平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

2 情報通信の利用をめぐる諸問題

 

(1)  情報セキュリティ


 情報通信ネットワーク利用の進展により、ネットワークにつながったコンピュータに不正にアクセスして、情報を不正に入手したり、破壊したりする事例が頻発している。
 カード番号と暗証番号を用いて、料金後払いで国内外との通話に利用できる国際電話カードをめぐり、ネットワークを介して情報が不正に入手され悪用される事件が発生している。米国及び欧州等において、他人のカード番号と暗証番号を電話回線に接続したパソコンから不正に入手し、これをパソコン通信の電子掲示板等で売買するというもので、電話会社等に多大な損害を与えていた。
 また、国内においても、6年にKDDの国際電話回線にパソコンから不正信号を送り、通話料金が計算されないように工作して、料金を支払わずに国際電話を使用した事件が発生している。
 

(2)  著作権の侵害


 パソコン通信やインターネット等のコンピュータネットワークが発達するに伴い、コンピュータ上のソフトを不正に入手したり、複製したりする事例が増加している。
 米国において、パソコン通信の電子掲示板にデジタルデータ化された音楽作品が掲載されたことにより、 500以上の音楽作品の著作権が侵害されたとする訴訟が1993年末に起こされている。
 この訴訟では、同事業者の音楽関係の電子掲示板にMIDI(注) 方式でデジタル化された音楽作品が掲載され、容易に入手・複製されて利用されていたことに対して、対象となった掲示板の運営を第三者に委任していた同事業者の管理責任が問われている。同掲示板のMIDIデータを入手すれば、シンセサイザー等の電子楽器で演奏したり、コンピュータを使用して編集・加工をすることが容易に可能となっていた。
 

(3)  誹謗(ひぼう)・中傷及びプライバシーの侵害


 パソコン通信の利用の活発化に伴い、会員であれば誰でもメッセージを書き込み、読むことができる電子掲示板や、テーマ別に興味を同じくする会員は誰でも参加して情報交換ができるフォーラム・SIG(Special Interest Group )等のサービスの持つ個人の情報発信を支援する機能が注目を集めている。
 その一方で、電子掲示板及びフォーラム・SIGのサービスは、発信した情報を会員という特定多数に見せることができるという公然性を持つ反面、新聞・雑誌・テレビジョン等のメディアと異なり、会員が発信した情報を運営者は事前に確認できないという性格を持っているため、他人を誹謗・中傷するような記事が繰り返し掲載されたり、本来公開されていない個人の住所・氏名・電話番号等の情報が無断で掲載され、個人のプライバシーを侵害するような問題が発生しはじめている。
 こうした問題に対して、パソコン通信の運営者は、会員規約に電子掲示板等に書き込みを禁じる事項や対応方法等を明記して対応したり、運営者またはフォーラム・SIGの運営を委任されたシステムオペレータ等が掲載された記事の内容によっては、情報を掲載した会員への警告を行ったり、記事の削除等を行うなどして対応している。
 しかしながら、6年4月には、あるパソコン通信サービスのフォーラムに中傷記事が繰り返し掲載されたとして、発信者だけでなく、運営者の責任を問う訴訟が起こされている。
 これらの問題については、利用者のモラルの一層の向上、マナーやルールの確立とともに運営者の適切な対応が求められている。
 

(4)  携帯電話の不正利用


 携帯・自動車電話移動機の売り切り制が導入された6年4月以降、携帯・自動車電話の利用が急速に進んでいるが、その一方で、携帯電話の不正な利用が多発している。
 特に6年夏頃からは、携帯電話の購入時の加入契約に当たり、当初から料金を免れることを目的として、架空の名義で申込みを行うなどしたうえで、携帯電話から国際電話を多用し、高額な国際電話料金を滞納したまま、携帯電話を放置・廃棄するなどの悪質な使用が増加している。このような背景には、売り切り制の導入、加入時の費用の大幅な低下に伴い、携帯電話の加入が容易になったことがあると考えられる。
 国際電気通信事業者3社は、6年11月に、虚偽の氏名・住所等により契約が行われている場合や、料金の滞納がある場合に速やかに通話停止ができるようサービス約款の変更を行うとともに、7年4月からは、自動車・携帯電話による国際電話利用手続きを、利用者が直接国際電気通信事業者と行うなどの変更をすることにより、被害の拡大を防止することとしている。

 

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