平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

3 インターネット普及促進に向けて

インターネット利用率は地域間格差よりも属性間格差の方が影響大

 ここまで地域や個人属性によるデジタル・ディバイドの現状をみてきたが、以後では、これらのうちどれがインターネットの利用・非利用に強く関連しているかを分析していく。

1)地域・個人属性がインターネット利用に与える影響
 インターネット利用・非利用と各属性の関連性を、統計的手法を用いて分析した結果が図表1)である(注)。
 ここで、「年齢」や「性別」等の各属性における数値は、インターネット利用の有無との関係の強さを相対的に示しており、その属性中の個々の項目(例えば「年齢」中の「20歳代」)について、数値が大きいほどその項目が「インターネットを利用している」ことに強く影響し、逆に小さいほど「インターネットを利用していない」ことに強く影響していることを示す。また一つの属性の中での最大の数値と最小の数値の差異が大きいほど、その属性がインターネットの利用・非利用に強い関連性を持っていることが分かる。
 そこでこの結果をみると、「年齢」について最大値と最小値(1.43と-0.80)の差が最も大きく、次いで「世帯年収」(1.04と-0.42)、「職業」(0.44と-0.34)の差が大きくなっており、この三つがインターネット利用・非利用と関連性の強い属性であることがわかる。
 逆に、「都市規模」は最も最大値と最小値の幅が小さい項目であり(0.14と-0.10)、次いで「性別」(0.15と-0.15)、「地域」(0.19と-0.32)の順に小さくなっている。これらより、居住地域・個人属性間の格差についてみた場合、ある人がインターネットを利用しているか否かを強く左右する要素は、主にその人の年齢や世帯年収といった個人属性であり、その人が居住している地域や都市規模は比較的影響力が小さい要素であるとみることができる(ただし性別に関しては個人属性の中では例外的に格差が少ない)。
 さらに、各属性中の個々の項目についてみてみると、「年齢」の「20歳代」の数値(1.43)が最も大きく、これは「20歳代」であることがその人が「インターネットを利用している」ことに及ぼしている影響度合いが、他の要素に比較して最も大きいことを示している。また、「70歳代」(-0.80)は「インターネットを利用していない」ことに最も強く影響している。「年齢」に関しては、20歳代をピークとして、年代が上がるほどインターネットを利用していない傾向が読み取れる。また、「世帯年収」においては、「2,000万円以上」(1.04)、「1,500〜2,000万円」(0.78)、「1,000〜1,500万円」(0.57)と、世帯年収が下がるにつれて、インターネットを利用していない傾向が分かる。
 他方、居住地域や都市規模については、これまでにみてきたように、大都市圏に偏りのある傾向がある程度見られるものの、年齢や世帯年収などの個人属性に比べると個々の数値の振れ幅は小さく、インターネットの利用や非利用への影響は弱くなっている。
 なお、異なる統計的手法を用いてこれら属性項目の関連性について解析すると、これらの項目のうち、「低年収」「60歳代」「70歳代以上」の属する「高齢者関連」グループが最も利用していない傾向にあり、「学生」「10歳代」の属する「学生関連」グループが最も利用していることが分かった(資料12参照)。

2)インターネットを利用しない要因と利用するための条件
 インターネットの利用者・非利用者の特徴がつかめたところで、以下では郵送アンケートの結果を基に、非利用者が利用していない要因や利用するための条件について概観する。
 インターネット非利用者がインターネットを利用しない理由としては、「よく分からない、関心が無い」(73.4%)、「必要性を感じない、サービスやコンテンツに魅力を感じない」(67.2%)、「利用し始めるきっかけが無い」(63.5%)、「端末や機器の使い方が難しい」(62.6%)の4項目が6割を超えている(図表2))。ここでは、インターネットを始めるための動機付け、使いやすい機器、サービスの不足や、機器利用能力が障壁となっている姿がうかがえる。
 次に、インターネット非利用者に対して尋ねた「インターネットを利用し始めるための条件」に対する回答をみると、まず「(インターネットの利用方法を)気軽に教えてくれる人」の存在を挙げた回答が最も多く、次いで、「気軽に体験や練習ができる場所」「無料講習会などで習えるようになれば」など、インターネットを気軽に練習する機会の確保についての希望が多く、次いで「テレビのリモコン程度に簡単になれば」「電話程度に簡単になれば」といったインターネット接続機器の操作性に関する希望が続いており、インターネットを利用できる環境整備と接続機器の操作性向上が課題となっている(図表3))。これは、現在実施されているIT講習の推進が格差是正に有効であるとともに、今後インターネット接続機器について、電話機や双方向テレビ受信端末等パソコン以外の端末でインターネット利用を可能にすることが操作性の問題を解決する手段となりうることを示しているものと考えられる。
 なお、インターネット利用のための条件について、インターネットを利用していない傾向が高い「高齢者層」と「主婦層」についてみると、インターネットの気軽な練習機会の確保に関する希望が強い点では両者で大差はないが、高齢者層では、接続機器の操作性向上が比較的高く、家族利用については低い比率にとどまっているのに対し、主婦層では家族利用が高い比率を示し、接続機器の操作性向上はやや低い比率になっている点が注目される(資料12参照)。また、高齢者層では「どうあっても利用しない」と回答している人が多いことに留意が必要である。

図表1) 地域・個人属性がインターネット利用に与える影響
地域・個人属性がインターネット利用に与える影響
図表2) インターネットを利用しない理由(インターネット非利用者全体)
インターネット非利用者のインターネットを利用しない理由
図表3) インターネット非利用者が利用するための条件
インターネット非利用者が利用するための条件 インターネットを利用していない人について、全体では、「気軽に教えてくれる人が身近に増えれば」が41.1パーセント、「気軽に体験や練習ができる場所があれば」が36.6パーセントであるなど、インターネットの練習機会の確保への希望が多い。また、これについで「テレビのリモコン程度に簡単になれば」が28.9パーセント、「電話程度に簡単になれば」が27.6パーセントとなっており、インターネット接続機器の操作性についての希望が多くなっている。このようなインターネット非利用者のうち、高齢者層では「健康や医療サービスを利用する際に必要になれば」や「どうあっても利用しない」が、主婦層では「家族が利用するようになれば」が比較的に目立って多くなっているのが特徴的である。


(注)ここでは、「インターネット利用・非利用」を外的基準とし、「年齢」「性別」「世帯年収」「職業」「居住地域」「都市規模」の各属性を説明変数として、数量化II類を用いて解析を行った。全体の判別的中率は74.7%であった。

 


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