平成5年版 通信白書

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第3章 映像新時代を迎える情報通信

2 21世紀に向けた課題

 (1) インフラストラクチャの整備

 映像新時代の進展により、すべての個人が、帰属する地域に依存することなく、全国のどこにいても、映像情報に自由に接することが可能になると考えられている。そして、この観点から、衛星系及び地上系等の情報通信インフラストラクチャの体系的かつ調和のとれた整備が重要であり、とりわけ、大容量かつ高速な情報通信環境を創出する光ファイバー網等の全国的な普及推進が不可欠であると考えられる。
 現在、光ファイバー網の整備に関しては、その経費が莫大になるものと予想されるため、全国的な整備を経済性に依存する民間部門のみに委ねることで十分可能か懸念する向きもある。ボーダーレス化が進展し、情報通信のさらなる高度化が求められている今日、本問題への対応が、急務の課題となっている。一方、このような社会資本の整備に伴い、高度な通信機器や伝送路等、これまでに顕在化していなかった莫大な新規投資需要が生み出されていくものと考えられている。これは、1章でも言及しているが、大容量かつ高速な情報通信環境を可能にするATM交換機や光ファイバー等新世代通信網の構築のための投資による経済波及効果は、その2.13倍の生産額を生み出し、電気通信・放送事業の設備投資による 2 .09倍の波及効果と比較しても高い効果が算出されている。
そして、その整備が進展していく過程で、教育及び医療を始めとした広範な分野に恩恵をもたらし、それが及ぼす企業活動や生活様式の変化等により、いわゆる情報家電等の新しい財やサービス需要の創出が相乗的に進行し、情報通信機器製造業や映像ソフト産業のみならず、映像系情報通信産業全体が大きく成長していくものと予想されている。このように、映像新時代を支えるインフラストラクチャの整備が、経済構造を変革し、新たな成長への源泉となることが期待されている。
 また、先進諸外国においても、例えば、米国においては、国家の発展を支える重要な社会基盤として、広帯域情報通信網の整備計画が検討されている。そして、欧州においても、ドイツやフランス等のように、光ファイバー網の敷設やそれを活用した実験が計画的に実施されている。
このように、広帯域情報通信網の構築は、諸外国においても、新しい社会発展のための戦略的部門として位置づけられ、今後の経済・社会活動にとって、不可欠な基盤として位置づけられている。我が国においても、このような観点から、この社会資本としての新しい情報通信インフラの整備の方策について、早期の国による検討が求められているといえよう。

 

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