第2章 情報通信政策の動向
(2) 周波数資源の開発
ア 未利用周波数帯の開発 現在使用されていない周波数の高い電波、例えばミリ波(30GHz 〜300 GHz )はこれまで使用されている周波数の約10倍と広い帯域を有している。このため、将来の有望な周波数資源として研究開発が行われている。ミリ波の特質を生かして、近い将来、実用化が期待されるものとしては、高速無線LAN、IDカード、ワイヤレスカメラ、自動車衝突防止レーダ等が挙げられる。 また、光領域周波数帯も、その特徴を生かして宇宙通信分野等の無線通信分野に利用していく技術開発が行われている。 イ 既利用周波数帯の再開発 近年の移動通信需要の伸びは著しく、将来の需要に対して、現在割り当てられている周波数だけでは対応できないことが予想されている。 このため、地上固定通信、衛星通信等に使用されているマイクロ波帯(3GHz 〜10GHz )を移動通信に利用可能とするための研究開発を行っていく必要があり、4年10月から郵政省において開催している「電波資源開発利用に関する調査研究会」において、マイクロ波帯移動通信の技術的課題の抽出及びシステムのイメージ等について検討を進めているほか、通信総合研究所では5年度よりマイクロ波帯移動通信システムを実現するための研究開発を開始することとしている。 ウ 周波数有効利用技術の開発 既に利用されている周波数を、同じ利用分野で従来以上に高度利用を図る周波数有効利用技術としてインテリジェント電波利用技術が注目されている。 インテリジェント電波利用技術とは、電波伝播特性や利用状況等の環境に応じて、無線局が使用する周波数、電力、周波数帯域幅等を時間的に動的(ダイナミック)に変化させ、電波利用の効率的、質的向上を目指す技術であり、3年10月より「インテリジェント電波利用に関する調査研究会」において研究開発が進められている。 この他、単一周波数中継方式、FM同期放送技術等の研究開発を行うこととしている。 エ 周波数ひっ迫対策税制の創設 本税制は、無線局の急増に伴い周波数のひっ迫状況がますます深刻化していることから、電波を高密度に利用できる機器に税制支援措置を講ずることによって、その普及促進を図り、周波数のひっ迫に対処することを目的として5年度税制改正により措置されることとなった税制である。 対象品目は、[1]デジタルMCA装置、[2]デジタルAVM装置、[3]衛星対応型車両情報通信装置の3品目で、5年度及び6年度の2年間において、これらの設備を購入等した者に対し、初年度20%の特別償却が認められる。 オ 周波数資源の開発に関する国際共同研究の推進 電波の利用は我が国のみならず世界的に急速に拡大しており、先進国を中心に周波数資源がひっ迫しつつあるとの基本的認識が広まっている。 このような中、我が国は国際協調と研究の効率化の点から、4年9月米国との間でミリ波帯の研究開発を協力して推進していくことに基本的な合意をしたところであり、通信総合研究所と米国商務省電気通信情報庁通信科学研究所との間で情報交換、研究者交流等を行いつつ効果的に研究を進め、その成果を交換することとしている。
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