平成5年版 通信白書

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第3章 映像新時代を迎える情報通信

 映像とは一般的に、スクリーンやブラウン管、液晶ディスプレイ及び空間等の上に、光学的あるいは電子的に投影・受像・創造される像を言うが、今日の社会のあらゆる分野において、広汎に取り入れられ、用いられており、種々の側面において重要な役割を果たしている。
 映像は、人間の視覚に直接伝わり、直観的な理解を可能とさせるなど優れた特質を有しており、衛星通信・放送技術の進歩ともあいまって、国境を越えた映像情報が東欧・旧ソ連の政治的な変革にも影響を与えたと考えられるなど、現代社会において極めて大きな影響・効果を持つようになってきている。
 また、衛星放送やケーブルテレビ、ハイビジョン等多メディア・多チャンネル化の進展に伴い、映像メディアの多様化と映像情報の量的拡大は目覚ましく、それとともに、ビデオ、コンピュータゲーム等娯楽の分野をはじめとして、医療、教育、企業活動等にも活用されるなど、日常生活に深くかかわってきている。
 さらに、コンピュータによる映像の創造、すなわちコンピュータグラフィックス(CG)が映像の生成において大きな位置を占めるようになってきており、これにより、従来人間の肉眼では見ることができなかった分子・原子レベルの世界、遠い宇宙の様子、歴史的な出来事等の映像による視覚化が容易となってきている。また、バーチャルリアリティ(仮想現実感)や立体映像等、新しい技術を利用した映像も登場し、映像による仮想体験が可能となるなど、映像の質が変化し、高度化しつつあるといえる。
 一方、ビデオカメラ、パソコン等の機器の低価格化、高機能化等により、誰もが気軽に映像を制作・編集・加工できるようになり、また、そうした映像をコミュニケーションの手段として利用することが可能となるなど、従来の映像を視聴するという受動的立場から、映像を利用するという能動的立場へと利用形態の変化も見られるようになってきている。
 このように現代社会においては、映像メディアの多様化・高度化及び映像情報の量的拡大、そして映像そのものの質的な変化や映像の利用形態の変化等が顕著となってきており、こうした意味で新しい映像の時代(「映像新時代」)が到来しているものといえよう。
 本章では、社会経済の在り方や生活環境等に大きな影響力を持ち、21世紀に向けた、豊かな国民生活の実現のために不可欠となっている映像について、情報通信分野を中心にその現状と動向を分析するとともに、映像新時代における情報通信の果たすべき役割と課題について論じていくこととしたい。

 

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