平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

2 デジタル技術


 

(1)  画像符号化技術


 画像・映像の情報量はきわめて膨大であるため、ネットワーク上の伝送や蓄積を考えた場合、データ量を圧縮する画像符号化技術は不可欠である。なお、各種の画像符号化方式の比較を第3-3-1-1表に示す。マルチメディアのようなメディア統合を目指すサービスを考えた場合、画像符号化技術は、通信/放送/コンピュータ等の異なる分野で共通に利用できるため、通信関連の国際標準を策定するITU、コンピュータ関連の国際標準を策定するISO及び国際電気標準会議(IEC)が共同で標準化を推進している。
 様々な画質に対応可能なMPEG-2の標準化は、1994年11月にMPEG(後述)のシンガポール会合で国際標準となり、1995年2月にはITU-Tにおいて勧告案が採択された。この符号化方式は、MPEG-1に比べて対応商品が多く、特にデコーダはテレビ、パソコン、ゲーム機等様々な分野に応用でき、大きな市場が見込まれることから、多くの企業がMPEG-2用復号化LSIの開発に取り組んでいる。各企業が開発するMPEG-2用復号化LSIは、MPEG-2の11種の仕様のうち、通信/放送/コンピュータ等の異なる分野で共通に使える機能を持つMP(K)@ML(Main Profile at Main Level)に対応するものがほとんどである。
 携帯情報機器の動画像に対応する超低速ビットレートのMPEG-4の標準化も1998年を目処に行われる予定となっている。
 日本企業は、MPEGの標準化に積極的に関与してきたこともあり、多くの企業がMPEG-2用復号化LSIの開発に取り組んでおり、ケーブルテレビ関連機器メーカーへサンプル出荷する企業や、量産化に成功した企業も見受けられる。
 

(2)  デジタル放送技術


 デジタル放送方式は、[1]映像、音声、データの他、ソフトウェア等の高度な情報を統合化し柔軟な編成が可能になるなど高機能化が図られる、[2]一定の伝送帯域幅でより多くのチャンネルの設定ができる、[3]通信ネットワークのデジタル化の進展によりそれらとの接続が容易となるなどの様々な利点を有し、放送システムに大きな変革をもたらすものとして日米欧各国で研究開発が行われている。
 米国では、FCCにおいて次世代テレビ(ATV:Advanced Television )の規格化が行われている。当初は、複数の規格案が提案されていたが、1993年2月にデジタル方式による4方式に選考対象が絞り込まれた。1993年5月にはこれらの提案者らにより「グランド・アライアンス」が結成され、デジタル方式によるHDTVの規格統一が行われた(グランド・アライアンス方式)。また、米国では、ATVの実用化にさきがけて1994年から衛星デジタル放送が行われている。
 欧州では、任意団体のEP-DVB(European Project for Digital Video Broadcasting) にて、地上放送、衛星放送及びCATVのデジタル方式の規格案が検討され、欧州電気通信標準化機構(ETSI)にて規格化の手続きが行われることになっている。
 我が国では、6年6月から電気通信技術審議会において、地上放送、衛星放送及びCATVのデジタル放送方式の検討が行われている。このうちCSによる衛星デジタル放送及びデジタルCATV放送については、7年3月に放送方式の機能及び性能の実証実験に使用するための暫定方式がとりまとめられ、実証実験が開始されている。また、郵政省通信総合研究所、NHK、民間放送事業者、通信事業者、メーカー等によりデジタル圧縮技術、デジタル変調技術等の要素技術が開発されている。また、BTAが新放送システム特別部会を設置し、また、ケーブルテレビのデジタル伝送方式については、ケーブルテレビ協議会技術委員会がデジタル伝送技術専門部会を設置し、それぞれ次世代のデジタル放送に関する調査研究を実施している。


第3-3-1-1表 各種画像符号化方式の比較
 

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