平成7年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第2部 情報通信政策の動向

第8節 21世紀に向けた技術開発・標準化の推進


 1 情報通信の高度化・多様化を支える技術開発の促進


 

(1)  技術総括審議官の新設


 通信技術と放送技術の融合への対応、情報通信基盤高度化のための技術開発・標準化の推進など、部局をまたがる技術関係事務の増大に対処するため、大臣官房に郵政省の所掌事務のうち技術に関する重要事項の総合調整を行う局長級の「技術総括審議官」を7年度に新設することとしている。
 

(2)  情報通信分野における先端的技術の研究開発課題と推進方策


 我が国における情報通信のハードウェア技術は、一部は世界のトップレベルに達しているものの、我が国全体としての基礎研究や創造的研究への取組はいまだ十分とは言えない状況である。
 欧米先進諸国では、情報通信基盤の構築を目標に、情報通信を次世代の基本的戦略産業と位置づけ、国家的観点から先端的な技術開発を強化しようとしている。一方、我が国では、情報通信分野の技術開発で主要な役割を担ってきた民間部門においては、近年の景気低迷により研究開発費の削減、研究開発費を基礎研究から応用・開発研究へシフトするなどの傾向がみられる。
 このような状況において、今後我が国が情報通信基盤の高度化を通じて、安定かつ持続的な経済成長と豊かな国民生活の実現を図っていくためには、国際競争力の向上及び国際社会への貢献の観点を踏まえ、先端的技術の研究開発を我が国全体として強化していくことが重要である。
 このため、6年6月、情報通信分野における先端的技術の研究開発課題と推進方策について、電気通信技術審議会に諮問しており、7年5月頃に答申を受け、情報通信技術政策等に反映させることとしている。
 

(3)  情報通信技術に関する研究開発指針の一部改定


 郵政省では、我が国の情報通信技術に関する研究開発を効率的に推進するため、研究開発推進の基本的考え方、研究開発推進方策等を「情報通信技術に関する研究開発指針」として取りまとめ公表している。
 本指針については、昭和61年度に策定した後、技術動向、郵政省の新規施策等を踏まえ適宜改定してきたが、情報通信基盤整備やマルチメディア技術に関する関連審議会の答申を受けて6年8月一部改定を行った。主な改定点は、以下のとおりである。
  ア 電気通信審議会及び電気通信技術審議会の答申の反映
 電気通信審議会答申「21世紀の知的社会への改革に向けて--情報通信基盤整備プログラム--」(6年5月)、電気通信技術審議会答申「将来のマルチメディア情報通信技術の展望」(6年4月)を踏まえ、アプリケーションの開発・導入の促進のための各種パイロットプロジェクトに対する支援を行っていくこととした。また、21世紀の情報通信基盤の構築のために利用される基盤技術のうち、「超高速伝送技術」等の基礎的技術については、郵政省通信総合研究所においても積極的に取り組むこととした。
  イ 防災に関する研究開発の推進についての記述の追加
 内閣総理大臣決定「防災に関する研究開発基本計画」(5年12月改定)等において災害対策における情報通信の役割と研究開発の重要性が指摘されたことを踏まえ、防災に関する技術について研究開発を一層推進することとした。
  ウ 先導的研究開発の推進についての記述の追加
 5年度補正予算による通信・放送機構における先導的研究開発の充実に対応して、新規の研究開発(大規模双方向CATV(フルネットワーク)、広帯域デジタル無線通信システム、高度映像通信利用技術、立体ハイビジョン番組制作技術、身体障害者・高齢者用情報通信システム)を一層推進することとした。
 

(4)  デジタル映像技術開発の推進


 郵政省では、様々な映像メディアに共通して適用されるデジタル映像技術の体系化・規格の統合化の必要性、超高精細デジタル映像システム(UDTV)の開発の提言を内容とする5年1月の電気通信技術審議会の答申「21世紀を展望したデジタル映像技術の在り方について」を受けて、今後のマルチメディアの時代に対応して、通信・放送・蓄積メディアのみならず、印刷・医療・映画等の様々な分野における映像メディアに共通して適用できるデジタル映像技術の研究開発を推進している。
 具体的な施策としては、以下のものがある。
[1] デジタル映像技術開発に向けた情報交流の促進
  5年2月に設立された「高度映像技術開発推進会議(AIM:Advanced Image Technology )」では、様々な映像関連分野の参加により、メディア融合時代における次世代映像システムの研究及び開発推進を行うとともに、学識経験者等を講師とする懇談会等を開催している。6年10月には、電子情報通信学会と共同で「デジタル映像国際シンポジウム’94」を開催し、国内外を通じた幅広い情報交流を実施している。
[2] 国際標準化活動への寄与
  映像のデジタル化を図るに当たっては、通信・放送・蓄積メディアにおける統一的なデジタル圧縮技術が必要不可欠となることから、現在、ITUは国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)の合同組織である情報処理関連国際標準化技術会議(JTC1)との共同で、H.262/MPEG-2というデジタル符号圧縮技術の国際標準化を進め、7年中に勧告化される予定である。
  郵政省では、H.262の相互運用性や符号化特性を評価するための確認実験を、日本ビクター(株)、日本テレビ放送網(株)、NHKと共同で実施している。現行テレビジョンレベルの実験を6年2月及び6月に実施し、6年12月から、HDTVレベルの実験を行っている。
  また、ITU-Rにおいては、郵政省が前記答申の概要を提出したことを契機として、新研究課題「超高精細映像」が5年11月の無線通信総会において採択された。
  郵政省では、6年6月に開催された作業部会において、我が国における超高精細映像の研究状況について寄与文書を提出する等、新研究課題の解決に向けて積極的に取り組んでおり、新勧告案が作成されている。
[3] 超高精細映像の広帯域ISDN伝送実験
  今後、超高精細映像を広帯域ISDNで伝送することにより、遠隔・医療・電子美術館・電子図書館・電子博物館等といった分野において、より高度なサービスが提供される可能性があるが、高度な映像通信の利用技術を確立するためには、具体的に実験を実施し、機能や画質等を評価する必要がある。
  そこで郵政省では、5年度第三次補正予算により通信・放送機構に出資を行い、同機構では、超高精細映像の広帯域ISDN伝送実験を行う上で必要な設備を整備した。7年度からは各種のサービスを想定したフィールドトライアルを含む各種実験を行うこととしている。
 さらに、郵政省では前述のほか、6年5月の電気通信審議会の答申「21世紀の知的社会への改革に向けて--情報通信基盤プログラム--」に基づくアプリケーション実用化のための汎用的、基礎的な技術の研究開発の一環として、超高精細映像技術の研究開発を推進している。具体的には、郵政省通信総合研究所において、7年度から、高度情報資源伝送蓄積技術の研究として、超高精細映像の生成・圧縮・蓄積・検索技術に関する研究を行うこととしている。
 

(5)  光ケーブルテレビシステムの開発調査


 魅力ある地域のメディアとして普及・発展してきたケーブルテレビは、地域情報格差の是正に大きく貢献するとともに、多様化・高度化する国民ニーズに応えることができるものである。今後は、さらにケーブルテレビが発展・普及するために、好きなときに見たい番組を見ることができるビデオ・オン・デマンドやゲームソフト配信等の各種新サービスの提供など、情報メディアとしての有用性を一層高めることが必要である。
 しかし、これらのニーズにこたえるためには、従来のシステムでは伝送容量や品質の確保等に限界があるので、大幅な多チャンネル化と伝送品質、信頼性の向上が図れる光伝送技術を用いた光ケーブルテレビシステムの実現が期待されている。
 このため、郵政省では、今後の光関連技術の開発動向を踏まえながら、光ケーブルテレビシステムに関して、技術的な検討を行い、導入の目標とすべき望ましい標準的なモデルシステムを確立することを目的として、4年度から3年の予定で「光ケーブルテレビシステムに関する調査研究会」を開催し、検討を進めてきた。
 4年度は、光ケーブルシステムの構築に必要な要素技術及びその動向等について調査研究を行い研究書を取りまとめるとともに、導入の目標となる望ましい標準的なモデルシステムの基本設計・詳細設計の対象となるシステムの素案を作成した。
 5年度は、この素案に基づき光/同軸ハイブリットケーブルテレビシステム及びデマンドアクセス光ケーブルテレビシステムの2つの標準モデルシステムについて基本設計・詳細設計を行い、併せて現行 450MH z全同軸ケーブルシステムのグレードアップの検討を行うとともに、将来システムの概念設計を行った。
 6年度は、本調査研究会の最終年度として、上記2つのモデルシステムについて、システムの総合伝送性能と、光系及び同軸系のそれぞれの主要機器の性能に関する実証試験を行い、その結果をもとに、標準システムに必要な技術的条件や今後取り組むべき技術的課題を取りまとめた。
 

(6)  電気通信フロンティア研究開発の推進


 郵政省では、電気通信の高度化のための基礎的・先端的な研究開発として、郵政省通信総合研究所を中心に、産・学・官の研究者の連携により、電気通信フロンティア研究開発を昭和63年度から行っている。
 6年度においては、前年度に引き続き、「超高速通信技術」、「バイオ・知的通信技術」及び「高機能ネットワーク技術」の3分野について8課題の研究を行うとともに、若手研究者による独創的な研究テーマの発掘等を目的とした公募研究を行った。
 また、外国の研究者を招へいして国際フォーラムを開催する等、国際交流の推進を図っている。
 

(7)  宇宙通信技術開発の推進


  ア 技術試験衛星VI型(ETS-VI)
 技術試験衛星VI型(ETS-VI)は、今後の需要増大に対応できる2トン級の大型衛星に必要となる技術を確立するとともに、今後の衛星通信で必要となる固定衛星通信技術及び移動体衛星通信技術並びに衛星間の通信を行うための衛星間通信技術の開発及び実験を行うことを目的とした衛星である。
 ETS-VIは、6年8月に種子島宇宙センターからH-IIロケット試験機2号機により打ち上げられたが、アポジエンジンの燃料を供給するための推薬弁の開閉の不具合により同エンジンの噴射が正常に実施できず、静止化が断念され、だ円軌道を周回することとなった。
 郵政省では、周回軌道における衛星の最大限の活用方策を検討するため、郵政省、宇宙開発事業団及びNTTからなる「ETS-VI対策連絡会」を開催し、衛星の状況の分析、通信実験の可能性の検討等を実施した。
 この検討を踏まえ、9月「技術試験衛星VI型(ETS-VI)実験推進会議」を開催し、ETS-VIを活用する通信実験計画を取りまとめた。この実験計画に基づき、郵政省通信総合研究所及びNTTにおいて各種通信実験が実施されている。
  イ 通信放送技術衛星(COMETS)
 我が国の社会経済の発展に伴い、宇宙通信に対するニーズは今後一層増大、かつ高度化・多様化していくものと考えられる。そこで郵政省では、科学技術庁及び宇宙開発事業団と協力して、Kaバンド(20〜30GH z帯)及びミリ波による高度移動体衛星通信技術(小型通信機によるデータ通信、テレビ電話等)、高度衛星放送技術(広帯域HDTV)、衛星間通信技術、大型静止衛星の高性能化技術等の開発及び実験・実証を行うことを目的とした通信放送技術衛星(COMETS)を8年度に打ち上げることを目標に、2年度から搭載用中継器等の開発を進めている。郵政省通信総合研究所においては、高度移動体衛星通信用搭載中継器と高度衛星放送用搭載中継器受信部の開発を3年度から5年度まで行った。また、6年度は、4年度から開始した地上実験設備及び主局実験設備の研究開発を継続するとともに、宇宙開発事業団に機器を貸出し、搭載機器の電気性能確認試験に対する支援及び試験結果の評価を行った。7年度は、地上実験設備及び主局実験設備の研究開発を継続するとともに、宇宙開発事業団が行う搭載機器のプロトフライト試験に対する支援及び試験結果の評価を行うこととしている。
 さらに、COMETSの通信・放送実験に関して、有効かつ効率的に実験を推進し、その成果の充実を図るために、実験の内容、推進方策等を検討することを目的とし、7年3月には、「COMETS通信・放送実験推進会議」が開催され、8年8月頃に結果を取りまとめることとしている。
  ウ 次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究開発
 21世紀初頭においては、地上系の通信システムが使えないような山奥であっても利用できる携帯電話、走行中の自動車等移動体においてもCD並の高品質な音声放送が安定的に受信できる移動体音声放送等の実現が期待されている。このため、郵政省では、21世紀初頭に実現が予想されるSバンド移動体衛星通信システム、Sバンド移動体デジタル音声衛星放送システムに必要となる衛星技術の研究開発及び宇宙における実験・実証を目的とした次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究に4年度から着手し、概念設計及び設計検討を行っている。6年度は、その成果を基にミッション機器の予備設計及び性能確認用実験モデルの製作を開始した。7年度は、引き続きミッション機器の性能確認用実験モデルの製作を行うこととしている。
 

(8)  通信・放送機構における研究開発


  ア 高度三次元画像情報の通信技術に関する研究開発
 21世紀の高度情報通信社会においては、テレビなどの画像の伝送に現在の二次元画像ではなく、より臨場感のある三次元画像が求められる。三次元画像情報通信技術により、遠隔地への正確な情報の伝達が可能となり、産業・医療・教育等の分野での利用が期待される。
 この三次元画像通信技術の確立を図ることを目的として、4年10月から、通信・放送機構において「高度三次元画像情報の通信技術に関する研究開発」を行っている。
 これは、異なった角度から対象物を撮像した複数の二次元画像情報を、高度に圧縮して伝送した後、ホログラフィ技術を用い、元の対象物の三次元動画像をリアルタイムで形成・表示する技術を実現すること等により、本格的な三次元立体動画像を伝送・表示することを可能とするための研究開発である。
 6年度においては、これまでに構築した小規模システムの実験を引き続き進めるとともに、この成果をもとに立体動画像の画質の向上、表示サイズの拡大やホログラム画像情報処理の高速化などを目指したシステムの開発を進めている(第2-2-8-1図参照) 。
  イ 高度映像通信利用技術に関する研究開発
 広帯域ISDNは、音声だけではなく、高精細・高品質の映像の伝送も可能であり、現在の電話網に代わる21世紀の情報通信基盤として早期普及が期待されている。
 郵政省では、5年度第三次補正予算により、通信・放送機構に対し出資を行い、同機構では、6年度に超高精細映像伝送技術等映像系のアプリケーションの研究開発を行う上で必要な施設を整備し、各種映像通信サービスの開発に不可欠な共通的、基盤的技術の研究開発を行った。
  ウ 広帯域デジタル無線通信システムの研究開発
 現在のデジタル移動通信システムは、伝送容量が小さいため、音声伝送が主体である。今後、携帯型パソコン、テレビ電話等の普及により、移動通信系においても、有線系と整合性があり、画像や高速データ伝送等が可能な広帯域デジタル移動通信システムの研究開発が重要になってくる。一方、固定通信網のアクセス系においても、天候等の外部条件により回線品質が影響を受けやすい等の問題点があり、デジタル無線アクセスシステムの研究開発が必要である。
 そこで郵政省では、5年度の第三次補正予算により、通信・放送機構に対し出資を行い、同機構では、6年度から画像や高速データ等の大容量情報の伝送が可能となる広帯域デジタル移動通信システム及び家庭・企業等のユーザーと最寄りの基地局及び中継局とを光ファイバと同等の大容量回線で接続するデジタル無線アクセスシステムと画像や高速データ等の大容量情報の伝送が可能となる広帯域デジタル無線アクセスシステムの研究開発を開始した。
  エ 立体ハイビジョン番組制作技術の研究開発
 テレビジョン放送は、高画質化・高機能化等の方向で高度化が進展しているが、将来の放送として立体ハイビジョン放送への期待が高まっている。そこで、立体ハイビジョン放送を実現するために不可欠な立体ハイビジョン番組制作技術の研究開発を行うための施設を整備するために、5年度の第三次補正予算により、通信・放送機構に出資を行った。
 本研究開発において、通信・放送機構では、6年度に立体ハイビジョン番組の撮像・記録・編集・処理等に必要な設備に関する研究開発を実施するとともに、立体ハイビジョン映像に特有な諸問題の抽出・発生原因の究明、解決方策の研究等を行った。
  オ 身体障害者・高齢者用情報通信システムの研究開発
 21世紀の高齢化社会に対応した情報通信基盤の構築を円滑に遂行し、身体障害者や高齢者が便利に安心して暮らせる生活環境を実現するため、6年度から身体障害者・高齢者のための情報通信システムの研究・開発が開始された。
 具体的には、通信・放送機構が郵政省の出資を受け、外出が困難な寝たきり老人等が家庭にいながらにして、健康診断や介護支援を受けることを可能とする「遠隔健康相談システム」、聴覚等が不自由な高齢者等がデジタル補聴技術等により健常者と同様に、自由に高度なコミュニケーションを可能にするシステムに、用途に応じて、徘徊老人等の位置を特定する機能、疾患のある高齢者等が緊急時に屋外からセンター等に通報する機能を付加する「高齢者通信・広域緊急通報・位置探査システム」等の研究・開発を行っている(第2-2-8-2図参照) 。
  カ 大規模双方向CATV(フルネットワーク)に関する研究開発
 ケーブルテレビ網を利用して、高度通信を含めたサービスを提供するフルネットワークを実現することによりケーブルテレビ事業の展開を図るための施設を通信・放送機構に整備する事業が、5年度の第三次補正予算で認められた。
 6年11月に、愛知県岡崎市に通信・放送機構岡崎リサーチセンターが開業し、同センターにおいて、高品位動画像圧縮符号化技術、CATV網高度利用技術等に関する研究開発が行われている。
 

(9)  超高速ネットワーク技術の研究開発


 通信ネットワーク及びスーパーコンピュータ等の情報処理装置は、それぞれ高速化・広域化・分散化等が進展している。これらを有機的に連携することにより、従来は不可能だった大量のデータや画像などの情報を扱う様々なアプリケーションの提供が可能となる。
 このため、6年3月に基盤技術研究促進センターと民間企業の出資により、「(株)超高速ネットワーク・コンピュータ技術研究所」が設立された。研究期間は、6年3月から11年3月までで、統合化技術を[1]ネットワークアーキテクチャの研究、[2]アクセス技術の研究、[3]情報処理・通信制御統合化技術の研究、[4]応用化技術の研究、の4つのサブテーマに分けて研究を行っている。
 飛躍的に能力が向上しているスーパーコンピュータ等を高度化する通信ネットワークによって結合することにより、多地点データの超高速・分散・並列処理が可能となり、従来は数日を要した処理のリアルタイム化が可能となる。
 

(10) 知能映像情報通信の基礎研究


 現在の通信は、文字言語、音声言語中心のコミュニケーションに片寄っており、人間が対面して行う豊かなイメージ伝達能力に欠ける部分があり、相互理解に限界がある。
 このため、映像を中心としたマルチメディア情報を利用して人間の感覚に訴える新しいコミュニケーション手法の研究を行うことにより、人間同志の新しいコミュニケーション手法を創出し、本格的なマルチメディア時代の基盤技術を確立するための知能映像情報通信の基礎研究を行うことを目的とした「(株)エイ・ティ・アール知能映像通信研究所」が、7年3月に基盤技術研究促進センター及び民間企業の出資により設立された。
 研究期間は、7年3月から14年2月までの7年間で、次の3つのサブテーマに関する研究を行っている。
[1] コミュニケーション環境生成技術
  三次元映像や三次元音場の情報を、ありのままに伝達する技術、さらには人間が理解しやすいように強調や合成を加えて伝達・表示する技術等の確立を図る。
[2] コミュニケーション支援技術
  人間の持つイメージを三次元映像・音で表現してコミュニケーションに用いる技術等の確立を図る。
[3] コミュニケーションの人間科学
  各種の映像や音と人間の感覚・行動との関係を明確にするなどの研究を行う。
 このような通信手段が実現すると、遠隔地の人々が一堂に会しているかのように話し合えたり、コンピュータが作りだした人間との対話が可能な仮想的人格を本人の代理人として会議に出席させることにより、不在の人を交えた仮想的会議ができたりするなど、本来の通信が目指していた時間・距離を克服したコミュニケーションが可能となる。さらに、文化の異なる外国人や障害のある人の間でも映像情報や音声情報を用いて相互理解を促進できるなど、年齢、文化、言語を超えた新しいコミュニケーションを創出できる。
 

(11) 郵便システムの技術開発推進


 郵政省郵政研究所では、21世紀の郵便システムを目指した技術開発を促進するために、本省関連部門との密接な連携を保ちつつ、郵便処理の自動化のための技術開発及び郵政事業高度化のための情報通信に関する技術開発を行っている。6年度では主として以下のような研究を行った。
[1] 3年度から文字認識技術の調査、高度化を目指し文字認識技術コンテストを実施してきたが、6年度はそれらの結果の分析を進めるとともに、そこで使用した郵便番号画像をCD-ROMに収録し手書き数字データベース「IPTP CDROM1」として広く内外の研究機関に提供した。
  また、複数の文字認識アルゴリズム(注) を組み合わせることによる認識精度向上の研究を継続して実施した。
[2] 5年度に続き、配達準備作業の最終段階である道順組立作業(郵便物を配達順に並べ替える作業)の自動化に関する研究を行っている。研究内容としては、郵便物のあて名情報のバーコード化及びこれに基づく道順組立機については小型で操作性の高い、完全に自動化した道順組立機を目指し、自動再供給機構を備えた道順組立機のファンクションモデルの試作を行った。
[3] 郵便業務における配達区及び配達ルートの決定、区分処理方法や輸送ネットワークの策定等様々な意思決定を熟練者の知識・経験を生かしつつ、より迅速に行うために、6年度からOR(注) 及びAI(注) 手法を用いた意思決定支援システムの研究に着手した。
[4] 郵便局の窓口事務処理の抜本的な効率化と窓口サービスの迅速化等お客様サービスの一層の向上を図るために、郵便窓口のインテリジェント化を進めていくことが必要である。そのためには、窓口事務の統合化・情報システム化を研究し、郵便窓口事務処理システムの開発を行うとともに、時間外サービスにも対応できるようなサービス機器の研究を行う必要がある。
  そこで、6年8月から「インテリジェント窓口に関する研究会」を開催し、郵便窓口のインテリジェント化について研究を開始した。


非線形光学結晶を用いた第2高調波の発生

技術試験衛星<6>型(ETSー<6>)打上げ(写真提供:宇宙開発事業団)

通信放送技術衛星(COMETS)の想像図(写真提供:宇宙開発事業団)

次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の概念図

第2-2-8-1図 高度三次元画像情報の通信のイメージ図

遠隔健康相談システムの実験模様(写真提供:すこやかファミリー編集部)

第2-2-8-2図 遠隔健康相談システム及び高齢者通信・広域緊急通報・位置探査システムの概念図

IPTP CDROM1
 

7 通信白書のCD-ROM化 に戻る 2 標準化活動の一層の推進 に進む