平成5年版 通信白書

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第3章 映像新時代を迎える情報通信

(4) 産業分野における業際化の動向

 映像情報が産業の各分野において重要な役割を果している現在、新しい映像メディア等の制作・開発をめぐり、様々な事業体が、既存の業界の枠にとらわれない生産活動を始めている。
 この動きの背景としては、映像情報をデジタル化する技術等の進展やコンピュータ等が発展し、従来の映像メディアの枠を超えて映像素材等を利用できるようになってきたこと、また、映像情報を通信回線等によりデジタルで伝送する技術等が進展し、遠隔地において加工・処理できるようになってきたことなどがある。
 このような既存の業界の枠にとらわれない業際化の動向として、[1]電子出版をめぐる状況、[2]カラオケソフトをめぐる状況、[3]マルチメディアをめぐる状況等について概観する。
 写真や文字等による従来の出版物では表現できない実際の動き、音声及び音楽等を出版物の中で視覚的・聴覚的に把握したいという需要の高まりに応える目的や、瞬時に参照したい情報を検索できる優れた検索性等から、映像や音声を蓄積できるCD-ROM等のメディアを利用した電子出版物が注目されてきている。電子出版物の制作過程においては、遠隔地との間でISDN回線等を利用し、制作した映像を伝送し仕上がり具合の確認等が行われている。このように、制作過程における情報通信技術やコンピュ-タによる映像処理技術の進展により、制作については、書籍等の出版を行い、出版技術を有する出版会社、出版物等の印刷を行い、印刷技術を有する印刷会社、ビデオ等の映像ソフトの制作を行い、映像ソフト制作技術を有する映像制作会社、CD-ROM対応等の機器の製造を行い、機器の普及を図るため多様な種類の電子出版物を提供している家庭電気製品製造会社等が、市場に参入している。このように、様々な分野の企業が、従来の技術と新たに開発した技術を基にして新しい電子出版物の市場へ進出しており、従来の産業の枠を越えた市場が形成されつつある。
 また、映像や音声をCDへ圧縮・蓄積する技術が進展し、大容量で取り扱いが容易であるCDの特長を生かして、CDを用いたカラオケソフトが注目されている。CDカラオケについても、カラオケ映像の制作過程において、遠隔地との間でISDN回線等を利用した映像素材の伝送が行われている。また、制作についても情報通信技術やコンピュ-タによる映像処理技術の進展により、従来のカラオケソフトの制作技術を有するカラオケソフト制作会社、CD等の機器の製造を行い機器の普及を図るためCDソフトの多様な種類を提供しようとする家庭電気製品製造会社、多角的に映像ソフトの制作を始めている印刷会社等が、CDカラオケの制作を行っている。このように、様々な分野の会社が、新しいCDカラオケの市場へ参入しており、従来のカラオケソフトの市場に新たなCDカラオケ市場が形成されつつある。
 さらに、文字や記号の情報だけではなく、音声や映像情報についても端末を用いて簡便にかつ自由に処理し、送受信したいという需要の高まりに応えるため、次世代の新しいメディアとしてマルチメディアに期待が集まっている。
 映像、音声及び文字情報を一括して取り扱う全く新しいメディアであマルチメディア分野には、通信技術を基に映像等の大量な情報を処理・伝送する技術を開発しようとする通信事業者、コンピュータ処理技術を利用し、映像や音声情報を文字情報等と一括して処理するための技術の開発を行っているコンピュータ製造会社、家庭向けに新たな情報通信機器として普及を図りたい家庭電気製品製造会社、ゲーム以外の新しい市場を開拓しようとしているゲーム機器製造会社等が、産業の枠や国境を越えて連携する動きがある。
 このように、様々な分野の企業が、従来の技術と新たに開発しようとする技術を基にして新しい技術分野であるマルチメディアの市場へ進出しており、従来の業界分野の枠を越えた新しい市場が形成されつつある。
 以上のように、映像メディアには様々な新しい市場が現れてきており、これらの市場においては、従来の技術を基に様々な企業が進出し従来の業界の枠ではとらえることのできない業際化の動きが活発化している。
映像系情報通信の発展に伴い、このような市場が発展するとともに、新しい産業として大きく成長することが期待されている。

 

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