平成5年版 通信白書

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第1章 平成4年情報通信の現況

(2)  産業の情報化

 産業分野においては、各企業等が業務の効率化、省力化を図る目的とともに、高度化、多様化する消費者の需要に迅速かつ柔軟に対応しつつ、さらなる事業の発展を図る目的から、社内外における情報を有効に活用する手段として、通信回線や情報通信機器を積極的に装備し、利用している。さらに、通信回線や情報通信機器を全社的体制で、一層効果的に利用するため、情報通信ネットワークを構築している。
 本項では、[1]産業分野における通信回線及び情報通信機器の装備・利用の状況、[2]企業等の規模別・業種別にみた通信回線の装備状況、[3]情報通信回線及び情報通信機器等のネットワーク化の動向等を概観し、考察する。
 ア 通信回線等の装備・利用動向
 ここでは、産業分野全体における情報化の進展状況について、[1]通信回線と情報通信機器を装備・利用指標に指数化して分析する方法と、[2]各業種別の通信回線の装備状況を分析する方法等により考察する。
 (ア)  指標からみた装備・利用の進展
 加入電話回線や専用線等の通信回線、電話機やファクシミリ等のコンピュータ機器以外の情報通信機器、汎用電子計算機等のコンピュータ機器(付注20)の面から、それぞれの装備・利用の状況を、各年度単位に装備指標・利用指標(付表11参照)に指数化し、昭和56年度から3年度までの指数の推移をみることにより、産業分野における情報化の進展状況を考察する。
 第1-3-26図に通信回線、非コンピュータ機器、コンピュータ機器の装備指標を示す。通信回線及び各機器の雇用者1万人当たりの装備状況を昭和56年度を 100とした指数でみると、装備回線容量について3年度の指数は 162.4(対前年度比13.4ポイント増)、非コンピュータ機器については同 137.5(同 5.3ポイント増)、コンピュータ機器については同 375.3(同10.6ポイント減)へ拡大している。
 装備回線容量については、回線を個々にみると、加入電話回線やISDN回線等の国内公衆回線容量についての3年度の指数は 151.6、高速デジタル専用線等の国内専用回線容量については 189.7、国際デジタル専用線等の国際専用回線容量については 160.7と拡大している。
これは、情報通信ネットワークに用いられるISDNや高速デジタル専用線、社員への連絡手段として利用されている自動車・携帯電話等の旺盛な需要により、契約数が引き続き伸びているためと考えられる。
 非コンピュータ機器については、ボタン電話やPBX(構内交換機)の普及に伴う1回線当たりに接続されている電話機の増加、ファクシミリや自動車・携帯電話機等の高機能化や普及に伴う台数の増加等により拡大傾向にある。
 第1-3-27図に通信回線、非コンピュータ機器、コンピュータ機器の利用指標を示す。通信回線及び各機器の雇用者1万人当たりの利用状況を昭和56年度を 100とした指数でみると、通信回線の利用状況について3年度の指数は 149.1(同 2.9ポイント増)、非コンピュータ機器については、同 240.0(同 7.5ポイント増)、コンピュータ機器については、同 516.6(同40.8ポイント増)であり、引き続き拡大傾向にある。
 利用指標が拡大傾向にあることについては、利用料金の低廉化や旺盛な情報通信需要による装備指標の増加に伴い、通信回線及び各機器の利用が増加したため、利用指標も拡大傾向にあると推察される。
 (イ)  業種別にみた通信回線装備の動向
 「ネットワーク化動向調査(4年10月調査)」((財)日本データ通信協会)(付注21参照)により、企業等の従業員規模別(「常用従業員千人未満」及び「千人以上」に区分)に通信回線の回線数と回線容量をみると、従業員の規模に比して装備している回線数と回線容量が大きくなっていることがわかる(第1―3―28表参照)。
 さらに、業種別に装備している回線数と回線容量をみると、回線数について装備回線数が最も大きい業種は、「千人未満」及び「千人以上」ともに金融・保険業が最も多く(第1-3-29図参照)、回線容量について装備回線容量が最も大きい業種は、「千人未満」が運輸・倉庫業であり、「千人以上」が製造業(加工型)であった(第1―3―30図参照)。
  イ 情報通信ネットワーク化の動向
 ここでは、企業等において進められている企業内情報通信ネットワーク化の動向について、[1]利用の状況、[2]必要経費の現状、[3]ネットワーク導入後の効果、[4]導入上の問題点について、「ネットワーク化動向調査」により考察する。
 (ア)  情報通信ネットワークの利用状況
 第1-3-31図に、各企業が行っている業務を13に区分し、区分した各業務が自社内に存在する企業数と、区分した各業務についてネットワーク化を図り利用している企業数を示している。
 情報通信ネットワークを各業務のいずれかで利用している企業は回答企業(669 社)のうち86.7%( 580社)であった。このうち、情報通信ネットワークの利用率が高い業務は、受発注・商品管理、物流管理、販売・在庫管理、情報検索等であった。
 (イ)  情報通信ネットワーク構築にかかわる関係経費の状況
 全産業について情報通信ネットワークの構築にかかわる関係経費のうち、減価償却費と人件費に着目し、その費用額構成比をみると、減価償却費については、「1千万円から1億円未満」の割合が最も多く(第1―3―32図参照)、人件費についても「1千万円から1億円未満」の割合が最も多い(第1―3―33図参照)。
 (ウ)  情報通信ネットワークの利用による効果
 第1-3-34表に、各企業において構築した情報通信ネットワークの利用によって得られた効果を、「利用する立場」と「管理する立場」からみた場合に分けて示している。
 「利用する立場」からみた効果について全産業でみると、「事務処理・業務処理が迅速に処理できた」が81.6%と最も多く、前年の調査結果よりも3.4 ポイント増加している。すべての業種で75%以上の企業がこの効果を挙げており、事務・業務処理の速さについてネットワーク化を図ることが非常に効果のあることがわかる。
 次に、「管理する立場」からみた効果について全産業でみると、「企業競争力の強化」が63.8%と最も多いが、前年の調査結果よりも 7.0ポイント減少しており、逆に「経営戦略決定の迅速化・正確化」が同 4.0ポイント増加し、「資金決裁の迅速化・資金運用の効率化」が同3.3 ポイント、「社内決定・決裁の迅速化」が同1.5 ポイントとそれぞれ増加している。このことから、自社の競争力の強化が依然ネットワーク化の効果の中心であるが、一方、社内における意思決定の迅速化に対してネットワーク化の効果が大きくなりつつあることがわかる。
 (エ)  ネットワーク化を図る上での阻害要因
 第1-3-35表に、各企業が今後ネットワーク化を図っていく上での阻害要因となると考えられる項目を示している。
 全産業でみると、「コスト負担の増加」が86.4%と最も多く、前年の調査結果よりも4.0 ポイント増加している。景気の低迷や収益の減少を反映して、回線、ソフトウェア、ハードウェア、及び運用保守費等の経費の負担感が各企業ともに大きくなっていることがわかる。

第1-3-26図 装備指標の推移

第1-3-27図 利用指標の推移

第1-3-28表 従業員規模別・業種別の1企業当たり通信回線数と回線容量

第1-3-29図 従業員規模別・業種別の1企業当たり通信回線数

第1-3-30図 従業員規模別・業種別の1企業当たり通信回線容量

第1-3-31図 情報通信ネットワークによる業務処理の割合

第1-3-32図 ネットワークシステムにかかわる減価償却費の割合

第1-3-33図 ネットワークシステムにかかわる人件費の割合

第1-3-34表 情報通信ネットワークの利用による効果

第1-3-35表 今後ネットワーク化を図っていく上での阻害要因

 

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