平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

7 コンテンツの多様化・大容量化

ブロードバンドが普及することがコンテンツビジネス拡大の前提

 これまでみてきたように、インターネットは現在急速な普及が進んでいる。さらに、今後インターネット・アクセス回線のブロードバンド化が進み、インターネットが生活の中に本格的に浸透してくると、インターネット上で流通するコンテンツについても多様化・大容量化していくものと考えられ、さらなるトラヒックの増加が見込まれる。

1)インターネット上の情報発信の動向
 郵政省(現総務省)郵政研究所では、我が国(JPドメイン)におけるインターネット上での情報発信量(ウェブ上の情報発信に限り、電子メール等は含まない。)について、平成10年2月より年2回調査、推計している。平成12年8月に実施した「第6回WWWコンテンツ統計調査」によると、我が国のウェブサーバー総数は約12万台(対前年同期比1.41倍)、ウェブ総ページ数は約5,570万ページ(同1.45倍)、ウェブでアクセスできる総ファイル数は約1億3,200万ファイル(同1.54倍)、そしてウェブでアクセス可能な総情報量は3,212Gbyte(同1.70倍)に達すると推計されている(図表1))(注1)。
 インターネット上の情報発信量について、どのような情報が主に発信されているのかを分析するため、ファイルの種別ごとにみると(図表2))、総量としては「文書・データ」や「画像」のホームページ閲覧関連ファイルのデータ量が多くなっているが、「動画」については前回調査と比較して2倍以上の伸びとなっており、急速に増加する傾向をみせている。ただし、「音声」については、おおむね低い伸び率で推移している。
 インターネット利用者を対象としたウェブアンケート結果によれば、将来的にブロードバンド・アクセス回線を用いた際に、利用してみたいコンテンツとして、「インターネット放送」「音楽配信」「映画予告編視聴」等の画像・音声ファイルに対する期待が高まっており(第1章第1節10 2)参照)、今後ブロードバンド・アクセス回線の普及とともに、「動画」「音声」といった大容量ファイルの受発信が増加していくものと想定される。

2)現在のインターネット利用用途
 次に、インターネット利用者はどのような用途にインターネットを利用しているのか、その現状を探る。
 郵送アンケートにより、パソコンからインターネットを利用している人に対して、その利用用途を尋ねた結果が図表3)である。利用率が最も高いのは「電子メールの送受信」(88.3%)であり、次いで「趣味等の情報検索」(77.9%)、「生活実用上の情報検索」(63.0%)、「仕事上の情報検索」(54.0%)となっている。
 他方、コンテンツ入手、電子商取引関連の項目は、それぞれ最も高い項目(「文書や各種データの利用や入手」、「ショッピング」)ではインターネット利用者のほぼ3人に1人が活用している状況にある。現在のインターネットの利用は、電子メールとホームページ検索による情報検索・情報入手といった情報ツールとしての利用が主たる目的となっていることは否めないものの、コンテンツ入手や電子商取引についても、インターネットの利用用途として定着しつつあり、今後その一層の拡大が望まれるところである。

3)新たなコンテンツの普及
 現状では、インターネット上で動画・音声等のコンテンツの流通が本格化していないが、今後、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及が進み、大容量の動画ファイルへ短時間でアクセスすることが可能になると、動画・音声コンテンツの配信が本格的にビジネスとして成立する土壌が育成されてくると考えられる。

ア 我が国におけるインターネットコンテンツの現状
 現在、既に実用化されているインターネットによるコンテンツ配信サービスとしては、音楽配信サービスがある。平成11年末に、ソニー・ミュージック・エンタテインメントがサービスを開始して以降、大手のレコード会社が相次いで参入しており、シングルCDより安価にネットワークを通じて楽曲のファイルが販売・配信されるようになった(図表4))。これらに対応したプレーヤー端末についても各種が販売されており、CD等のパッケージよりも気軽に利用可能な音楽商品として、定着していくものと考えられる。
 また、今後はいわゆる「インターネット放送」を可能にするストリーミングと呼ばれる技術を用いた画像・音声配信サービスの普及が期待されている。ストリーミングとは、映像・音声などの情報をダウンロードしながら、同時に再生する技術であり、利用者側でデータを一時保存する必要がないため、サーバーにアクセスすると即座に映像・音声が再生される。しかし、他方で、送られてくるデータをそのまま再生するためには、高品質な映像・音声コンテンツほど大容量のアクセス回線を必要とする。現在、テレビ番組制作会社やIT関連会社により、多種多様なインターネット放送が既に提供されているが(図表5))、現時点では、視聴する側がこれらの動画を受信するのに十分な回線容量を有したアクセス回線を使用していない場合が多い。このため、コンテンツプロバイダは利用者のニーズに合ったコンテンツ配信に配慮している。例えばimpress TVでは、ブロードバンド・アクセス回線利用者向けの高品質・大容量のコンテンツについて、専用のサイトを別に設けて、高品質なコンテンツに対するニーズに応えており、ブロードバンド・アクセス回線を利用していない利用者との切り分けを行っている。

イ 米国・韓国の状況との比較
 米国においてはケーブルインターネットを中心として各種のブロードバンド・アクセスの普及が、また、韓国においてもDSLの普及が、それぞれ進んでおり(第1章第1節9参照)、既にインターネット利用者におけるコンテンツ利用動向に変化が現れている。
 平成13年1月のNielsen//NetRatings視聴率調査に基づき、米国、韓国及び我が国におけるインターネット上での閲覧回数の多い人気サイト上位30サイトを比較すると(図表6))、我が国では総合ポータルサイトやプロバイダ系ポータルサイト等、情報検索や情報入手を主目的としたサイトが上位の80%以上を占めているが、米国においては、ポータルサイトは1/4程度であり、ソフトウェアのダウンロードやショッピング・コンテンツ等を提供するサイトが全体の約半数を占めるなど、視聴サイトの多様化が進んでいる。同様に、韓国について見てみると、米国よりはポータルサイトが多いものの、全体のおよそ1/3となっており、コミュニティサイトの数が多くなっていることが特徴である。
 このように、我が国においては情報検索がインターネット利用の主目的となっているのに対して、米国や韓国では、インターネットによるコンテンツの入手やコミュニティサイトへの参加が、趣味・娯楽の一部として、既に成熟しつつある姿がうかがえる。

図表1) 我が国(JPドメイン)のWWWコンテンツ量の推移(平成10年2月を100とする)
我が国(JPドメイン)のWWWコンテンツ量の推移
図表2) ファイル種類別の情報量の推移(平成10年2月〜12年8月)
ファイル種類別の情報量の推移(平成10年2月〜平成12年8月) 平成12年2月の調査と比較して、文字情報であるHTMLファイルや音声情報のファイルについては、同年8月の調査において情報量の伸びは比較的低く、HTMLファイルで354ギガバイト、音声ファイルで434ギガバイトにとどまっている。一方、画像ファイルは885ギガバイトから1135ギガバイトへ、また特に動画ファイルは206ギガバイトから434ギガバイトへと急速に増加する傾向をみせている。
図表3) パソコンからインターネットを利用している人の利用用途(複数回答)
パソコンからインターネットを利用している人の利用用途
図表4) インターネットを経由した音楽配信サービス(例)
インターネットを経由した音楽配信サービス(例)
図表5) 主なストリーミングコンテンツ提供サービス(例)
主なストリーミングコンテンツ提供サービス(例)
図表6) 我が国と韓国、米国における閲覧回数上位30位のサイト比較
我が国と韓国、米国における閲覧回数上位30位のサイト比較


(注1)「WWWコンテンツ統計調査」は、ロボット型検索エンジンを応用して、「JP」ドメインにおけるウェブサーバー、ファイルを検索し、それらのデータ量を調査している。各ファイルの種類は拡張子により判断しており、各種別に分類されている拡張子の例は以下のとおり。
◆各種別に分類される拡張子の例
HTML : 「.htm」「.html」
画像 : 「.jpg」「.gif」「.bmp」「.pict」「.tif」「.eps」「.png」
動画 : 「.mpg」「.avi」「.mov」
音声 : 「.au」「.ra」「.midi」「.mp3」「. rmi 」「. wav」
文書・データ : 「.pdf」「.txt」「.doc」「.jbw」「.lzh」「.tar」「.xls」「.exe」「.java」
その他、分類が不明なファイルについては、「不明・他」に分類

関連サイト:総務省郵政研究所()

 


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