平成5年版 通信白書

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第1章 平成4年情報通信の現況

(1) 国際電気通信サービス

 3年度における国際電気通信サービスの動向としては、3年度末の国際電話サービスの総通信分数(KDD及び新事業者2社の合計)は対前年度比18.6%増の19億 9,730万分と好調であるが、伸び率は低下している(元年度の伸び率は25.4%,2年度の伸び率は24.3%)。
 また、3年度末現在の国際専用回線サービスの提供回線数(KDD及び新事業者2社の合計)は 1,658回線であり、対前年度比約2%の微増となっている。
 料金面では、4年度に国際テレビジョン伝送サービス及び企業通信ネットワークサービスの料金値下げが実施された。
 サービス面では、4年度には新事業者の日本国際通信(株)(ITJ)と国際デジタル通信(株)(IDC)が相次いで国際内線電話サービスを導入するなど、国際電気通信サービスにおいては、より利用者のニーズにあったサービスの拡大及び充実を目指し、積極的に高品質サービスを提供する動きがみられる。
 ア 国際電話サービス
 3年度の国際電話サービスの総通信分数を発着別にみると、3年度の発信分数は対前年度比23.8%増の11億 6,050万分、また、着信分数は同比12.1%増の8億 3,680万分と、発着ともに伸びを持続しているが、伸び率は減少している(2年度の発信分数の伸び率は33.6%、着信分数の伸び率は14.2%)。
 また、総通話分数にみる発信分数の比率は58.1%(元年度は51.7%、2年度は55.7%) となっており、発着格差は年々拡大傾向にある。
 取扱地域別にみると、前年度に引き続き米国との通信が最も多く、全体の約30%を占めている(第1-1-32図参照)。また、上位10対地のうちアジアの国が7か国を占めているなど、我が国とアジア諸国との社会的、経済的関係が強くなってきていることがうかがえる。 我が国から国際電話が利用できる取扱地域数は、4年度末現在で 230地域となっている。
 国際電話サービスのうち、国際ダイヤル通話の取扱地域数は、4年度に新たに6地域(カンボディア、モンゴル、ブータン、ニウェ、トゥヴァル及びセント・ヘレナ)が加わり、4年度末現在で 214地域に拡張され、自動化率は世界の全取扱地域の約93%に達している。また、廉価な国際オペレータ通話である番号通話サービスは、ラオスが加わり4年度末現在で 222地域に拡張されている。また、3年度に開始された国際内線電話サービスの取扱地域数は、4年度に新たに10地域(シンガポール、スペイン、カナダ、香港、フランス、イタリア、ヴァチカン、サン・マリノ、オランダ及び韓国)が加わり、4年度末現在で14地域に拡張するなど量的拡大が進んでいる。国際電話が利用できるクレジットカードを用いて、海外から日本あての国際ダイヤル通話が利用できる国際電話サービスの取扱地域数は、4年度に新たに6地域(台湾、ニュー・ジーランド、フィリピン、カナダ、オランダ及びスウェーデン)が加わり4年度末現在で16地域に、また、海外から直接オペレータを呼び出す国際電話サービスの取扱地域数は、4年度に新たにアイルランド、コロンビア及びロシアが加わり4年度末現在で54地域となっており、海外からの国際電話利用機会の促進や利便性の向上も図られている。
 また、4年度には、NTT移動通信網(株)及び日本移動通信(株)のほかに、新たにセルラー電話グループ8社の自動車・携帯電話からの国際電話サービスの取扱い及びNTTの全国の街頭公衆電話機からクレジットカード・コール及びコレクトコールの取扱いがKDDにより開始されるなど、国際電話サービスの利用機会の拡大が図られた。さらに、在日外国人への国際電話の利便性向上を目指し、国際ダイヤル通話専用電話機がKDDにより設置されるなど、国際電話サービスの一層の利用・普及が図られている。
 なお、ロシア極東地域との円滑な国際通信を行うために、日露合弁の国際通信会社「ボストークテレコム(株)」が設立され、5年1月に我が国とロシア極東地域との国際電話サービスの取扱いが開始された。
 イ 国際専用回線サービス
 3年度末現在の国際専用回線サービスの提供回線数を品目別にみると、音声級回線・電信級回線ともに対前年度比17%の減少であり、音声級回線は昭和62年度をピークに、また、電信級回線は昭和56年度をピークに減少傾向が続いている。中・高速符号品目については、対前年度比31%増と順調な伸びを示しており、国際専用回線全体に占める割合も、対前度比11.1ポイント増の約50%となるなど、音声級回線・電信級回線から国際専用回線サービスにおける高速化・大容量化の期待にこたえる中・高速符号品目への移行が顕著な状況にある(第1-1-33図参照)。
 取扱地域別にみると、2年度に引き続き音声級回線及び中・高速符号品目ともに日米間の提供回線数が最も多いが、米国との音声級回線数は対前年度比51%減と半減している反面、中・高速符号品目は対前年度比22%増となっている。また、第2位の香港の音声級回線数も対前年度比約37%減と急減傾向にある反面、中・高速符号品目は対前年度比26%増と大幅な伸びを示している。中・高速符号品目の上位5対地(米国、香港、英国、シンガポール、オーストラリア)については、2年度は上位5対地で約92%を占めていたが、3年度は約85%と上位5対地以外、特に、韓国、インドネシア、タイ等アジア諸国との回線数の伸びが顕著な状況にある(第1-1-34図参照)。
 なお、国際専用回線サービスの取扱地域としては、4年度に新たにアメリカ領ヴァージン群島及びモナコが追加され、4年度末現在で 103地域となっている。
 ウ 国際VANサービス
 国際VANは、国際特別第二種電気通信事業者が国際第一種電気通信事業者から電気通信回線を借りて、蓄積パケット交換サービスや電子メール、蓄積交換ファクシミリサービスなどの付加価値電気通信サービスを提供するものである。取扱地域数は4年度にオーストラリア、タイ、ベルギー、インドネシア及び台湾が追加され21地域となっており、サービスの充実や取扱地域の拡大等が進展している。
 エ 国際ISDNサービス
 国際ISDNサービスは、電話やデータをはじめとする多種多様な通信サービスを一つのデジタル回線網で総合的に提供するもので、元年6月にKDDが世界で初めて、また、4年12月にITJがサービスを開始した。G4ファクシミリやテレビ会議等の利用に加え、近年では高精細な静止画電送やパソコンを利用したデータ伝送、7 kHz から15 kHz 帯域の高品質音声伝送等、新しいサービスの利用が増加している。取扱地域は、4年度に新たに8地域(スペイン、オランダ、スウェーデン、スイス、リヒテンシュタイン、デンマーク、ニュー・ジーランド及びハワイ)が加わり4年度末現在で19地域と、順調に拡張している。
 オ 国際テレビジョン伝送サービス
 電波法上の免許を受けた放送事業者のみが利用できる放送用サービスと、利用者や資格が特に制限されていない一般用サービスが、KDDにより提供されている。取扱地域数は、4年度にカンボディア及びフィジーが追加され、4年度末現在で 130地域となっている。
 放送用サービスは、”衛星中継”として広く親しまれており、今後も世界の国際イベント等における利用が見込まれている。一般用サービスとしては、学術会議等の各種イベントの伝送、大学や予備校等の講義模様の伝送等で利用されている。
 また、希望の場所から直接、太平洋上のインテルサット衛星へのアクセスが可能となる車載型地球局によるテレビジョン伝送サービスにより、全国各地からの即時性のあるニュースや映像の海外への伝送、国際間でのテレビ会議の実施が可能となっている。
 さらに、通信設備が全くない場所からでも、インテルサット衛星を介して国際間のテレビジョン伝送の利用を可能とする映像用可搬型地球局貸出しサービスにより、国際テレビジョン伝送が可能となっている。
 カ 海事衛星通信サービス
 海事衛星通信サービスとは、船舶に船舶地球局設備を搭載し、赤道上に打ち上げられたインマルサット衛星と海岸地球局を通じて、船舶と陸地間又は船舶相互間の通信を行うサービスである。
 本サービスでは、アナログ方式のインマルサットA型無線設備を用いた国際電話、テレックス、ファクシミリ及びデータ通信の提供に加えて、4年2月からA型無線設備より小型であるデジタル方式のインマルサットC型無線設備を用いた蓄積交換型のデータ通信の取扱いが、KDDにより開始されている。これにより、船舶との間の通信が充実し、船舶の航行安全及び運航管理等に一層の効率化が図られている。
 キ 航空衛星通信サービス
 航空衛星通信サービスは、航空機に搭載した航空機地球局設備によりインマルサット衛星と航空地球局を通じて地上と通信を行うもので、航空衛星電話サービスと航空衛星データ通信サービスがKDDにより提供されている。
 航空衛星電話サービスは、機内の操縦室と地上の航空会社との間の通話や機内客室の電話機から地上への公衆通話を利用できるものである。
太平洋空域の航空機からの国際ダイヤル通話に続き、4年12月にインド洋空域での取扱いが開始された。
 航空衛星データ通信サービスは、航空機がインマルサット衛星と航空地球局を通じて、航空会社と運航情報や気象情報等のデータ伝送を行うものであり、航空機の運航の安全と効率化に寄与している。太平洋空域に続き、4年7月にインド洋空域でも取扱いが開始された。
 ク 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 国際テレックスサービスは、記録性・即答性に優れており、かつ不在通信が可能といった特徴がある。3年度の取扱数は 1,425万回(対前年度比18.8%減)と、依然として減少傾向にある。4年10月に日本とカンボディアとの間の国際テレックスサービスの取扱いが開始されたことにより、取扱地域は4年度末現在で 224地域となっている。
 一方、国際電報サービスは、国際郵便業務と同様、長い間国際通信の主要なサービスとして国際電気通信の主役を努めてきたが、時代の変遷に伴い、近年では他の通信手段が多く利用されるようになり、3年度の取扱数は対前年度比 8.3%減の55万通と年々減少している。
 ケ 国際通信回線設備の状況
 4年11月の日本〜米国〜カナダ間を結ぶ第4太平洋横断ケーブル(TPC-4)の運用開始により、太平洋地域の通信需要の増大に対処するとともに、一層安定した通信サービスの提供が可能となった(第1-1-35図参照)。TPC-4の運用により、第3太平洋横断ケーブル(TPC-3)と合わせ、太平洋横断の光海底ケーブル伝送ルートが2ルートとなり、太平洋地域では初めて光海底ケーブルによる障害時バックアップ体制が整うこととなった。また、4年8月に開通した第10大西洋横断ケーブル(TAT-10)とTPC-3やTPC-4、既存の大西洋域の光海底ケーブルを接続することにより、光海底ケーブル相互間での多ルート化が図れるなど、日欧間の通信需要増への対応が可能となった。4年度には、第1-1-36表(本CD-ROMには未掲載)にあるとおり、光海底ケーブルの建設保守協定が相次いで締結された。なお、光海底ケーブルの建設・保守等に必要な海底探査を行う自律式海底探査ロボットが、KDDにより世界で初めて開発されるなど、今後の光海底ケーブルの敷設への利用が期待されている。
 また、4年4月には、KDDの大阪〜山口間の直営デジタルマイクロ波伝送路の建設に伴い、東京〜大阪〜山口間の国内中継伝送路の二重化が図られるなど、独自の国内中継伝送路の検討が進められており、国際電気通信事業者は通信の安全性・信頼性の向上を目指し、国際通信ネットワークの拡充・強化等国際通信設備の増強を積極的に推進している。
 コ 国際電気通信料金の状況
 国際電気通信料金は、KDDが昭和54年に国際専用回線サービスの値下げを実施して以来、ほぼ毎年のように実施されており(昭和58年を除く)、継続的な料金値下げにより低廉化が進展している。
 この状況は、日本銀行による「企業向けサービス価格指数」においても顕著に現れており、昭和60年を 100とした4年10月〜12月平均の国際電気通信全体の料金指数は52.5となっている。サービス業全体の平均値(116.9) が上昇している中で、国際電気通信の価格水準は着実に下降しており、さらには、国内電気通信全体の平均値(89.7)をも大きく下回っており、国際電気通信サービスは国内電気通信サービスと比較しても低廉化が顕著に進展していることがうかがえる(第1-1-37図参照)。
 また、国際通信料金の支払い方法については、金融機関や郵便局等での支払いに加え、ライフスタイルの多様化や生活時間の深夜化に対応して、全国のコンビニエンスストア(一部を除く)で、国際通信料金の支払いが可能となるなど、料金支払いに係る利便性の向上が図られている。

第1-1-32図 取扱地域別国際電話取扱数比(通信分数)

国際ダイヤル通話専用電話機

第1-1-33図 国際専用回線サービスの推移

第1-1-34図 取扱地域別国際専用回線数

第1-1-35図 世界の国際電気通信網

自律式海底探査ロボット


第1-1-36表 4年度における光海底ケーブルの建設保守協定の締結状況

第1-1-37図 企業向けサービス価格指数の推移
 

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