平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

2 電波の高度利用と環境整備の促進

 

(1)  電波利用促進のための規制緩和


  ア 無線局検査制度の簡素化
 無線局は、開設、変更工事の落成の際及び免許期間中の一定時期毎に、無線設備、無線従事者、備付け書類等の検査を受ける制度になっているが、近年の技術進歩に伴う無線設備の性能安定、信頼性の向上や免許人の自主的管理点検能力の向上等に鑑み、次のような大幅な簡素化を7年4月から施行する予定である。
 [1] 定期検査不要局の拡大
 [2] 免許人による管理点検が良好な一定の無線局の定期検査省略
 [3] 定期検査の実施周期の延長
 [4] 変更検査を省略する範囲条件の拡大等
  イ 携帯・自動車電話基地局への包括周波数指定免許制度の導入
 近年の携帯・自動車電話サービスの急激な加入者の増加に対応するために、電気通信事業者においては、携帯・自動車電話基地局の無線回線を頻繁に変更をすることが必要になっている。これまでは、基地局で使用する周波数を増波する場合は、無線設備の変更の許可・検査が必要であったが、こうした事業者の負担を軽減するために、郵政省では、6年12月に電波法関係省令を一部改正し、事業者が使用する予定の周波数をあらかじめ指定して免許する「包括周波数指定免許制度」を導入することとした。これにより、基地局で使用する周波数を増波する場合、技術基準適合証明設備を使用する場合は、当該無線設備の許可・検査が不要になり、無線回線の変更に迅速に対応することが可能となる。
 

(2)  周波数有効利用のための技術的諸方策


 郵政省は、6年4月に、電気通信技術審議会から「周波数有効利用のための技術的諸方策」について答申を受けた。本答申では、近年の通信のパーソナル化、マルチメディア化に伴う電波需要の飛躍的増大に伴い、有限な電波資源の一層の効率的利用が不可欠となっていることから、電波需要の急増に的確に対処していくために、将来の周波数需要動向、周波数利用に関する国際動向、周波数有効利用技術の発展動向が明らかにされるとともに、これらの動向を踏まえつつ、総合的な観点から、今後の周波数有効利用のための技術的方策について取りまとめがなされた。
 これを受け、郵政省では、6年9月に、計画的かつ能率的な電波利用を図るため、電波の有効利用の方向性を示した「電波有効利用指針」を策定した。本指針は、5つの無線通信業務(移動通信、移動衛星通信、固定通信、固定衛星通信、放送)ごとの[1]将来の電波利用の考え方、[2]導入すべき電波有効利用技術と研究開発目標から構成される。
 本指針において将来の周波数移行の方針や電波有効利用技術の導入の方針が明示されることにより、[1]マルチメディア化対応等の将来の無線通信システムの導入の促進、[2]周波数移行、再配分の促進、[3]メーカー、通信事業者等の電波有効利用技術の研究開発の的確化・円滑化等の効果が期待されている。
 

(3)  周波数資源の開発


 我が国における電波利用は、社会経済の発展、電波利用技術の進歩によりますます増大の一歩をたどっている。また、移動通信のマルチメディア化が進むことにより、従来以上の高速大容量通信を可能とする電波利用技術の開発が必要になる。
 これらの電波需要の急激な増加に的確に対処していくために、郵政省では、郵政省通信総合研究所が中心となって、計画的に周波数資源の開発を推進している。
  ア 未利用周波数帯の開発
 オフィス等における情報通信ネットワークにおいては、これまで使用されている周波数の約10倍と広い帯域を有しているミリ波(30GH z〜300 GH z)を利用することにより、端末機器の無線化・可搬化、広帯域伝送・マルチメディア伝送を可能とするミリ波構内通信システムの実現が可能となる。郵政省通信総合研究所では、ミリ波構内通信を実現するために、屋内多重路伝搬特性・高速伝送技術・小型高機能なアンテナ技術等の要素技術の研究開発を進めている。
 また、同研究所では、ミリ波・サブミリ波( 300GH z〜 3,000GH z)の利用を進めるために必要となる回路部品の小型化・軽量化・価格低減を実現するために、薄膜回路部品技術とそれらを集積化した通信デバイスの研究開発及び新しい機能デバイスの研究開発を行っている。
  イ 既利用周波数帯の再開発
 将来の移動通信の需要増加と高度な通信サービスの導入に伴う周波数のひっ迫に対応するため、主として、地上固定通信・衛星通信等に現在使用されているマイクロ波帯(3GH z〜10GH z)を移動通信に利用するための研究開発が必要となっている。郵政省通信総合研究所では、マイクロ波帯をマイクロセルでのマルチメディア移動通信サービスに利用するため、[1]電波伝搬特性とゾーン構成法の研究、[2]移動局、基地局の高能率アンテナの開発、[3]高速、高品質デジタル伝送方式の研究開発を進めている(第2-2-4-2図参照) 。
  ウ 周波数有効利用技術の開発
 主に移動通信需要の増大に対処するため、電波の伝搬状況や利用状況等の環境に応じて、周波数の配置、各基地局が管理するゾーンの範囲及び変調方式を動的(ダイナミック)に変化させ、最大限の周波数有効利用を図るインテリジェント電波利用技術の研究開発が重要になってきている。このため、郵政省通信総合研究所では、[1]通話量の変動に応じて各基地局が使用するチャネル数を変化させ、周波数効率を向上させるダイナミックチャネル割当技術、[2]各基地局が管理するゾーンの範囲を通話量に応じて変化させ、周波数効率を向上させるダイナミックゾーン構成技術、[3]伝搬路の状況の良否の予想に応じて、変調方式を変化させる適応変調伝送方式について研究開発を進めている(第2-2-4-3図参照) 。
 このほか、同研究所では、放送にデジタル技術を導入することにより、放送局の多局化、難視聴解消、コミュニティ放送の普及等の拡大する周波数需要にこたえると同時に、マルチメディア化等の高度化を図るために、画像の階層符号化、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex )変調方式、使用周波数帯、サービスエリア等の研究を行っている。
 

(4)  マルチメディア移動通信の振興


 近年、社会・経済に新たな高度化をもたらすものとして、マルチメディア・アプリケーションの導入が各界で検討されはじめているとともに、「いつでも、どこでも、だれとでも」通信を可能とするパーソナル化に対する要望も高まっている。このため、これらのニーズに対応し、マルチメディア・パーソナル通信を実現するマルチメディア移動通信の環境整備が急務となっている。また、国際的にも、無線系マルチメディア等の先端技術分野に関する日米欧の連携やアジアとの協力が必要となっている。
 このような中、郵政省では、マルチメディア移動通信の実現に向けて、マルチメディア移動通信に関する開発ビジョンの策定、研究開発の促進、技術基準の検討及び諸外国との連携、協力等の施策を総合的に推進している。移動体通信の展望については、6年6月に電気通信技術審議会から「移動通信システムの将来像と開発の在り方」が答申されているが、さらに、6年8月からは「マルチメディア移動体通信に関する調査研究会」を開催し、[1]マルチメディア移動体通信の適用領域とアプリケーション、[2]移動体通信システムのマルチメディア化の進め方、[3]標準化、システム開発への要求条件等について、7年4月を目途に調査研究を進めている(第2-2-4-4図参照) 。
 

(5)  移動通信の普及促進


  ア 高速ページャーシステム
 無線呼出し(ページングサービス)の加入者は、近年非常に高い伸びを示しており、その利用形態についても、従来の呼出しのみの利用法から、情報伝送やメッセージ交換に使われるなど多様化してきている。
 今後、このようなページングサービスの一層の高機能化、多様化が見込まれるなかで、収容量の増加及び大量のデータ伝送が可能となる高速ページャーシステムの早期実用化が求められていることから、郵政省では、電気通信技術審議会から、「電気通信業務用データ系移動通信システムの技術的条件」のうち「高速ページャーシステム用無線設備の技術的条件」について、6年11月一部答申を受けたところであり、今後、関係省令の整備等を進めることとしている。
 今回答申を受けたシステムの特徴としては、[1]伝送速度を6,400b/sまで高速化することが可能なため、電子メールのような文字情報の伝送が可能となる、[2]同一チャネル内で現行方式と時分割により混在してサービスすることが可能なため、加入者の増加に応じて現行方式から高速ページャー方式への柔軟な移行が可能になること等があげられる(第2-2-4-5図参照) 。
  イ ワイヤレスカードシステム
 近年、道路、駐車場、駅等における料金徴収の効率化、オフィス、工場等の入退室管理の効率化、レジャー施設使用の簡便化等といった社会経済活動の効率化、省力化の観点から、ワイヤレスカードシステムの実用化に対するニーズが様々な分野において高まってきている。これまでに、微弱電波等を利用したシステムが実用化されてきているが、通信距離が短いなどの課題があるため、ICカード等を活用した様々な用途に対応できる、より高度なシステムを実現することが求められている。
 郵政省では、電波の有効利用、利用者の使い勝手、セキュリティ対策等を考慮しつつ、ワイヤレスカードシステムの実用化及び普及促進を図るために、6年10月、電気通信技術審議会に「ワイヤレスカードシステムの無線設備の技術的条件」について、諮問を行った(第2-2-4-6図参照) 。
  ウ 将来の公衆陸上移動通信システム(FPLMTS)
 FPLMTS(Future Public Land Mobile Telecommunications Systems)は、アナログ方式、デジタル方式に続く第3世代の移動通信システムとして位置づけられており、ITUにおいて、1986年から標準化の検討が開始されており、1992年に開催されたWARC92においては、2GHz 帯の周波数を2000年以降に割り当てることが取り決められている。現在は、ITU-RのTG8/1(タスク・グループ8/1 )とITU-Tの関連する研究委員会において、世界標準方式の検討が進められている。
 我が国では、電気通信技術審議会において、ITUへの寄与文書の審議が積極的に進められている。
 

(6)  道路・交通・車両の情報化への取組


  ア VICSの推進
 VICS(Vehicle Information and Communication System)は、渋滞・事故・規制・旅行時間等の道路交通情報をドライバーに提供することにより、交通の安全・円滑化、環境保全及び経済性の向上等に寄与することを目的としている。
 情報の提供にあたっては、[1]道に沿って設置された電波方式又は光学式の装置を通して、間欠極小の通信範囲で道路交通情報を提供する情報ビーコン方式、[2]FM放送局の放送波に重畳して、広域の通信範囲で道路交通情報を移動体に提供するFM多重放送方式が検討されている。
 VICSの推進にあたっては、郵政省・警察庁・建設省の支援のもと、VICS推進協議会において、実用化・事業化に係る調査、研究、開発が行われている。
 郵政省では、電波方式ビーコンの技術的条件について、5年9月の電気通信技術審議会の答申「道路交通に関する情報通信用無線設備の技術的条件」を受け、6年10月に当該システムの実用化のための省令改正を行ったところである。
 また、VICSの事業推進のために、郵政省・警察庁・建設省の3省庁共管の(財)VICSセンター(仮称)が設立される予定である。
  イ 小電力ミリ波レーダ
 小電力ミリ波レーダは 100m程度の範囲の状況を探知可能なミリ波を用いたレーダシステムであり、霧の中や降雨・降雪時においても使用可能であるため、特に自動車の衝突事故等の防止の一助となるシステムとして、その早期実用化が望まれている。郵政省では、7年3月に電気通信技術審議会から「60GH z帯の周波数を利用する小電力ミリ波レーダの技術的条件」について一部答申を受けており、これを受けて、今後実用化に必要な関係省令の整備等を進める予定である。
  ウ 道路・交通・車両の情報化への国際的な取組
 ITUでは、カー・ナビゲーション無線等の道路交通情報通信システムについて、TICS(Transport Information and Control System)として国際標準化を図る方針を固め、6年12月にスイスのジュネーヴで開かれた作業班会合で新勧告案作りを開始した。郵政省では、このようなITUの国際標準化に積極的に寄与することとしている。
 また、道路交通の安全・円滑化や環境・エネルギーに与える影響等の諸課題を解決するために、道路交通のインテリジェント化を進めるための技術開発が世界的に進められている。我が国においても、このような内外の動向に適切に対処していくために、郵政省・警察庁・通商産業省・運輸省・建設省の5省庁の支援のもと、6年1月に道路・交通・車両インテリジェント化推進協議会(VERTIS:Vehicle,Road & Traffic Intelligence Society)が設立され、ITS国際会議(注) の運営及び活動等に積極的に寄与している。
 

(7)  N-STARを利用した国内移動体衛星通信サービスの提供


 我が国における地上系の移動体通信サービスの需要は急速に伸びているが、サービスエリアの補完・拡大には衛星の利用が効果的であり、移動体衛星通信システムの早期実現が求められている。
 このため郵政省は、移動体衛星通信では初めての周波数であるSバンド(2.6/2.5 GH z帯)を用いる国内移動体衛星通信の導入を目的として、7年7月に関係郵政省令の改正を行うこととしている。
 なお、7年中に打ち上げが予定されている通信衛星「N-STAR」には、Sバンドのトランスポンダが搭載されることとなっており、これを利用する船舶・自動車等を対象とした国内移動体衛星通信サービスが、NTTDoCoMoにより提供される予定である(第2-2-4-7図参照) 。
 

(8)  GMDSSの推進


 「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS:Global Maritime Distress and Safety System)」は、船舶が世界中のいかなる海域を航行していても、最新の衛星通信技術やデジタル通信技術を使用して、陸上の捜索救助機関への遭難警報の送信及び陸上から船舶への海上安全情報の伝達を可能とするシステムであり、4年から段階的に実用化がなされている。
 郵政省では、英語による海上安全情報を提供するための「ナブテックスシステム」(注) に引き続き、6年度には、日本人に理解しやすい「日本語によるナブテックスシステム」の導入に際し、送信機及び受信機の技術基準を策定するなど、GMDSSの普及促進に努めている。
 また、郵政省では、GMDSSの普及促進のための環境整備を図るため、4年度から3か年計画で「GMDSSの導入に伴う海上通信の整備・再構築に関する調査研究会」を開催しており、7年3月にGMDSS体制への円滑な移行のための提言を行った(第2-2-4-8図参照) 。
 

(9)  光無線通信システムに関する取組


 光無線通信システムには、電磁ノイズに強く、高いセキュリティを確保できるというメリットがあるほか、ハイビジョン映像の伝送が可能になるなど、LANや通信端末等において高速・広帯域の伝送路を無線により経済的に実現可能であるという特長があるため、今後のマルチメディア化の推進にあたって、光無線通信システムが果たすべき役割は重要と考えられる。
 このため、(財)電波システム開発センター(RCR)では、「光無線通信システムに関する調査研究会」を7年3月から開催し、光無線通信システムについての標準化方策、普及・振興等に関して調査研究を進めている。
 郵政省では、電気通信の健全な普及・発展及び振興を図る観点から、RCRに対し情報の提供等の支援を行うことと併せて、RCRでの調査研究結果をふまえ、ITUに対し光無線通信システムの標準化等に関する所要の寄与を行っていくこととしている。
 

(10) 電波環境保護の促進


 電波利用の拡大とともに、免許を取得せずに開設・運用する不法無線局や免許は受けているものの電波法に違反して運用している無線局が、電気通信業務、放送業務又は人命若しくは財産の保護に係る無線通信業務等の重要な無線通信等に妨害を与える事例や不要な電波による障害が多発している。
 このような状況から、多発する混信・妨害をなくし、信頼できる電波利用環境を実現するため、次のような施策を展開している。
  ア  電波監視施設の整備
 5年4月から施行された電波利用料制度による電波利用料を財源として、5年度から電波の監視及び規制並びに不法に開設された無線局の探査等を効率的・効果的に行うための電波監視施設を整備している(第2-2-4-9図参照) 。
  (ア)  遠隔方位測定設備
 遠隔方位測定設備は、地方電気通信監理局に設置されるセンタ局(注) 及びセンサ局(注) から構成され、不法な電波の発射地点を測定しセンタ局の地図上に表示する設備である。センサ局は5年度までに19局が整備されており、6年度は川崎市、横浜市、京都市及び福岡市に整備された。7年度は、神戸市及び千葉市においてあわせて5か所を整備する予定である。また、遠隔方位測定設備と衛星通信回線で接続し不法無線局を探索する不法無線局探索車(注) は、5年度までに3台を整備しており、6年度には新たに1台を整備した。7年度は1台を整備する予定である。
  (イ) 遠隔受信設備
 遠隔受信設備は、遠隔方位測定設備の電波監視区域を補完し、不法な電波の発射を確認する設備である。5年度までに、13か所に整備されており、6年度は、函館市、青森市、郡山市、前橋市、水戸市、福井市、徳島市、高知市、大分市、宮崎市及び那覇市に整備した。7年度以降は、引き続き、遠隔方位測定設備の整備が遅れる地域を対象に整備する予定である。
  (ウ) 短波監視施設
 短波監視施設は短波帯以下の周波数の電波の到来方向を測定する設備であり、現有設備の更改及びネットワーク化により電波監視機能を向上することとしており、6年度は神奈川県三浦市のセンタ局及び千葉県東金市のセンサ局の設備を整備した。7年度は、熊本県熊本市にセンタ局を、同県阿蘇町にセンサ局を整備する予定である。
  イ 不要電波問題に関する対策
 無線機器、電子機器等から放射される不要電波により、電子機器に与える不要電波障害が増加しており、不要電波の抑制、不要電波に対する妨害排除能力(イミュニティ)の向上が重要な課題になっている。
 電子機器等の製品からの妨害波等の規格、測定法については、国際無線障害特別委員会(CISPR:Comite International Special des Perturbations Radioelectriques )(注) において検討されており、6年10月に開催されたCISPR北京会議においては、既存製品の範ちゅうに属さない製品に対して適用する妨害波の共通規格案(注) の審議が行われ、特に「住宅環境とその他の環境における、許容値に従う装置の規格」に重点がおかれて審議された。また、情報技術装置のイミュニティに係る具体的な試験方法、1GH zを超える周波数の不要電波障害についての審議に着手した。
 国内では、CISPRの国際規格を基に電気通信技術審議会において妨害波等の国内規格の策定等を積極的に進めている。
 また、不要電波問題に関する協調を図ることを目的に関係省庁、関係業界団体、学識経験者等で構成する「不要電波問題対策協議会」を設置し、技術的検討、情報の収集、関係審議機関における審議の支援、不要電波問題に関する周知啓発活動を行っており、6年度は、電話機の放射イミュニティ評価に関する試験の試行を行った。
 

(11) 電波行政の情報化


 国民の電波利用の拡大・多様化に対応して無線局監理を効率化し、行政サービスの向上を図るとともに、我が国の行政の情報化を積極的に推進していくため、郵政省では、総合無線局監理システム(愛称:PARTNER)を活用した電波行政の情報化を進めることとしている。
 具体的には、同システムの活用により、無線局免許申請の審査事務等各種業務の効率化と迅速化を進めることに加え、今後、無線局免許の申請について、磁気ディスクを提出して行われるもの(FD申請)や、通信回線を経由して行われるもの(オンライン申請)にも対応し、利用者の利便向上を図ることとしている。FD申請については、平成8年度からの実施を予定している。さらに、データベースを基にして様々な行政情報の提供を行っていくこと等も検討している。
 なお、総合無線局監理システムは、無線局の急増に対処し、混信妨害処理、不法無線局等の排除等の迅速化、電波利用料徴収業務の効率化、周波数利用計画作成の円滑化等の無線局監理全体の効率化を図るために、無線局の周波数、空中線電力等の諸元をデータベース化するなど大型コンピュータを活用したシステムで、電波利用料財源により、5年度から3か年計画で、7年度末の運用開始を目途に構築することとしている。6年度は、5年度の基本設計等を受けて、引き続き、詳細設計とプログラム製造等の開発が行われた。
 

(12) 無線通信発明百周年記念行事


 世界初の無線通信の実験に成功し、無線通信サービスを事業として確立させたイタリア人、グリエルモ・マルコーニ(1874-1937)の功績は、今日の豊穣な情報社会をもたらしたといっても過言ではない。1995年(7年)は、このマルコーニの実験(1895年(明治28年))からちょうど100年目である。
 この記念すべき年に当たり、過去の無線通信の進歩を振り返るとともに今後の発展を考える契機とし、国民の無線通信への理解を広げていくことを目的として、郵政省は、無線通信に関連する団体・事業者、学識経験者とともに、「無線通信発明百周年記念行事実行委員会」を発足させた。本実行委員会は、記念シンポジウムや特別展の開催、記念論文の募集等、各種の記念行事を実施することとしている。


第2-2-4-2図 マイクロ波帯移動通信の利用イメージ図

第2-2-4-3図 ダイナミックチャネル割当技術及びダイナミックゾーン構成技術のイメージ図

第2-2-4-4図 マルチメディア移動体通信のイメージ図

第2-2-4-5図 高速ページャーシステムの利用イメージ図

第2-2-4-6図 ワイヤレスカードの利用イメージ図

第2-2-4-7図 N-STARを利用した国内移動体衛星通信サービスのイメージ図

第2-2-4-8図 GMDSSのイメージ図

第2-2-4-1図 電波監視施設のイメージ図 遠隔方位測定設備と不法無線局探索車
遠方方位測定設備のセンタ局 不法無線局探索車
 

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