平成13年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第1章 特集 加速するIT革命

11 ブロードバンド時代のネットワーク利用者像

ブロードバンド・アクセス・ネットワーク利用によりエンターテインメントコンテンツの期待高まる

 ブロードバンドの普及はインターネットの利用形態に大きく影響を与えているが、ここで利用者側の今後の利用意向を探るために、インターネット(ウェブ)上で利用者の意識に関する調査を行った(注)。

1)ブロードバンド・アクセス・ネットワークの利用意向
 以下では、インターネット利用者に対するウェブ上でのアンケートに基づき、ブロードバンドアクセスの利用意向について分析する。まず、アンケート回答者が現在利用している回線容量別に4つの属性(56kbps以下のダイヤルアップ接続(属性1)、64kbps以上のダイヤルアップ接続(属性2)、64kbps以上1Mbps未満の常時接続(属性3)、1Mbps以上の常時接続(属性4))に分類すると、1Mbps以上の常時接続型ブロードバンド・アクセス・ネットワーク利用者(属性4)に属する人は、全体の11.1%となった(図表1))。
 現在利用している回線の属性ごとに、今後利用を希望する回線容量を調べると、既にブロードバンドを利用している属性4の人が希望している回線容量は格段に大きくなっている(図表2))。「10Mbps以上」を希望している人は7割近くに達し、5人に2人は「25Mbps以上」の超高速回線を希望している。他方、属性1、2に属する非ブロードバンド・非常時接続利用者の5割以上は「1Mbps未満」の回線容量で良いとしており、現在ブロードバンド・アクセス・ネットワークを利用している人ほど、より高速な回線に期待を寄せている傾向がみてとれる。
 一方、今後利用を希望する回線容量に対して、それぞれ満足できる価格帯(月額:通信料と接続料を含む)をみると、1Mbps〜10Mbpsの回線容量については利用者の8割から9割が6,000円以下での供給を望んでいる(図表3))。また、希望者の30%が満足できる価格帯を推定すると1Mbpsで3,223円、10Mbpsで4,747円となり、同様に半数が満足する価格帯を推定すると1Mbpsで2,286円、10Mbpsで2,967円との結果となった。

2)ブロードバンド利用者のコンテンツ利用意向
 常時接続を前提としたブロードバンド・サービスの普及は、インターネット利用の在り方を根本から変革する可能性を有している。この点について、ブロードバンド化が及ぼすコンテンツへの指向の変化、常時接続が及ぼすインターネット利用の増加の2点から分析する。
 まず、ブロードバンド化の影響についてみると、現状では全利用者を通じて情報検索サービスが最も高く、逆にインターネット放送や音楽配信のようなエンターテインメント関連サービスはあまり利用されていない(図表5))。これに対し、「将来ブロードバンドを利用することを想定した場合」のコンテンツ利用意向をみると、音楽配信やインターネット放送等のエンターテインメント関連サービスへの意向が大きく伸びている。
 また、これを現在の利用と将来の利用希望との差異からみてみると、他の項目は全て利用希望が低下しているのに対して、「エンターテインメント関連」のみが増加していることが分かる。これは、現在のインターネット利用者は情報検索など現在主体となっているコンテンツに満足しておらず、特にインターネット放送をはじめとするエンターテインメント関連サービスについては、ブロードバンドを利用できる環境が広範に整えば飛躍的に需要が増加する可能性があることを示している。
 次に、常時接続サービスの利用によるインターネット利用者の変化についてみると、常時接続型サービスの利用により、接続時間は約3時間程度伸び、また利用頻度も約2.3倍に増加している。さらに、この結果を現在常時接続を利用していない人が常時接続型サービスを利用した場合の想定の伸びと比較すると (図表6))、常時接続型サービスを実際に利用している人の伸びが利用していない人の想定より大幅に大きくなっている。これについては、常時接続環境がインターネットに対する潜在的な利用意向の顕在化に果たす役割の重要性を示すと同時に、常時接続の実現により単に従来の利用用途でインターネットを頻繁に使うということだけでなく、例えば情報検索主体の利用からオンラインゲームなど、より長時間の接続が必要となる利用への移行が進み、インターネットの利用方法自体の変化を促進するという見方もできよう。

3)ブロードバンド利用者の端末利用動向
 続いて、インターネット利用端末の希望をみるために、インターネット利用者が現在利用している端末と、今後利用したいと思う端末に関する回答の比率を示す(図表7))。現在の利用率よりも今後の利用意向の方が高い端末としては、パームトップや携帯ノート型パソコンといった持ち運びが可能な移動系端末が挙げられている。他方、現在の利用率よりも今後の利用意向が低くなっているものとしては、携帯しないノート型パソコンやデスクトップパソコンといった固定して利用する固定系端末が挙げられる。全体的に、固定系の端末よりも移動系の端末に今後の利用意向が高い傾向にある。また、現在はほとんど使われていない情報家電が、伸び率としては非常に大きく現れており、今後、インターネットに接続される家電についても期待は大きい。
 将来の利用意向が多い3つの端末(携帯電話、携帯ノート型パソコン、デスクトップパソコン)について、非ブロードバンド利用者とブロードバンド利用者のそれぞれの利用意向をとると、ブロードバンド利用者は、非利用者と比較して、携帯ノート型パソコンをより強く希望している(13.3ポイント差)(図表8))。他方、携帯電話を志向しているのは非ブロードバンド利用者に多く、非ブロードバンド利用者は、機能は限定されるが手軽な携帯電話をむしろ志向している。
 また、移動系端末と固定系端末のどちらを希望している人でも、利用したい回線容量には大きな差異がなく、移動系端末においても固定系と同様、今後、より大きな回線容量が期待されていることが分かる(図表9))。
 各端末の利用したい場所についてみると、携帯ノート型パソコンについては、街中など利用困難な場面を除き、ホテル、レストラン、図書館など利用可能な環境であればいつでも利用したいという意向が現われており、場所を特定せずにインターネットを利用したいという期待がうかがえる(図表10))。

図表1) アンケート回答者が現在利用している回線
アンケート回答者が現在利用している回線速度
図表2) 現在利用している回線毎の利用希望回線容量
現在利用している回線毎の将来の利用希望回線容量
図表3) 回線容量ごとの満足する料金
回線容量毎の満足する料金の関係
図表4) 各回線容量において利用者が期待する料金水準
各回線容量において利用者が期待する料金水準
図表5) 現在利用しているコンテンツと将来希望するコンテンツの比較(複数回答)
現在利用しているコンテンツと将来希望するコンテンツの比較 現在の利用状況については、インターネット利用者のうち9割以上と、全体的に情報検索サービスの利用が主体となっている。また、ブロードバンド利用者ではソフトウェアやニュースの利用が8割近くにまで達するなど、非ブロードバンド、非常時接続利用者の5割前後と比べ目立って多くなっているほか、インターネット放送や音楽配信、オンラインゲームについても2倍から4倍の差となっている。一方、将来の利用希望については、全体的にインターネット放送等が大きく伸びているが、特にブロードバンド利用者で高くなる傾向となっている。
図表6) 常時接続によるインターネット利用時間の変化
常時接続によるインターネット利用時間の変化
図表7) 現在利用している端末と将来利用希望する端末(複数回答)
現在利用している端末と将来利用を希望する端末
図表8) 利用希望端末(複数回答)
利用希望端末
図表9) 利用希望端末と利用希望回線の関係
利用希望端末別にみた利用希望回線
図表10) 各端末の利用したい場所(複数回答)
各端末の利用したい場所


注 ここではインターネットを頻繁に利用している人を中心とした分析を行うため、ウェブ上でのアンケートに基づいて分析を行っている。

 


10 諸外国の動向 に戻る 第1章I第2節 要旨 に進む