平成13年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

2 公共システムの開発

(3)地理情報システム(GIS)構築に向けた取組

地理情報の高度利用に向けて

 地理情報システム(GIS:Geographic Information Systems)とは、従来、紙の地図によってそれぞれ表現されてきた地理情報をデジタル情報化し、この様々な地理的位置や、空間に関する情報をもった自然、社会、経済等に関するデータ等を電子的に統合した「国土空間データ」を形成することにより、地理情報の高度利用を図るシステムである。GISの実用化によって、カーナビゲーションシステムの高度化、防災対策及び物流管理システム等の効率化などが期待される(図表)。
 GISは21世紀の高度情報通信社会の重要ツールとして位置付けられており、政府においても、その整備・普及のため、内閣官房が主宰する地理情報システム(GIS)関係省庁連絡会議やGIS官民推進協議会の枠組み等を活用して推進している。平成12年度には、大阪府、福岡県等の7府県をモデル地区に指定して、データの流通、アプリケーションの開発等により、具体的な解決策の検討やGISの有効性の検証等を行う「GISモデル地区実証実験」に着手したところである。
 また、このような政府全体としての国土空間データ基盤の整備、GISの全国的な普及推進に向けた取組のほか、関係各省庁で連携しつつ、それぞれのGIS構築に向けた取組を進めており、そのうち総務省では、以下のようなGISにおける高度なデータ管理・検索技術等に関する研究開発や地方公共団体におけるデータ整備等を推進している。

1)分散型GIS構築のための情報通信システムの研究開発
 平成10〜12年度の3か年計画で、郵政省(現総務省)が分散型GISの構築に向けて、効率的な検索・配信機能の開発に必要な通信プロトコル、検索技術及びデータ圧縮技術等の要素技術の研究開発を行った。
 平成12年度には、GISに即した検索エンジン暗号技術等の研究開発成果を拡充し、認証プロトコル、分散型データ共有プロトコル等に関して、岐阜県において実証実験を実施した。

2)3次元GIS構築のための情報通信技術の研究開発
 3次元GISデータの作成に必要な要素技術等の研究開発は、平成11年度に郵政省(現総務省)が取組を開始したもので、平成14年度までの4か年計画で推進している。3次元GISは、地理情報に地形、都市の景観情報等を付加することでこれを3次元化し、複雑に入り組む市街地に密集して林立する建造物などの景観をモニター画面上に忠実に再現することが可能となるものである。これにより、都市計画における景観シミュレーションや商業活動でのマーケティング評価、総合防災情報システムの構築などに際して様々な視覚的表現を活用し、効果的に作業を進めることが可能になると期待されている。
 しかし、3次元GISはデータ量が膨大なものとなるため、そのデータ処理技術の確立が重要であることから、総務省においては、平成12年度に、3次元GISに適合する効率的なデータ圧縮技術やデータ更新技術等の研究開発に着手している。

3)GISのための研究開発用共同利用施設の整備
 平成11年度及び12年度において補正予算措置を行い、通信・放送機構への補助金により、GISにおける国土空間データの流通・処理に関する技術の研究開発を行うための共同利用施設の整備等についての取組を行った。
 そのうち、平成11年度補正予算で整備した共同利用施設については、大容量データの高速蓄積、蓄積データの効率的な流通を実現するための研究開発が実施可能となるもので、今後のアプリケーション開発等を促進することが期待されている。

4)地方公共団体における統合型GISの普及に向けた調査研究
 平成11年度において、地方公共団体の各部署で共用可能なデータベース(共用空間データベース)を備えた統合型の地理情報システム(GIS)の導入を促進するため、「統合型GIS共用空間データベース仕様書(案)」を取りまとめた。平成12年度は、その仕様書(案)により実際に地方公共団体において実証実験を実施し、その有効性等について検証を行い、仕様書として取りまとめたところである。
 今後、この仕様書を基に、共用空間データの維持・更新手法を確立することにより、行政内部の業務の省力化・効率化のみならず、広域的なまちづくりや防災計画等に活用されることが期待されている。

図表 地理情報システム(GIS)の概要図
地理情報システム(GIS)の概要図

 


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