平成5年版 通信白書

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第1章 平成4年情報通信の現況

(3) 通信事業の設備投資動向

 昭和63年度以降の主な通信事業体の設備投資の動向を第1-2-18図に示す。郵便事業、NTT、KDD、新第一種電気通信事業者(NCC)、第二種電気通信事業者、NHK、民間放送事業者及びケーブルテレビ事業者の設備投資額合計は、昭和63年度の2兆 4,446億円から3年度には3兆 1,575億円に増加している。
 また、4年3月の緊急経済対策により、景気の減速感が国民経済に悪影響を及ぼすことがないよう、郵政省は、NTT、KDDをはじめとする第一種電気通信事業者の4年上半期の設備投資については、当初計画額より、 900億円程度の増額に努力するよう要請した。
 さらに4年8月の総規模10兆 7,000億円にのぼる財政措置を中心とした総合経済対策においては、第一種電気通信事業者に対し、5年度の設備投資の前倒し及び設備投資額の上乗せにより、4年度の設備投資額を更に 700億円程度追加すべく努力するよう要請した。
 ア 電気通信事業者の設備投資動向
 (第一種電気通信事業者の動向)
 4年10月に郵政省が実施した「通信産業設備投資等実態調査」等によると、第一種電気通信事業者全体(72社合計)の3年度の設備投資実績額は、2兆 3,590億円であり、前回調査(4年3月実施)による2年度の設備投資実績額2兆 2,467億円(69社合計)に比べ、 5.0%の増加であった。(第1―2―21表参照)
 また、「法人企業動向調査報告」(経済企画庁)による3年度の他産業の設備投資実績を見ると、自動車業が2兆 5,255億円(対前年度比5.3 %増)、化学工業が2兆 4,103億円(同 3.3%増)、鉄鋼業が1兆6,397 億円(同20.9%増)、建設業が1兆 1,733億円(同27.3%増)、民営鉄道が1兆 3,406億円(同 7.0%増)となっている。
 第一種電気通信事業の設備投資の内訳をみると、NTTが1兆 8,868億円(対前年度実績比 3.4%増)、KDDが 587億円(同 3.0%増)であるのに対し、NCCは、サ-ビス提供地域の拡大、多ル-ト化等のため 4,134億円(69社合計)と前年度実績額 3,646億円(67社合計)に比べ13.4%増と高い伸び率を示した。
 また、第一種電気通信事業者の4年度の設備投資修正計画額(72社合計)は2兆 5,200億円(対前年度実績額比 6.8%増)となっている。このうちNTT等が1兆 9,860億円と前年度実績額に比べ 5.3%増の見込みとなっているのに対し、KDDは、 744億円(対前年度実績額比26.7%増)と高い投資額を見込んでいる。一方、NCC(69社合計)は 4,596億円(対前年度実績額比11.2%増)と順調に伸びており、依然として需要増に対処するための設備投資及び事業開始に伴う初期投資が盛んに行われていることがうかがえる。
 (第二種電気通信事業者の動向)
 4年10月調査による第二種電気通信事業者の4年度の設備投資修正計画額についてみると、特別第二種電気通信事業者(回答30社合計)が1,864 億円(対前年度実績額比14.0%増)と大幅に伸びているが、前回調査時(4年3月)の4年度計画額と比較すると14.5ポイント減少している。
これは、「需要見込みの下方修正」、「利益の減少」等の理由で設備投資計画を減額修正した事業者が12社と多かったためである。
 一般第二種電気通信事業者(回答 410社合計)は 663億円(同13.0%減)と、前回調査時(4年3月)の4年度計画額より36.0ポイントの大幅減となっており、設備投資に慎重になってきていることがうかがえる。
 減額修正の理由としては、「需要見込みの下方修正」及び「利益の減少」が大部分を占めている。(1―2―22票参照)
 イ 放送事業者の設備投資動向
 NHKを含めた放送事業全体(回答 376社合計)の4年度設備投資修正計画額は、 2,525億円で対前年度実績額比 3.0%減となっている。
 この内訳をみると、民間放送事業者(回答 181社合計)の4年度設備投資修正計画額は、 1,126億円(対前年度実績額比18.6%減)と大きく減少しており、景気の低迷及び収支状況の悪化が設備投資にも影響を及ぼしてきていることがうかがえる。
 また、ケーブルテレビ事業(回答 194社合計)の4年度設備投資修正計画額は、 720億円(対前年度実績額比10.2%増)となっている。(第1―2―23表参照)
 ウ 設備投資環境の見通し
 「通信産業設備投資等実態調査」(4年10月実施)における電気通信事業及び放送事業の業況判断指標(BSI:上昇と判断した者の割合から下降と判断した者の割合を引いた数値)についてみると、通信産業全般に不況感の広がりがみられる。(第1―2―24図参照)
 4年下期の業況についてみると、第一種電気通信事業は、業界景気の見通しについて、停滞感が出てきているが、5年度上期には回復に向かうと判断している。
 また、特別第二種電気通信事業、一般第二種電気通信事業とも、依然として警戒感をもっているが、5年度上期には回復に向かうとの期待感が強い。
 民間放送事業は、業況の回復は遅れそうであるという警戒感が強まってきているが、5年度上期には回復に向かうという期待感が出てきている。
 ケーブルテレビ事業においては、業況に停滞感が出てきているが、5年度上期には回復すると多くの事業者がみている。
 エ 研究開発費の動向
 「通信産業設備投資等実態調査」(4年3月実施)における第一種電気通信事業者の4年度の研究開発費計画額は、66社で 3,158億円で、対前年度比 6.8%増となっている。
 第一種電気通信事業者の売上高に対する研究開発費の比率は、2年度が 4.3%、3年度が 4.2%、4年度が 4.2%と4%台で安定しているが、NCCの研究開発費が第一種電気通信事業の研究開発費全体に占める比率をみると、3年度実績見込みで2%と低く、売上高に対する研究開発費の比率も1%以下にとどまっている。。(第1―2―25票及び第1―2―26図参照)
 第二種電気通信事業の4年度の計画額は、 354社で 107億円で、対前年度比18.2%増と順調に伸びている。
 民間放送事業の4年度の計画額は、 147社で26億円(対前年度比20.5%増)となっている。また、ケーブルテレビ事業の4年度計画額は、129 社で 2.7億円(同14.5%)となっている。
 しかしながら、売上高に対する研究開発費の比率は、3年度実績見込みで民間放送事業が 0.1%、ケーブルテレビ事業が 0.8%にとどまっている。
 オ 長期資金調達・運用状況
 (電気通信事業)
 「通信産業設備投資等実態調査」(4年10月実施)における3年度の長期資金調達(全社ベース)をみると、第一種電気通信事業者の長期資金調達は「自己資金」の占める比率が37.8%となっている。また、「借入金」の比率は40%台と依然として高いが、内訳をみると民間金融機関からの借入が25.5%、政府系金融機関からの借入が16.9%となっている。(第1―2―27表参照)
 特別第二種電気通信事業者の長期資金調達は、「自己資金」による調達の比率が増加してきている。これは、社債の償還が多くなってきていることによるものと思われる。(第1―2―28表参照)
 また、一般第二種電気通信事業者は「借入金」及び「社債」の比率が減少する一方、それに伴い「自己資金」の比率が増加してきている。(第1―2―29表参照)
 (放送事業)
 民間放送事業者の長期資金調達では、昭和63年度には90%台であった「自己資金」の比率が低下傾向にあり、3年度実績では62.2%となっている。(第1―2―30表参照)
 また、ケーブルテレビ事業者は「借入金」が58.0%と大半を占めており、「自己資金」の比率が20%台と低くなっている。(第1―2―31表参照)
 カ 要員状況
 4年10月の調査時点で、電気通信事業及び放送事業ともに、「人材確保難の状況にはない」とする事業者が「人材確保難の状況にある」とする事業者を上回っている。しかしながら、「人材確保難の状況にある」と回答した事業者のほとんどが、当面人材難が続くと回答しており、一部の事業者には、人材確保が長期的な課題となっている。(第1―2―32票及び第1―2―33表参照)
 また、職種別の人材の過不足状況をみると、電気通信事業及び放送事業とも「技術者」が不足しているという回答が最も多く、技術者不足は依然深刻な問題といえる。「技術者」以外の項目について、事業別にみると、第一種電気通信事業では、「営業従事者」が不足しているという回答(41%)が多い。特別第二種電気通信事業では、「販売サ-ビス従業者」(48%)、一般第二種電気通信事業では「営業従事者」(42%)となっている。
 民間放送事業及びケーブルテレビ事業では、「営業従事者」が不足しているという回答が多かった。
 また、新卒者を雇用していないとする事業者の割合も3年10月調査と比較して増加しており、経験者以外の新規採用を差し控える傾向がうかがえる。

第1-2-18図 主な通信事業体の設備投資額の推移

第1-2-19図 設備投資額

第1-2-20図 業種別設備投資4年度計画 対前年度比

第1-2-21表 第一種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-22表 第二種電気通信事業者の設備投資額

第1-2-23表 放送事業者の設備投資額

第1-2-24図 業界景気の見通し

第1-2-25表 研究開発費

第1-2-26図 当該事業部門の売上高に占める研究開発費の割合

第1-2-27表 第一種電気通信事業の長期資金調達・運用状況

第1-2-28表 特別第二種電気通信事業の長期資金調達・運用状況

第1-2-29表 一般第二種電気通信事業の長期資金調達・運用状況

第1-2-30表 民間放送事業の長期資金調達・運用状況

第1-2-31図 ケーブルテレビ事業の長期資金調達・運用状況

第1-2-32表 人材確保の状況(電気通信事業)

第1-2-33表 人材確保の状況(放送事業)

 

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