平成5年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

4 情報通信による環境問題への対応

  (1)  郵政省の環境問題への取組について

 近年、オゾン層の破壊、地球温暖化、熱帯林の減少、大気や水質の汚染、自然環境破壊等、人類の生存基盤に係る地球環境の破壊が世界的規模で急速に進行しつつある。このような状況下において、郵政省においても、環境問題は、人類の生存に係る重要な問題として、官民が一体となり総力を挙げて取り組むべき課題として認識し、これまでにも、郵政省において、短波長ミリ帯の電磁波を利用したオゾン層や大気中の微量ガス成分の計測や紙資源を使用する葉書への再生紙の利用等、電気通信と郵政事業の両面から対応が行われてきた。
 しかし、現在の環境破壊の急速な進展及び環境問題の解決に向けた世界的規模の問題意識の高まりに対し、郵政省としても環境問題に対する総合的な認識を明らかにし、環境政策を強力に推進する観点から、「郵政省の環境問題への取組について(郵政省環境政策大綱)」を4年12月に策定した。
 ここにおける基本的な考え方としては、経済成長の活力を損なうことなく国民生活や事業活動を環境と調和させていくという既存の枠組みを越えた新しい対応とこれを実現させていくための道筋を情報通信を利用する観点から提起していることである。また、政策実施のための社会的な基盤として、全国にあまねく展開している2万4千の郵便局ネットワ-クの活用の可能性を踏まえたことである。
 そもそも、情報通信は、それ自体クリ-ンでエネルギ-消費の少ない社会資本である。エネルギ-消費の大きい交通による人、物の移動を情報通信で代替する事によって、大きな環境改善効果を挙げることができる。今後、情報通信は、国民生活や産業活動を環境に調和したものに変えていくための社会基盤として、大きな役割が期待されている。
 具体的な施策及びそれの効果予測に関しては、郵政省において、4年11月から5年3月まで開催された「環境・省エネ対応型電気通信システムに関する研究会」において検討が行われた。この研究会の目的は、米国におけるテレコミューティング(通信通勤)に関する法律制定の動きとその影響を踏まえ、環境改善効果の高い情報通信システムとそれによってもたらされる二酸化炭素の数量を試算することによって通信政策の策定に資することである。
 個別の情報通信システムとしては、次の3つが主に検討された。
[1]交通代替型通信システム
 テレビ会議やテレコミュ-ティング等、映像通信を用いた臨場感の高い情報通信システムの普及を促進することにより、出張等の交通による移動の削減により、二酸化炭素の削減や省エネに貢献することが可能になることが検証されている。郵政省においても、郵便局衛星通信ネットワ-ク(P-SAT)を整備し、会議や研修に伴う人の移動の削減を図ることにしている。
[2]省エネ型電気通信システム
 電気・空調及び照明等、ビルの屋内設備の効率な管理を行うために、電気通信回路を利用して集中制御を可能とするビル管理統合通信システムの導入により、電力消費の削減も期待されている。また、情報交換を電子化して行うEDI(電子デ-タ交換)もペ-パ-レス化を促進するなどの効果を期待されている。
[3]環境モニタリング型通信システム
 大気や水質の監視を多地点間に設置されたセンサ-を通信ネットワ-クで制御し、各地での異変を迅速に把握・分析し、環境破壊の事前防止等に資することが可能であり、すでに約300 の自治体及び企業で活用されている。そして、全国的な普及に向けての支援施策について検討された。

 

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