平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

9 デジタル放送

BSデジタル放送のサービス開始など放送のデジタル化が大きく進展

 我が国のテレビ・ラジオ放送は、その長い歴史の中で着実に進歩を遂げ、現在では、生活の中の基本的なメディアとして、我が国の文化の発展、経済の活性化に貢献してきた。しかし、近年の情報通信分野における技術革新を背景に、従来、基本的にはアナログ技術によってきた放送は、デジタル化という非常に大きな変革期を迎えており、情報通信メディアとしての飛躍的な発展を遂げようとしている。
 放送のデジタル化の意義としては、具体的には、1)映像・音声の高品質化や多チャンネル化、2)データ放送等放送サービスの高度化やインターネット等の通信網との連携サービスの実現、3)高齢者・障害者にやさしいサービスが充実などのメリットが挙げられる。
 我が国初のデジタル放送としては、平成8年から通信衛星(CS:Communication Satellite)を用いたCSデジタル放送がサービス開始されたほか、平成10年にはケーブルテレビでもデジタル放送の導入が始まっている。
 そして、平成12年12月1日に、放送衛星(BS:Broadcasting Satellite)によるBSデジタル放送のサービスが開始され、今後、データ放送等多彩な機能を持つデジタル放送の本格的な普及が進むものと期待される。国民に広く親しまれている地上放送に関しては、テレビジョン放送のデジタル化について、関東・近畿・中京の三大広域圏は平成15年(2003年)末まで、その他の地域は平成18年(2006年)末までの放送開始を目指して、使用する放送の周波数の検討等を進めているほか、これにともなう従来のアナログ放送の周波数変更(いわゆる「アナアナ変更」)に必要な経費を国で負担するため、「電波法の一部を改正する法律案」が第151回通常国会に提出され、成立した。また、地上デジタル音声放送については、当面、東京・大阪において、需要の把握、放送サービスの開発を目的とした実用化試験局による試験放送の実施を予定している。ケーブルテレビについては、2010年にはほぼ全てのケーブルテレビがフルデジタル化していることを目標としている(図表1))。

1)BSデジタル放送の展開状況
 BSデジタル放送は、平成12年9月の試験放送開始後、シドニーオリンピックの中継などを経て同年12月1日から放送サービスが開始された。
 同放送サービスでは、デジタル化により、従来のアナログ放送にはない多彩なサービスが可能となっている。例えば、デジタル放送においてはデータ放送が大きな特徴の一つであるが、BSデジタル放送では最新ニュース、天気予報、交通情報、株式情報など多種多様な情報とともに、双方向機能を活用したショッピングやバンキングサービス等が行われている(図表2))。
 また、1放送局による多チャンネル編成も可能であることから、デジタルハイビジョンで放送されているチャンネルを最大3つに分割して、標準画質によるそれぞれ別の番組を同時放送する「マルチチャンネル」や、野球中継等が延長になった場合に次に放送予定の番組と平行して放送する「臨時編成チャンネル」など、これまでにない柔軟な番組作りなどが可能となっている。
 平成12年6月以降、各テレビメーカーによりデジタルハイビジョン対応のBSデジタル放送受信機が、開発・販売されており、平成13年4月現在でBSデジタル・チューナー内蔵型のBSデジタル放送対応テレビが20.3万台、BS電波の受信機能を持ち、従来のテレビに接続して視聴するボックスタイプのBSデジタル・チューナーが40.2万台、出荷されている(図表3))。
 また、普及促進活動等を行う(社)BSデジタル放送推進協会の発足や、公共機関等100か所でのBSデジタル放送受信機の設置など、「放送開始後1000日で1000万世帯」の目標に向けた様々な取組が展開されているところである。

2)東経110度CSデジタル放送の導入に向けた取組
 CSデジタル放送では、現在、地球から約36,000km上空(静止軌道)に浮かぶ3機の通信衛星を利用して放送サービスを実施しているが、これらに加え、国際電気通信連合(ITU)における衛星電波に関する国際調整の結果、我が国による新たな通信衛星の運用が認められた。
 この衛星は東経110度の静止軌道上で運用されることとなるが、これはBSデジタル放送で使用されている衛星と同じ軌道位置であることから、BSデジタル放送との受信機やアンテナ等の共用化が可能となるほか、BSデジタル放送サービスとのシームレスな番組編成や連携サービス等の実現が期待されている。また平成13年3月には、蓄積型データ放送サービスやADSL、光ファイバ等の高速大容量なインターネット回線接続への対応を可能とするBS/CSデジタル放送共用受信機の民間標準規格が、(社)電波産業会において定められた。
 東経110度CSデジタル放送については、放送電波の送出・管理等を行う受託放送事業者に宇宙通信(株)とジェイサット(株)の2社が、また番組の制作等を行う委託放送事業者には平成12年12月に18社が認定され、平成13年末以降のサービス開始に向け準備が進められている。

図表1) 放送のデジタル化のスケジュール
放送のデジタル化のスケジュール
図表2) BSデジタル放送におけるデータ・サービスのイメージ
BSデジタル放送におけるデータ放送のイメージ
図表3) BSデジタル放送受信機の出荷台数(累計)
BSデジタル放送受信機の出荷台数(累計)

 


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