資本の額又は出資の総額が1千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が50人以下の会社」に照らしてみると、資本金が 1,000万円以下の事業者が全体の56.1%、常時雇用従業者が50人以下の事業者が全体の80.8%を占めており、中小規模の事業者が多いことがうかがえる。
 また、テレビ放送番組制作業務を開始した時期は、「昭和56年〜平成2年」が61.8%と最も多く、業務を開始して10年以内の新しい事業者が多い。次いで、放送局が番組制作を外部に委託するようになったといわれる「昭和46年〜55年」に業務を開始した事業者が22.6%であった。「昭和45年以前」から業務を開始している事業者も12.1%存在する。
 開設形態では、「創業・創設(経営組織の変更や合併を含む。)」が最も多く、55.6%であった。次いで、「企業内の一部門として」が20.4%、「他の企業から分離・独立」は17.7%、「他の事業からの転換」は6.3 %と、当初から放送番組制作業務を目的として新しく設立された事業者が多いことがわかる。
 「創業・創設」以外の回答をした事業者に対して、放送番組制作業に進出する前に携わっていた業種(進出以降も引き続き行っている場合を含む。)について回答を求めた。その結果、「テレビ放送業」が27.6%で最も多かった。次は、「広告業」の15.2%である。なお、「その他」の回答が40.0%もあり、前業種は多様である。
 (イ)  雇用状況
 3年度の調査対象事業者の放送番組制作業に係る常時雇用従業者は、1社あたり平均は、20.0人となっている。規模別には、常時雇用している従業者数が「10人未満」の事業者は55.7%、「10〜49人」が33.0%となっているのに対し、「50人以上」の雇用は11.3%となっている。
 4年度の調査対象事業者の放送番組制作業に係る常時雇用従業者の実績見込みは、1社あたり平均21.2人で、3年度実績と比較すると1.2 ポイント増と常時雇用従業者は増加傾向にある。
 職種別にみた放送番組制作に携わる専門職の過不足状況をみると、「番組制作内容に影響するほど不足している」及び「不足しているが制作内容には影響がない」と回答した職種で最も多かったのは、「ディレクタ-(具体的な映像・イメージ作り等を行う)」で72.9%と半数以上の事業者が不足していると回答している。その他では、「アシスタントディレクター(ディレクターを補佐)」(72.4%)、「プロデューサー(番組の企画、出演者との交渉等番組制作の総括的な管理を行う)」(66.7%)となっており、これをみると「プロデューサー」、「ディレクタ-」という番組制作全般を指揮する職種が不足していることがわかる。
 (ウ) 売上高
 3年度の調査対象事業者の放送番組制作業務全体の売上高は、1社あたり平均5億 7,578万円であり、また、4年度の調査対象事業者の売上高見込みは、1社あたり平均7億 145万円と対前年度比21.8%増となっている。
 売上高実績の分布をみると、3年度の売上高実績は、「1億円未満」が44.3%と最も多く、全体の3分の1以上を占めている。次いで、「1億円〜5億円未満」が35.3%となっている。「5億円以上」の売上を上げている事業者は、20.4%である。
 また、平成4年度実績見込では「1億円〜5億円未満」が、30.8%となっている。
 放送番組制作内容ごとの売上高比率では、テレビ番組制作の技術に係る売上が最も多く、総売上高を 100%とした場合の29.7%を占めている。
次いで、テレビ番組の企画・演出が28.4%となっている。
 また、テレビ放送番組制作業務開始時期と放送番組制作業の売上高の関係をみると、2億円以上の売上げをあげている事業者のうち、昭和46年〜昭和55年に開始した事業者が29.3%、昭和26年〜昭和35年に開始した事業者は13.3%と古くから業務を行っている番組制作事業者の売上げが高く、反対に昭和56年以降の新規参入事業者は、大半が2億円以下の売上げになっている。
 放送局との契約までの形態([1]企画入札契約、[2]放送局からの企画持込、[3]代理店からの企画持込、[4]その他)の総契約件数に占める比率をみると「放送局からの企画持込」が最も多く、43.8%を占めており、次いで「代理店からの企画持込」が22.5%であった。「企画入札契約」は16.7%と最も少ない。
 (エ) 今後取り組む業務内容及び新技術
 今後、取り組む業務内容や新技術をみると、「1年以内に取組を計画している」という回答で多かったのは、「ケーブルテレビへの映像供給」で、これは地上波や衛星放送向けのテレビ番組だけでなく、ケーブルテレビにもマ-ケットを広げ、業務の拡充に努めるという意向の表れと考えられる。
 「2〜3年後には取り組みたい」という回答では「ハイビジョン」(26.4%)、「ケーブルテレビへの映像供給」(25.9 %)、「マルチメディア」(25.4%)が多い。このうち、「ハイビジョン」、「マルチメディア」については、今後、急速な普及が見込まれるため、早急に対応したいという意思の表れと思われる。
 イ ケーブルテレビ番組供給業
 多メディア・多チャンネル化を担う一翼として、近年、都市型ケーブルテレビをはじめとする多チャンネルケーブルテレビの普及が進展し、その進展に合わせて、ケーブルテレビに多彩な映像ソフトを提供するケーブルテレビ番組供給事業が活発化している。
 (ア) 規模
 郵政省が、4年12月に実施した「郵政関連業実態調査」によると、ケーブルテレビ番組供給事業者の規模は、資本金が10億円未満の事業者が47.4%、10億円以上の事業者が52.6%となっている。10億円以上の事業者が比較的多いのは、ケーブルテレビ番組供給業は、異業種大資本からの参入が多いためである。
 また、対象事業者数42社のうち88.1%(37社)が東京に所在地をかまえている。
 (イ) 雇用状況
 ケーブルテレビ番組供給業務を担当する従業者数をみると常時雇用従業者を10人以上雇用していると回答した事業者が27.8%であるのに対し、10人未満と回答した企業は、72.2%であった。
 職務別の従業者の雇用状況をみると「番組編成・制作」及び「営業」に携わる常時雇用従業者は、「5人以下」が最も多く、60.0%の事業者が常時雇用従業員は5人以下で業務を行っている。
 また、33.3%の事業者が「番組編成・制作」業務に常時雇用従業者以外の従業者を従事させており、少ない常時雇用従業員を常時雇用従業者以外の者で補っていることがわかる。
 (ウ) 供給方法及び売上高
 ケーブルテレビ事業者への番組供給方法として、一つの供給方法のみによって供給を行っている事業者では「衛星通信による供給」が、57.1%と最も多く、地上回線のみによる供給、テ-プのみによる供給方法を上回った。これは、元年に通信衛星を利用した番組供給方法(スペ-ス・ケ-ブルネット)が、実現して以来、着実に衛星による番組供給が進んでいることを示している。
 また、ケーブルテレビ番組供給業務に係る売上高をみると、3年度実績額で「1億円未満」の事業者が52.6%、「1億〜5億円未満」が31.6%と売上5億円未満の事業者が8割以上を占めている。10億円以上の売上を出した事業者は、わずか 5.3%であった。
 (エ) 今後取組む業務内容及び新技術
 今後、取り組みたい業務として、「1年以内に取組を計画している」という回答が最も多かったのは、「通信衛星を利用した放送(CS放送)」で31.8%が取組を計画している。これは、近年の多メディア・多チャンネル化の流れにのってビジネスチャンスを広げようという考えの表れと思われる。
 また、新技術については、「マルチメディア技術」、「ハイビジョン技術」に「2〜3年後には取り組みたい」と、ともに27.3%が回答している。
 これらは、現在、普及率が低いものの、今後、急速な普及が見込まれるため、それに備えてノウハウを蓄積しようという試みの表れと思われる。

 

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