平成5年版 通信白書

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第1章 平成4年情報通信の現況

(4) 経済波及効果

 ア 3年度の電気通信・放送事業の設備投資の経済波及効果
 ここでは、3年度に電気通信事業者及び放送事業者が行った設備投資について、我が国経済に及ぼす波及効果を考察する。
 電気通信事業者及び放送事業者が行う民間設備投資は、設備投資の対象となる情報通信機器製造業等の生産活動を直接誘発し、さらにその生産が他産業部門に対する生産と輸入を誘発するというかたちで、我が国経済全体及び海外にその効果が波及していく。
 産業連関分析における3年度の投資額は、2兆 8,522億円であり、前年度より3,509 億円の増加であった。この設備投資は、投資額の2.09倍の5兆9,491 億円の国内生産と31万2千人の雇用及び 3,304億円の輸入を誘発すると算出される(第1―2―34図参照)。
 国内生産に対する波及の大きな分野をみると、国内生産誘発額について最も大きな生産波及のある分野は「情報通信機器製造業」で、全体の29.2%に当たる1兆 7,360億円の国内生産波及を受けている。また、情報通信機器以外の製造業への生産波及効果と合わせると、製造業に対して国内生産誘発額の5割以上が及んでいる。その他、「電気通信施設建設」に対しても 6,475億円の国内生産誘発額が及ぶなど生産波及が大きい。
 イ 電気通信基盤充実事業の経済波及効果
 高度通信施設を整備し、電気通信による情報流通の円滑化のための基盤の充実化を図り、情報社会の健全な発展に寄与する目的のもと、3年度より電気通信基盤充実事業が実施されている。この事業では、光ファイバーや超高速デジタル伝送装置等の電気通信の利便性を飛躍的に高める新世代通信網の施設整備を推進する事業が行われており、3年度から5年度の3年間の事業額は、 7,105億円である。
 この事業の設備投資は、設備投資の対象となる情報通信機器製造業等の生産活動を直接誘発し、さらにその生産が他産業部門に対する生産を誘発、我が国経済全体にその効果が波及していく。この事業がもたらす我が国の国内生産波及は、事業額の2.13倍の国内生産額が誘発されると算出される。この誘発効果は、従来の電気通信・放送事業の設備投資の波及効果と比較して高い値を示しており、新世代通信網に対する設備投資の波及効果は、既存の通信網に対する設備投資の波及効果よりも大きいことがうかがえる(第1―2―35図参照)。
 国内生産に対する波及の大きな分野をみると、最も大きな生産波及のある分野は「情報通信機器製造業」で、全体の45.9%の国内生産波及を受けている。情報通信機器以外の製造業に対する生産波及と合わせると、国内生産誘発額の65.7%が及んでおり、製造業に対する生産波及が大きいと算出される。
 また、輸入誘発額は 962億円となり、輸入に対して大きな影響のあることがわかる。
 ウ 3年度情報通信公共投資事業の経済波及効果
 電気通信格差の是正及び地域住民の福祉の向上に寄与することを目的として、3年度には、[1]全国どこでも自動車電話等の移動通信サービスが使えるようにするための移動通信用鉄塔施設の整備事業(以下「移動通信用鉄塔施設整備事業」という。)、[2]地上系民間テレビジョン放送の難視聴を解消するための中継施設の整備事業(以下「民放テレビ放送難視聴解消事業」という。)について10億 300万円が予算計上され、事業主体である公益法人又は地方公共団体に対して補助を行った。
 これら2事業に対する投資は、移動通信用鉄塔施設及び民間テレビジョン放送の中継施設の建設の事業を直接誘発し、さらにその事業が他産業部門に対する生産を誘発するというかたちで、我が国経済全体にその効果が波及していく。この結果、移動通信用鉄塔施設整備事業及び民放テレビ放送難視聴解消事業に対する投資額の生産波及効果をみると、移動通信用鉄塔施設整備事業については2.03倍、民放テレビ放送難視聴解消事業については2.06倍の国内生産がそれぞれ誘発されていると算出される(第1―2―36図参照)。
 事業別に波及効果の大きな分野をみると、移動通信用鉄塔施設整備事業については、最も大きな生産波及を受けるのが「電気通信施設建設」であり、誘発される総国内生産額の35.5%に及ぶと分析される。また、電気通信施設以外の建設に対する生産波及効果と合わせると、建設業に対する波及効果は、誘発される総国内生産額の42.9%に及ぶと分析され、移動通信用鉄塔施設整備事業については、建設業に大きな波及効果があることがうかがえる。
 また、民放テレビ放送難視聴解消事業について同様に分析すると、「電気通信施設建設」が誘発される総国内生産額の25.5%、「情報通信機器製造業」が同20.7%など、大きな生産波及効果が及ぶと分析される。
また、情報通信機器製造業に対する生産波及効果と情報通信機器以外の製造業に対する生産波及効果とを合わせると、製造業に対する波及効果は、誘発される総国内生産額の47.7%に及ぶと分析され、民放テレビ放送難視聴解消事業については、製造業に大きな波及効果があることがうかがえる。

第1-2-34図 3年度における電気通信事業・放送事業の設備投資による経済波及効果

第1-2-35図 電気通信基盤充実事業(3年度〜5年度)による経済波及効果

第1-2-36図 3年度における情報通信公共投資事業の投資による経済波及効果

 

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