平成5年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第2章 情報通信政策の動向

(7) 宇宙通信技術開発の推進

 ア 通信放送技術衛星(COMETS)
 我が国の社会経済の発展に伴い、宇宙通信に対するニーズは今後一層増大、かつ高度化、多様化していくものと考えられる。そこで郵政省では、科学技術庁、宇宙開発事業団と協力して、Kaバンド(30〜40GHz帯)高度移動体衛星通信技術(小型通信機によるデータ通信、テレビ電話等)、衛星間通信技術、高度衛星放送技術(デジタルハイビジョン衛星放送)、大型静止衛星技術の高性能化技術等の開発及びその実験・実証を行うことを目的とした通信放送技術衛星(COMETS)を8年度に打ち上げることを目標に、2年度から搭載用中継器等の開発を進めている。郵政省通信総合研究所においては、5年度には、高度移動体通信のための中継器及び高度衛星放送のための中継器受信部の開発並びに通信実験のための地上施設の整備を継続して行うとともに放送地上実験設備の開発に着手している。
 イ 次世代研究開発衛星の研究
 21世紀初頭においては、地上系の通信システムが使えないような山奥であっても利用できる携帯電話、移動体に向けての高品質音声放送及び大容量衛星間通信等の実現が期待されている。このため、郵政省では、21世紀初頭に実現が予想されるSバンド( 2.5GHz 帯)移動体衛星通信システム、Sバンド移動体デジタル音声衛星放送システム及び大容量の衛星間通信システムに必要となる衛星技術と衛星利用技術の研究開発及びその技術の宇宙における実験・実証を目的とした次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究に4年度から着手している。現在、移動体衛星通信や移動体デジタル音声衛星放送の実現に必要となる高出力中継器や10m程度の大型展開アンテナ等に関する技術及びミリ波・光を用いた衛星間通信技術の研究を行っている。
 ウ 電波を利用した宇宙インフラストラクチャの整備方策に関する調査研究会
 郵政省では、将来の宇宙活動の発展に備えて、宇宙活動の安全性、確実性を確保するために、宇宙環境モニタリングシステム、宇宙における情報通信ネットワーク、宇宙航行安全システム等電波を利用した宇宙インフラストラクチャについて、国際協力の進め方や行政施策等を含めた整備方策の検討を行っている。3、4年度は、宇宙環境モニタリングの在り方に関して調査研究を行い、スペースデブリ(宇宙空間に存在する使用済みの人工衛星等の不要物体)の観測体制と太陽活動による宇宙環境(太陽環境)の変化(人体及び宇宙機器に有害な影響を与える放射線)の観測・予報システムについて検討を行ってきた。具体的には、スペースデブリ、太陽環境の観測の国内外の現状、観測システムに必要な機能や技術、宇宙環境モニタリングシステムのイメージ、国際協力の在り方等について検討を行ってきた。
 5年度からは、有人宇宙活動に必要な通信や、生命維持・宇宙機運用に必要なデータ及び各種実験データの伝送等に必要となる宇宙における情報通信ネットワークに関する今後の研究開発課題や国際協力の進め方について検討を進めている。
 エ 宇宙通信システムの信頼性向上に関する研究
 通信・放送分野における衛星利用が進み、宇宙通信需要が増大した今日、宇宙通信システムは社会にとって不可欠なものとなっており、これらに発生する不具合は、国民生活に重大な影響を与えるものである。
 宇宙通信システムの信頼性の向上を図るためには、軌道上の衛星で生じた不具合の原因を明確にし、その分析・検討結果をその後の衛星の開発にフィードバックすること及び現在ではほとんど不可能である不具合部分の復旧を可能とすることが必要である。このため、郵政省では、4年12月から「宇宙通信システムの信頼性向上に関する調査研究会」を開催し、通信衛星、放送衛星の宇宙通信システムの信頼性向上を図る上で必要な要素技術として、特に、衛星の自己監視技術、不具合解析技術、静止軌道サービス衛星技術及びクラスタ衛星技術に着目し、これらの技術の現状及び技術開発課題等についての調査・検討を行い、今後の宇宙通信システムの信頼性向上策の在り方について検討を行っている(第2―6-1図参照)。
 オ 測位衛星システムの在り方に関する調査研究会
 衛星を利用した測位システムは、広範囲にわたって簡便に高精度の測位情報を提供することから、自動車のナビゲーションから工事測量まで、幅広い用途での利用が期待されている。特に、米国国防総省が中心に開発したGPS(Global Positioning System) と呼ばれる測位衛星を用いた船舶、自動車等のナビゲーションシステム等の利用も広まってきている。
 郵政省では、測位衛星システムの安全性・完全性確保の方策について検討を行うことを目的として、「測位衛星システムの在り方に関する調査研究会」を3年7月から開催し、4年6月に報告書を取りまとめた。
この結果を受けて、ナビゲーション機器製造企業等により「衛星測位システム協議会」が4年11月に設立された。この協議会では、GPS等衛星測位システムに関する技術開発及び利用動向の調査、GPSの利用を検討している国際機関等との交流、GPSの機能に関する情報収集、利用技術の調査研究等を行っている。

通信放送技術衛星(COMETS)想像図(写真提供:宇宙開発事業団)
第2-6-1図 宇宙通信システムの信頼性向上に関する研究

 

(6)デジタル音声放送技術の開発推進 に戻る (8)首都圏広域地殻変動観測施設の整備 に進む