平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

2 ブロードバンド・アクセスの普及

アクセス回線の大容量化への動きが本格化

1)ブロードバンド・アクセス・ネットワークの定義と意義
 ブロードバンド・アクセス・ネットワークの整備は、インターネット利用の高度化を図り、社会経済構造の変化を促進し、「高度情報通信ネットワーク社会」への移行を実現する観点から、ネットワーク基盤整備において最も重要な課題として位置付けられている。
 ブロードバンド・アクセス・ネットワークについては明確な定義はないが、ここでは、「高速インターネットアクセス網」及び「超高速インターネットアクセス網」を指すものとする。「高速インターネットアクセス網」とは、音楽データ等をスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいい、「超高速インターネットアクセス網」とは、映画等の大容量映像データでもスムーズにダウンロードできるインターネット網のことをいう(e-Japan戦略より)。現在実用化されているブロードバンド・アクセス・ネットワークとしては、DSL、ケーブルインターネット(「高速インターネットアクセス網」に該当)から、例えば10〜100Mbps以上といった回線容量を有するFTTH(Fiber to the Home : 各家庭まで光ファイバを敷設した超高速回線、「超高速インターネットアクセス網」に該当)まで様々なものがある。これらの回線を用いると、動画像をはじめとする大容量のコンテンツであっても一般家庭で手軽に利用することができ、例えばFTTHにより22Mbpsを超える伝送速度が実現すれば、各家庭においてリアルタイムで高精細度テレビの映像データを受信することも可能となる(図表1))。また、音楽用CD1枚分の情報量をダウンロードする場合、ISDN(64kbps)では約2時間半を要するが、ケーブル(1.5Mbps)では約6分、FTTH(100Mbps)では約6秒でダウンロードが可能となる(図表2))。このため、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及により、インターネットを流通するコンテンツの種類が飛躍的に増加するとともに、インターネット利用が、現在の電子メールやホームページ閲覧などテキストデータを中心としたものから、動画像や音楽、ソフトウェアダウンロードなど、より高度な利用に拡大することが期待されている。

2)ブロードバンド・アクセス・ネットワークの種類・特徴
 アクセス・ネットワークは、特定地点において高速なインターネット接続サービスを受ける固定系ネットワークと、移動しながらインターネット接続が可能な移動系ネットワークに大別される(図表3))。
 この中で、ブロードバンド・アクセス・ネットワークに該当するものとしては、xDSL(各種DSL)、ケーブルインターネット、FWA(Fixed Wireless Access:加入者系無線アクセス)、IMT-2000、FTTH、第4世代移動通信システム(研究開発中)が挙げられる(図表4))。これらのアクセス・ネットワークについて、インターネット利用者は、それぞれの利用目的や居住地域におけるサービスの提供状況等により、利用するネットワークを選択している。
 固定系については、今後、超高速インターネットアクセス網の整備を行うためには加入者系光ファイバ網の整備が必要であり、総務省では政府目標である2005年の全国整備に向け整備支援を行っているところである。平成11年度末現在における光ファイバ網整備率は、全国平均で約36%とこれまでのところ着実に整備が進捗している(図表5))が、都市規模別の整備水準を見た場合、地方においては総体的に整備が遅れ、都市部と地方における格差が生じている(図表6))。一方、光ファイバ網を活用したサービスが本格化するまでの間、既存のアナログ回線設備やケーブルテレビ網等を活用したブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及が進むものと考えられる。なお、FTTHサービスについては、東・西NTTは平成12年12月より試験提供していた10Mbpsのサービスを平成13年7月には実用化する予定としているほか、有線ブロードバンドネットワークス社は、既に同年3月より首都圏で100Mbpsの伝送速度のサービスを開始している。
 また、移動系については、平成13年10月に本格サービス開始が予定されているIMT-2000を普及させるとともに、下り回線が最大384kbpsとなっている現在の伝送速度について、より高速なサービスとしていくことが期待されている。
 
3)ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及動向
 ブロードバンド・アクセス・ネットワークについては、DSL、ケーブルインターネットサービスの普及が急速に進展していることが特徴である。特に、DSLについては、平成11年11月のサービス開始から平成13年3月末までに70,655加入、同年4月には11万加入を超えるなど急速な増加が進んでいる。また、ケーブルインターネットについても、平成11年末の15.4万加入から平成12年末までの1年間で4倍強の62.5万加入に、平成13年3月末には78.4万加入に達したところである(図表7))。平成13年3月にはFTTHサービスが開始されるなど、いわば「ブロードバンド元年」ともいうべき状況となっている。
 また、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの今後の普及について、総務省が開催している「21世紀における情報通信ネットワーク整備に関する懇談会」において行った試算の一例では、DSLは平成13年にはケーブルテレビを上回り、平成15年(2003年)には843万加入世帯に達するものと試算している。平成15年以降は、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの比重がDSLから光ファイバ(FTTH)に移行、平成17年(2005年)には、ケーブルインターネットやFWAと併せて、2,494万加入世帯がブロードバンド・アクセス・ネットワークを利用していると試算している(注)(図表8))。

図表1) 回線容量と利用可能なコンテンツ(例)
アクセス回線容量と利用可能なコンテンツ(例)
図表2) 各種コンテンツのダウンロード時間(例)
アクセス回線容量別にみた各種コンテンツのダウンロード時間(例)
図表3) アクセス・ネットワークの種類
アクセス・ネットワークの種類
図表4) 主なブロードバンド・アクセス・ネットワークの特徴
主なブロードバンド・アクセス・ネットワークの特徴
図表5) 加入者系光ファイバ網の整備状況
加入者系光ファイバ網の整備状況
図表6) 都市規模別光ファイバ網整備状況
都市規模別光ファイバ網整備状況 平成11年度末現在の我が国の光ファイバ網整備状況は、政令指定都市及び県庁所在地級都市では、カバー率が56パーセント、特に主要エリアとして加入者の50パーセント以上が事業所であるエリアに限ってみると93パーセントに達している。一方、人口が10万人以上の都市等では31パーセント、その他の地域では14パーセントとなっており、全国平均の36パーセントを下回っている。
図表7) ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及動向(加入者数)
ブロードバンド・ネットワークの普及動向(加入者数)
図表8) ブロードバンド・ネットワークの加入世帯数の推移(試算)
将来のブロードバンド・ネットワークの加入世帯数の推移(試算)


(注)ただし、本試算は、2005年までに全国整備が完了する等の前提で行われており、また各ネットワークで実現される通信速度についても今後の技術進歩により変わりうる等、様々な要因により変動するものである。

 


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