平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

2 標準化活動の一層の推進

 

(1)  標準化に対する取組


 通信を行うためには、相互に接続できることが必要であり、不特定多数のユーザー間で円滑な通信を行うためには、端末及びシステム相互間の通信方式等の標準化が不可欠である。電気通信に関する標準化は、国際的には主にITUで行っており、これを受けて国内の標準化が行われている。
  ア 国際標準化活動
 電気通信に関する国際標準化は、主としてITUのITU-T及びITU-Rで行われている。
 郵政省では、ITUの標準化活動に対して、国としての統一的な対応等を図るため、電気通信技術審議会における審議を通じて積極的に寄与している。
 イ 国内標準化活動
 我が国における電気通信の国内標準化に対する取組は以下のとおりである。
[1] 郵政大臣の諮問機関である電気通信技術審議会は、ITUにおける国際標準化活動に適切かつ効率的に対応するため、無線通信委員会及び電気通信標準化委員会を設置し、我が国の主張又は意見を取りまとめるとともに、国際標準化活動への寄与を行っている。
  無線通信委員会は、ITU-R内に設置された無線通信総会及び無線通信研究委員会の活動のうち、技術に関する事項についての我が国の寄与及び対処について審議を行っている。
  電気通信標準化委員会は、ITU-Tの活動のうち、技術に関する事項についての我が国の寄与及び対処について審議を行っている。
[2] また、電気通信利用の高度化・多様化、新システムの導入・普及に伴う通信方式の統一に対するニーズに対応するため、電気通信技術審議会に推奨通信方式委員会を設置し、望ましい標準通信方式として推奨通信方式(JUST: Japanese Unified  Standards for Telecommunications)を制定している。
[3] 高度通信システム相互接続(HATS:Harmonization of Advanced Telecommunication Systems )推進会議を開催し、高度通信システムに関する相互接続性の確保に向け、活動を行っている。
[4] 民間の機関としては、電気通信全般に関する標準化と標準の普及を行う(社)電信電話技術委員会(TTC)、電波利用システムの標準規格を作成し普及することを目的とした(財)電波システム開発センター(RCR)、放送技術に関する標準規格の作成等を行う放送技術開発協議会(BTA)が活動を行っている。
[5] OSI(Open Systems Interconnection:開放型システム間相互接続)(注) 対応装置等の国際標準に準拠する端末及びシステムに対する各種支援策等を推進している。
  ITUの標準化活動に対して、我が国では、電気通信技術審議会の成果を一層活用し、民間標準化機関との連携を強化するとともに国際標準化活動への参加を強化している(第2-2-8-3図参照) 。
 

(2)  電気通信技術審議会標準化政策部会の審議再開


 電気通信技術審議会標準化政策部会は、6年6月、「高度情報社会を展望した電気通信の標準化に関する基本方策について」(2年5月諮問)の審議を再開している。
 同諮問に対しては、3年3月、「望ましい標準化推進方策、標準化ガイドライン等」が一部答申されているが、近年の標準化活動をとりまく状況の大きな変化に対応し、21世紀の情報通信基盤構築等を念頭においた標準化推進方策を取りまとめるため審議を再開したものである。
 今回の審議においては、[1]情報通信基盤整備のための標準化の在り方、[2]マルチメディア時代の標準化の在り方、[3]ITUにおける組織改革と標準化活動への国際的対応、を重点項目とし、中長期的な視点から審議を行っている。
 電気通信技術審議会は、電気通信の標準化の在り方及び中長期的な標準化ビジョンとガイドライン並びにこれらに関する諸問題について、[1]中長期的な標準化計画(標準化ガイドライン)、[2]国際標準策定における我が国の寄与の在り方、[3]国内の標準化体制の在り方、について7年5月頃答申(一部答申)を行う予定である。
 

(3)  OSIシステムの国内への普及促進


 4年度行政改革大綱において、国の行政機関が情報システムを整備する場合には、ITU-T勧告またはISO規格に基づくOSIシステムを導入するよう提言された。郵政省としてもTTC標準を実装する製品が対象となるよう、TTCをITU-T勧告等に基づく国内標準を作成する機関として告示した。
 また、民間におけるOSI製品の導入促進を図るため、低利融資や税制上の優遇措置を講じている。
 

(4)  相互接続性確保の推進


 電気通信網の高度化・多様化、端末の高機能化に伴い、国際標準・国内標準に基づいて開発された端末・システムであっても、メーカーが異なると、標準に対する解釈上の問題等により、相互に接続できない場合があり、標準に基づいて開発されたシステムの相互接続性を確認する必要性が高まっている。そこで、これに対処するためユーザー、メーカー、事業者等の参加により「HATS推進会議」を開催し、その下に6分科会(基本接続、ファクシミリ、PBX(注) 、LAN間接続、コンピュータ・ターミナル、テレビ電話・会議)を設けて問題解決に向け取り組んでいる。
 相互接続試験では、ISDNを介して通信を行うために開発された製品またはOSIの考え方に基づいて開発された製品であるISDN/OSI製品間の相互接続試験を実施している。その結果、相互接続性が確保された通信機器(G4ファクシミリ、デジタルテレビ電話・会議装置等)には届出に基づきTTCマークが表示されている。
 また、国際的にISDNサービスの円滑な相互接続性の確保を目的として、EU及び韓国との間でISDNに関する相互接続実験が実施されている。このほかにも米国及び欧州の民間団体との間で、テレビ会議システムの相互接続実験を行うべく調整を始めており、国内におけるHATS推進会議の活動成果を踏まえ、国際的な相互接続性確保に取り組んでいる。
 

(5)  アジア・太平洋地域における標準化の推進


 今後21世紀に向け、アジア・太平洋地域の社会経済の発展において、電気通信ネットワークの円滑かつ効率的な構築は必要不可欠である。特に、国際・国内標準化活動を通じた相互接続性の確保、特定のメーカーに依存しないシステムの構築(マルチベンダ化)等が必要であるが、アジア・太平洋諸国単独では困難で,技術協力が必要であり、標準化活動のレベルアップが必要である。
 このため、[1]アジア・太平洋地域における標準化活動への技術協力ニーズの発掘、[2]わが国における技術協力体制の確立、[3]アジア・太平洋地域における相互協力の枠組みの提示を目標に、4年10月から6年3月まで「アジア・太平洋地域における標準化の推進に関する調査研究会」が開催され、標準化に関する情報の共有・活用、各国の標準化知識の向上と標準化体制の強化等を図るための国際共同研究の実施、標準化の専門家育成が必要であるとの結論を得ている。
 具体的には、[1]APT研究委員会における研究の実施、[2]APT研修(標準化コース)の実施、[3]ISDN国際共同研究会(AIC:Asian ISDN Council)での活動、を行っている。


第2-2-8-3図 電気通信の標準化体制
 

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